月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2023.05.28

セカンドユニットが手繰り寄せた初優勝「キングスのバスケが完成形になった」

2戦ともベンチポイントで千葉Jを圧倒

琉球ゴールデンキングスが優勝に王手をかけて臨んだ「日本生命 B.LEAGUE FINALS 2022-23」の第2戦。

もう負けられない千葉ジェッツは富樫勇樹やジョン・ムーニーが序盤から快調に3Pシュートを沈めるなど悪くないスタートを切った。琉球も岸本隆一と今村佳太が3Pで千葉Jに応えるなど序盤の点取り合戦には見どころがあった。

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しかし、徐々に試合は守り合いのインサイドゲームとなり、千葉Jは富樫のドライブやギャビン・エドワーズのゴール下、琉球はジョシュ・ダンカンやジャック・クーリーがペイントで力強くフィニッシュ。中でもインサイド、アウトサイド共に明確な攻め手がある琉球が試合をリードしていった(前半は39-31で琉球リード)。

そして後半、琉球がさらにリズムをつかむ上で大きな働きを見せたのが、コー・フリッピン、松脇圭志、牧隼利のセカンドユニットトリオ。


第1戦から見事の修正し、Xファクターとなったフリッピン

前日の第1戦で10分足らずの出場ながら3ターンオーバーと不発に終わったフリッピンは、「もっとボールを大切にプレーしようと思った」と高い集中力を見せ、松脇は第1戦同様に千葉Jのキーマンであるクリストファー・スミスを密着マーク。この試合でも3Pアテンプト3本(うち成功1本)に封じ込めた。そして牧はハンドラーとしての活躍をはじめ、タフなディフェンスや要所のコーナー3Pなど、チームの潤滑油となった。

3Q中盤から彼ら3人にクーリーとダンカンを加えたラインナップがハマり、琉球は最大で15点のリード。4Qにはそこにアレン・ダーラムも加わりそのまま88-73のスコアで千葉Jを振り切り、西地区勢として初のBリーグ制覇を成し遂げたのだ。

琉球のエースは今村であり、リーダーは岸本だ。だが、この重要な一戦で彼らよりも強い輝きを放ったのはベンチで控える選手たち。桶谷大HCも彼らの時間帯について「コーが富樫くんについて、松脇がスミスについて、そのマッチアップがかなりハマっていました。オフェンスでもコーが点を取ったりと流れが良かったこともあって、いけるところまで(このラインナップで)いこうとコーチ陣とも話していました。ベンチの隆一や今村には、『何かあったら出すから準備だけはしておいてくれ』とは話しましたが、最後まで流れがこちらにありました」と振り返っている。


派手ではないが、確実にゲームの流れを変えるプレーを見せた牧

第1戦ではダブルオーバータイムだったとはいえ7人が20分以上の出場、この試合でも同じく7人が20分以上のプレータイムを獲得している。しかも、今日の試合に至ってはうち4人(フリッピン、松脇、牧、ダーラム)がセカンドユニットのメンバーだった。中心格の選手がベンチに座っていてもこれだけ頼れる選手たちがいる。それが今季の琉球にとって最大の武器となった。

今村は流れを生んだセカンドユニットの活躍について「今年はチームをどれだけ巻き込んでプレーできるか、勝利に導けるかを個人の課題としてきました。セカンドユニットの選手たちはレギュラーシーズンもチャンピオンシップもなかなか波に乗れない試合が多かったと思いますが、それでも彼らを信じて1年間やってこられたことが彼らのステップアップにつながった大きな要因でした。最後の試合でキングスのバスケが完成形になったなと思いますし、自分たちが苦しみながら積み上げてきたことを、こういう苦しい試合で出せるようになったのが今年のチームだと思います」と胸を張った。


仲間を信じる、それもエースの役割として1年間を過ごしてきた今村

エースという重責を担いながらも仲間を信じ続け、その仲間が最高の舞台でそれに応えてくれた。これこそが琉球のバスケの完成形だったのである。

ファイナルの2試合を見ると、ベンチポイントは第1戦で45-4、第2戦でも45-17と圧倒。チームのスコアリングリーダーも第1戦がダーラム(26得点)で、第2戦がフリッピン(21得点)であり、彼らがそのままチャンピオンシップMVP(ダーラム)とファイナルMVP(フリッピン)を受賞しているのだから、琉球のセカンドユニットがいかに大きな働きをしたかが分かるだろう。

ゲームチェンジャーとしてもリズムメイカーとしても活躍する彼らの存在はもはやセカンドユニットという枠にとどまらない。彼らは6人目、7人目のスターティングメンバーだった。そして、その強みを色濃く表現した琉球の遂行力とアンセルフィッシュさが、悲願の初優勝を手繰り寄せたのだ。

写真/山岡邦彦、取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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