月刊バスケットボール5月号

女子日本代表が第2次強化合宿終了、恩塚HC「課題をどう乗り越えるかというところが練習で見える」

相手の妨害の上を行くために。練習の熱も上がっていた女子日本代表

カナダ遠征、第3次合宿を経て国内でデンマークと3連戦を行う女子代表


FIBA女子アジアカップ2023(6月26日〜7月2日、オーストラリア・キーセンター)でベスト4に与えられるオリンピック世界最終予選出場権(2024年2月)、そして大会6連覇を目指す女子日本代表チーム「AKATSUKI JAPAN」(FIBAランク9位)は明日からカナダ遠征へ出発。帰国後、第3次強化合宿を経て「三井不動産カップ2023(高崎大会)」(6月16日〜18日)でエキジビションゲームを行うというスケジュールになる。

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本日5月29日、第2次強化合宿最終日を迎えた恩塚亨ヘッドコーチは「(選手たちが)変わってきましたね。練習の雰囲気もそうだし、選手の表情、姿勢も変わってきました。これまではやったことに相手が対応してくる戦いだったけど、(昨年の)ワールドカップ以降、やろうとすることを早い段階から妨害してくる戦いに変化しました。妨害に対してどう攻略するか。自分たちの課題をどう乗り越えるかというところが練習の中で見えるし、個人練習でも見えてきて、素晴らしいなと思っています」と合宿での手応えを語った。



手応えを語った恩塚HC


5月11日の強化活動方針発表会見で恩塚HCは、「40分間 世界一のアジリティを発揮し抜くこと」を目標にすると発表。FIBA女子ワールドカップで得られた課題の克服と日本の強みをさらに強化するために、「ポジショニング力:体格差の克服」、「日本の強み封じへの対応:3つの強化システム」(ペイントアタックの質を改善システム、3Pシュート・チャンスを生み出すシステム、プレーを壊しにくるディフェンスを超えるシステム)、「カオスを制する戦い」と3つのポイントを掲げた。

第1次合宿では、「(強化システム、強化のポイントの考え方・策は)インストールしました」。そして第2次合宿は「それを有意識でやるのではなく、無意識でやっていけるようにしようという段階です。プラス、闘争のスポーツであるバスケで激しい戦いがある中でインストールしたものを出せるか。選手たちには戦うというところを強く求め、トレーニングを積んできました」と恩塚HCは合宿でのテーマについて語った。



選手間での確認を行っているシーンも幾度となく見られた(写真中央は渡嘉敷来夢)


選手たちが積極的に声を掛け合い絶えず動き回る5対5でのディフェンス練習。恩塚HCは「ポジション取りの練習でもあります。いいポジションを取ろうという時に、ヘルパーがいなくなる時がある。相手の仕掛けでもあるけど、自分が動くという時に『移動するからお願いね』というコミュニケーションの質も高めています。ヘルプディフェンスというと気づいた人間が行くという感じで、そこを忘れがち。そこで『上に付くから下をお願いね』と声を出す。それはチームでいいポジションを取り続けられるカギになります。いいポジションを取り損ねないための練習。それをコミュニケーションによって発揮しようというものです」とその意図を説明。

さらに、こういった練習は、ワールドカップ後に“より強調している”と語る。
「そういう戦いになるだろうと強調しています。東京オリンピックの戦いは、やりたいことをやって相手が対応してくるというものだった。だけど、その手前からの戦い方に変わってきているため、集中するところが変わります。自分たちのやりたいことをいかに出すかではなくて、妨害を乗り越えることがカギだよねと。そこが出発点だと考えています」。

銀メダルを獲得した東京2020オリンピックと昨年のワールドカップのスタッツを比較すると、大きな武器となった3Pシュートでは、平均試投数(31.7[1位]→28.4[1位])、平均成功数(12.2[1位]→7.6[5位])、成功率(38.4%[1位]→26.8%[9位])となっている。成功数、成功率の低下は相手が早く対応してきたことが原因となった。その相手の妨害の上を行くことがチームとしての狙いとなる。

キャプテンの林咲希(ENEOS)が語ったのは「走り続けられるように、止められない動きというのを意識してやっている」ということ。
「戦うことをアピールしていかないとと第2次強化合宿で思いました。第1次強化合宿ではピリ付いた感じではありませんでしたが、(第2次強化合宿に入って)難しいオフェンス、ディフェンスをやっているので、話しながらクリアにしていこうとなっています。少しずつクリアになってきているかなと思います」とその狙いが、徐々に浸透してきていると語っている。



「走り続けられるように、止められない動きというのを意識してやっている」と語った林キャプテン


カナダ遠征(5月30日〜6月6日/カナダ・ブリティッシュコロンビア州ビクトリア)では現地6月2日に昨年のワールドカップで4位となったカナダ(FIBAランク5位)と対戦する。ワールドカップの対戦では56-70で敗戦。ボックススコアを見ると3Pシュートは35本放って成功6本のみ(成功率17.1%)。34対48とリバウンド争いで劣り、ターンオーバーは14本(相手のスティール11本)と苦しい試合となってしまった。チームが求めるものの完成度を推し量るうえでも、アジアカップ前の貴重な一戦となりそうだ。

そしてもう一つ注目したいのが今年、国内で唯一女子日本代表を見られる機会である「三井不動産カップ2023(高崎大会)」だ。3日間で3試合、デンマーク(FIBAランク52位)と対戦となるが、恩塚HCは「デンマークはフィジカルだし、サイズもある。そういう意味ではオーストラリアを想定できる、価値ある相手だと思います」と語っている。オーストラリアはアジアカップ6連覇を成し遂げるためにも倒さなければならない相手である。

そのデンマーク戦での狙いについて恩塚HCは、「入れ込むべきことは大体入れました。妨害がある中、やりたいこをやりきれるかです。試合では色々な状況が起こり、相手から色々な妨害を受けます。それら妨害に対してしっかり答えを持って、自信を持ってアジアカップに臨むための準備になると思います」と重要な3試合になると語っている。

カナダ遠征、第3次強化合宿を経て積み上げてきたバスケは、いかなるものか?「三井不動産カップ2023(高崎大会)」でどんなバスケを表現してくれるのか、注目である。



大会名称:三井不動産カップ2023 (高崎大会)

バスケットボール女子日本代表国際強化試合
会場:高崎アリーナ(群馬県高崎市下和田町4-1-18)
対戦:AKATSUKI JAPAN女子日本代表vs.女子デンマーク代表
日程(予定):
第1戦 2023年6月16日(金)18:00ティップオフ予定
第2戦 2023年6月17日(土)15:00ティップオフ予定
第3戦 2023年6月18日 (日)15:00ティップオフ予定
大会公式ページ:https://akatsukijapan-women-2023-takasaki.japanbasketball.jp/

取材・文・写真/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

タグ: 女子日本代表

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