月刊バスケットボール5月号

大学

2023.06.05

【第2回WUBS】アテネオ・デ・マニラ大(フィリピン)を見逃してはいけない3つの理由

昨年8月に初開催となったWUBSSun Chlorella presents World University Basketball Series=ワールド・ユニバーシティー・バスケットボール・シリーズ)で、負けなしの3連勝という成績で初代王者となったアテネオ・デ・マニラ大(フィリピン)は、様々な点で日本とゆかりのあるチームだ。今年の大会は2年連続出場であり、連覇を目指して来日することとなった。昨年のインカレでの優勝、準優勝によりWUBSへの出場権を獲得した東海大と白鷗大、さらにはシドニー大(オーストラリア)、国立政治大(チャイニーズ・タイペイ)、高麗大(韓国)、ペルバナス・インスティテュート(インドネシア)とそれぞれの国・地域の王者が集い、アメリカからはNCAAディビジョン1のラドフォード大もやってくるこの大会で、そのハードルは昨年以上に高くなっている。


ブルーイーグルスというニックネームで親しまれているアテネオ・デ・マニラ大が、仮に順調にシドニー大との初戦を突破した場合、準決勝の相手は白鷗大とペルバナス・インスティテュートの勝者となる。連覇の話題を抜きにしても、単純にアテネオ・デ・マニラ大 vs. 白鷗大の舞台が整った場合に白鷗大が勝利することができるか興味深い。また、東海大は決勝戦で対戦する可能性がある(敗者復活戦で戦う可能性もある)が、59-68で敗れた昨年の雪辱は果たせるだろうか。まずは日本勢との対決の観点から、アテネオ・デ・マニラ大は非常におもしろい存在だ。

しかし、実は少しこのチームについての情報を追いかけると、日本の大学との対戦をぜひとも見たくなる要素がさらに見つかってくる。

Sun Chlorella presents World University Basketball Series大会公式サイト


昨年WUBSの初代王者となったアテネオ・デ・マニラ大(写真/©WUBS)

フィリピンのバスケットボール史をけん引した大学界の雄

アテネオ・デ・マニラ大という個別のチームの前に、まずはフィリピンのバスケットボール事情をひも解いてみよう。フィリピンはアジアのバスケットボール界における古豪であり、今後あらためて飛躍が期待される国でもある。ワールドカップ出場は日本よりも早い1954年の第2回大会(当時の呼称は世界選手権)であり、しかもその大会での成績は世界3位。身長191cmのセンター、カルロス“カーロイ”ロイサガは得点ランキングで3位に入り、大会全体のベスト5にも選ばれている。

フィリピン国内にPBAPhilippines Basketball Association)というプロリーグがあることは、プレーヤーのBリーグへの流入が急加速したことや、今年日本で初シーズンが行われたEASLEast Asia Super League)にリーグ所属の2チームが参加したことなどを通じて、近年日本でも広く知られるようになった。その誕生は1975年。リーグ公式サイトによれば、現在までの48年間の歴史はプロリーグとしてアジア最長であり、世界全体でもNBAに次いで2番目に長いという。

このようなフィリピンにおけるバスケットボールの発展を支え、かけがえのない伝統を築く上で大きな役割を果たしてきた要素として、大学バスケットボールの存在があげられる。

バスケットボールを含むフィリピンの大学スポーツは、首都マニラに拠点を置く8大学の交流と切磋琢磨を促進することで前進してきた。その統括団体はUAAPUniversity Athletic Association of the Philippines)と呼ばれ、1938年に誕生している(それ以前には1924年から、その名もNCAANational Collegiate Athletic Association]という団体が存在した)。UAAPには高校生部門の競技会もあり、2022-23シーズンに広島ドラゴンフライズで活躍したカイソットもアテネオ・デ・マニラ高の一員としてその中でプレーしていた。代表チームの躍進もプロリーグ誕生も、UAAPを中心的なプラットフォームの一つとして確立し、その中で若いタレントの発掘・育成を進めたアプローチの結果ということができるのだ。

そして、ブルーイーグルスというニックネームで親しまれているアテネオ・デ・マニラ大は、UAAPの中でも伝統的な強豪として知られている。国内で大学界の王座に就いた回数が26回(UAAP12回、NCAA14回)。卒業生にはサーディとキーファーのラベナ兄弟(サーディが三遠ネオフェニックス、キーファーが滋賀レイクス)やドワイト・ラモス(レバンガ北海道)などBリーグで活躍し、かつフィリピン代表にも選ばれているタレントがいる。

2022年に行われたUAAPの直近シーズン(シーズン85)では、ファイナルでライバルのフィリピン大を21敗で下して王座に就いた。ブルーイーグルスはWUBSのディフェンディング・チャンピオンだが、第2回WUBSの出場権はこのシーズン86制覇により獲得している。

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Sun Chlorella presents World University Basketball Series大会公式サイト

文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

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