月刊バスケットボール6月号

男子日本代表、ケミストリー向上を伺わせる戦いぶりでチャイニーズ・タイペイに連勝


チャイニーズ・タイペイを迎えた「バスケットボール男子日本代表国際強化試合2023静岡大会」は2戦ともに日本代表が勝利を収めた。1戦目は108-86とオフェンスが、本日の2戦目は92-56とディフェンスが光り、それぞれの試合で選手たちが持ち味を遺憾なく発揮した大会となった。

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ディフェンスを徹底し失点を56に抑える


本日の2戦目は、立ち上がりから日本がリズムを掴む。テーブス海のペネトレイトから外に振ってズレを作ったり、富永啓生や馬場雄大がピックプレーけらチャンスを演出。

吉井裕鷹や富永が立て続けに3Pシュートを決めると、10-1としたところでチャイニーズ・タイペイにタイムアウトを取らせる。しかし、それ以降も日本のリズムが途絶えることはなく、守っても激しいプレッシャーをかけて馬場と吉井がワンマン速攻から立て続けにダンクを成功。得点が止まる時間帯もあったものの、途中出場の金近廉が5得点に2ブロックとアグレッシブな攻めを見せる。ディフェンスの強度でも終始相手を上回り、26-7と1Qから大きなリードを取った。


この試合では相手のターンオーバーを22本も誘発するなど、ディフェンスが光った

2Qに入ると、そこまで裏方に徹していたジョシュ・ホーキンソンがペイント内で存在感を高めて連続得点。さらには西田優大も効果的に2本の3Pシュートをヒットし、さらに点差を拡大。特にガード、ウィング陣が前から激しくプレッシャーをかけたことで相手のターンオーバーを多く誘発し、チャイニーズ・タイペイは前半だけで16ターンオーバー(日本は3)、日本はその過程で馬場の2本を筆頭に計8本のスティールを記録。前半のスコアは47-21。

後半に入るとなかなかショットが決まらない時間帯が続き、逆にチャイニーズ・タイペイはフリースローでじわじわと点を重ねていく。それでも、富樫勇樹とのピック&ロールから吉井がダンクをたたき込むと、会場の雰囲気も含めて再び日本に流れが傾く。4Qは若手を中心として起用に終始し、最終スコアは92-56。

日本は吉井の16得点を筆頭に、富永が13得点、ホーキンソンが11得点、12リバウンド、西田が10得点、比江島慎が9得点、馬場と金近が7得点と満遍なく攻め立て、3Pこそ不調(9/40、22.5%)だった、1戦目(108-86)から失点を大きく減らすアジャストを見せた。トム・ホーバスHCは「最初からディフェンスをよくやって、ブレイクも出せていたので、そこからこの試合の流れを作れたと思います。ウチのプレッシャーに対して相手も最後まであまり答えがなかったので、昨日の足りない部分(ディフェンス)をアジャストして良くなったと思いますが、昨日よかった部分(3Pシュート)が今日はあまり良くなかったです。でも、2Pの確率はすごく良くて、フリースローも30本打つことができました。3Pは入りませんでしたが、他のことをよくやってくれたので95点。悪くなかったと思います」と試合を総括。


ホーバスHCはチームケミストリーの良さを強調した

今回の強化試合は自分たちよりも格下相手とあって、この試合のようなパフォーマンスが本戦のドイツやフィンランド、オーストラリア戦で再現度高く遂行できるかは分からない。ただ、チーム力を高める意味では価値ある試合経験、そして勝利となったことは間違いない。ホーバスHCが「試合になったらとにかくチームが一番大事です。昨日は原(修太)がたくさん3Pを決めて、ベンチがすごく盛り上がったじゃないですか。でも、彼らは同じポジションの選手で、(代表選考をする上では)サバイバルですよ。それでもみんなすごく喜んでいて、そういうのがすごく好きです」と言えば、吉井も「個人のサバイバルというよりも、今は一試合一試合、毎練習でチームがステップアップできるようにというのを心がけています」と言い、チーム力の向上にフォーカスしている。

八村塁の本戦欠場が決まったことで、チーム力という言葉の重要性はさらに増したと言える。ただ、やることはこれまでと変わらない。「塁は一度もこのチームでプレーしていないですし、いるメンバーで良いチームを作ろうといつも話しています。塁の欠場は残念ですが、彼がいないことでみんなのプレーが少しずつ上がると思っていて、気持ちもすごく強いです。負けたくない、勝ちたい、良いチームを作りたい…本当に雰囲気が良いです」(ホーバスHC)

代表チームに最も必要なのは、継続性とチームケミストリーだ。ホーバスHCが率いた女子日本代表も最終的にはチーム力がタレントレベルを上回り、オリンピック銀メダルに輝いた。男子でもメンバー全員がNBA選手のアメリカとて、チームにならなければ勝てないほどに世界のレベルは上がっている。その意味では、今の男子日本代表のチームケミストリーや雰囲気は世界と十分に戦える土俵にあると言えるかもしれない。

本戦開幕まで残すところ1か月半程度。ここからチームとしての進化をさらに加速させたい。

写真/石塚康隆、取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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