月刊バスケットボール6月号

Wリーグ

2023.07.18

吉田亜沙美インタビュー「今の自分にできる精一杯ということを示していきたい」 [Wリーグサマーキャンプ]

日本代表の司令塔が3シーズンぶりに復帰へ


日本代表の司令塔であり、切り込み隊長でもあった吉田亜沙美。所属したENEOSサンフラワーズでは、史上最長の11連覇に大きく貢献した。今年2019-20シーズンの引退以来、3シーズンぶりにコートに戻ることを決断した。Wリーグサマーキャンプに帯同した吉田に、現在の心境を聞いた。

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Q.そもそももう1回、コートに戻ってこようと思ったそのきっかけはなんだったのですか。

「きっかけは梅嵜(英毅アイシン ウイングスヘッドコーチ)さんに声を掛けていただいたことですね。最初はガード陣を教えてくれみたいな感じだったと思いますが、いつしか私が復帰して…という話になりました。それで、もう一度コートに立つということを考え始めたのですが、やはりすぐに『やります』と答えられたわけではなく、ずっと悩んでいました。いろいろと思いを巡らせた中で、限られた人生において今しかできないことってなんだろうなと考えたとき、現役に復帰してコートでプレーすることは、求められた今しかできないなと。コーチをしていくことは、言い方が合っているかわかりませんが、2年後3年後でもできるだろうと思いました。現役復帰を考えたならば、この機会を逃したら、年齢的にも厳しいだろうなと。目の前にそのチャンスがあるのだったら、どんな結果になったとしてもいいかなと思い、やらなかった後悔よりは、やって後悔した方がいいなと考えて、チャレンジを決断しました」

Q.現役を引退していた間にコーチをしたことで、バスケットに向き合う感覚の違いはありますか。

「そうですね。コーチの場合、教えたい、伝えたいことを言語化していかなければなりません。それをどう伝えたらいいかというのが難しく、一番苦労したところでした。それより、コートの上で、選手と同じ立場で自分でプレーして見せながらの方が伝えやすいということは実感しています。ですが、東京医療保健大で恩塚(亨/現日本女子代表HC)さんのもとでコーチングの勉強しながらやってきた1年は、すごく濃いものでした。自分にとってすごく実のある1年だったと感じていますし、そうして得たことを、再び選手としてどう生かしていくかということは、私にしかできない役割だと思っています」





Q.今のコンディションはどんな状態ですか。

「トレーニングを始めて数か月しか経ってない状況です。そもそも現役復帰を考えて準備していたわけではないので、今は自分の体と向き合いながら、少しずつやっているところです。順調にきていると思いますが、コンディションについては、膝のケガもありますし、復帰を考えるときに悩む部分でもありました。以前のように動けないということは自分では分かっていますが、周りの方たちからは『動けるでしょ』と思われるのも分かっていて、それはそれでプレッシャーにもなります。ですが、そうしたことも踏まえて現役復帰を決断したので、覚悟を持って取り組んでいます。今できる自分のベスト・パフォーマンス…、これが今の自分にできる精一杯ということを示していきたいですね」

Q.今回の復帰に際して、そうしたこれまでのケガや体のコンディションを考えて、プレースタイルを変えていこうと考えていますか。

「プレースタイルを変えるといったことは今の時点ではあんまり考えていません。まずは今でき得るベストの動ける体を作っていきたいと思っていますし、そうした中で、どういうプレースタイルがいいかをアジャストしていきたいと思います。以前のようにスピードが出なければ、ディフェンスとの駆け引きや、スクリーン使い方などを工夫し、大事にしながらやっていきたいといったことですね。
チームとして考えれば、私には瞬間のスピードより、試合を通してのゲームメイクの部分を求められてくると思うので、そうしたことを意識してやってかなければと思っています」

Q.アイシンの印象はいかがですか?

「本当に若いチームですね。飯島(早紀)選手が移籍してきてくれて、少し歳が近い選手が増えましたが(笑)
まだ若いチームですが、可能性があるチームだと思います。若く、才能のある、一生懸命に頑張る選手たちが多いチームです」

Q.どんな役割を期待されていると思いますか

「梅崎さんからは、昨シーズンはいい勝負はしても、ギリギリのところで負けてしまう、あと一歩のところで勝てない試合があったと聞いていて、そこを勝ち切るためにどうするかといった話をしています。若いチームですから、我慢のしどころなどがわからなかったりすると思います。私はこれまでに、代表での試合や、Wリーグでのファイナルといったいろいろな経験させてもらっているので、その中で得た試合の勝ち方…、勝つために大事な時間帯が、40分間の中で何回かあると思うのですが、どのようにその時間帯をプレーしていくか、もし崩れてしまったときには、どう立て直していくかというすべをチームにもたらしていきたいと思っています。
また、それを成し遂げていくための過程、練習の中での意識など、やっぱりまだまだ足りていないなと感じているので、そうしたところは、少しずつ伝えていきたいなと思っています。
 時間はかかるかもしれませんが、少しずつ、プレーオフ、ファイナルに進出できるようなチームにしていきたいなと思っています」





取材・文/飯田康二(月刊バスケットボール)、写真/石塚康隆(月刊バスケットボール)

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