B2プレーオフ・セミファイナル展望 - A千葉vs.長崎/佐賀vs.西宮の見どころ
アルティーリ千葉 vs. 長崎ヴェルカ。佐賀バルーナーズ vs. 西宮ストークス。5月12日(金)から始まるB2プレーオフ・セミファイナルの二つの対戦は、どちらもバスケットボールの試合としての側面以外にも誇りやアイデンティティーをかけたチーム同士の非常に興味深い対戦となった。両対戦とも、勝った方がプレーオフ・ファイナル進出とB1昇格という大きなプライズをつかむことになる。
新興2チーム同士が最短でのB1昇格に向け激突
アルティーリ千葉 vs. 長崎ヴェルカ
試合日程: 5/12(金)19:00-/5/13(土)17:00-/5/14(日)17:00-
試合会場: 千葉ポートアリーナ
通算成績: A千葉47勝13敗(勝率.783)、ホーム24勝6敗(勝率.800) / 長崎43勝17敗(勝率.717)、アウェイ20勝10敗(勝率.667)
直接対決: A千葉3勝-長崎1勝(A千葉のホームでは1勝1敗)
12/17 A千葉94-96長崎(A千葉がホーム)
12/18 A千葉104-84長崎(A千葉がホーム)
2/3 長崎84-96A千葉(長崎がホーム)
2/4 長崎92-98A千葉(長崎がホーム)
直近10試合:A千葉8勝2敗 / 長崎8勝2敗 ※クォーターファイナルを除く
クォーターファイナルGAME2での大塚裕土。シリーズの2試合で3Pショット16本中8本を決める活躍でアルティーリ千葉をセミファイナルに導いた(写真/©B.LEAGUE)
リーグ最高勝率の東地区王者アルティーリ千葉に、リーグ最高のオフェンス力を誇る西地区2位の長崎ヴェルカが挑む。それ以上に、両チームはお互いを意識するライバル同士だ。2021-22シーズンにB3に新規参入した“同期”であり、これまで対戦の機会のたびに、対抗意識を表に出している。今シーズン最初の直接対決だった昨年11月12日の千葉ポートアリーナでの一戦では、勝利した長崎の前田健滋郎HCが試合後会見の冒頭から「昨年から長崎と千葉はいいライバル関係でシーズンを過ごしているので、今日のようなすごくいい試合をお見せすることができて良かったと思います」と両チームの関係性に触れていた。
A千葉のアンドレ・レマニスHCも、シーズン中に両チームのライバル関係に言及することがあったが、直近のクォーターファイナルで青森ワッツをスウィープした後には以下のようなコメントを聞かせてくれている。
「いいシリーズになりますよ。映画監督でもこんな面白い筋書きは書けません。同じタイミングでB3に加入して同じ目標を持って進んできたライバル同士で、勝った方がB1に行けるセミファイナルを戦うんですからね。さあ、やろうぜ! という気持ちです」
今シーズン中の直接対決では3勝1敗とA千葉が勝ち越している。しかし千葉ポートアリーナでは1勝1敗。またレマニスHCは、4度の直接対決で長崎が万全の状態だったのは1試合だけとの認識を示していた。つまりこの勝敗結果はA千葉の優位性を示すものではないということだろう。
ただしA千葉は、ホームでの勝率が越谷アルファーズと並ぶリーグトップタイだった上に、特にこの千葉ポートアリーナで15勝3敗(勝率.833)とめっぽう強い。一方で長崎はアウェイでさほど勝率が高くはない。
数字的に目を引くことの一つは、この対決がリーグトップの破壊的オフェンスの激突であるということだ。平均得点で長崎が1位(89.7)でA千葉がそれに続く2位(86.4)というだけでなく、アシスト(長崎1位[25.3]、A千葉2位[(23.8)、リバウンド(長崎3位[39.3]、A千葉5位[38.8])、3P成功率(A千葉1位[36.3%]、長崎4位[34.1%])など、両者は多くの項目でともにトップ5に名を連ねている。ただし3Pシューティングに関しては対照的なところがあり、長崎は成功数でも1位(平均11.0本)だがA千葉は下から2番目(13位、6.6本)だ。
見どころは多いが、A千葉のビッグマンが早い時間帯でファウルトラブルになるようだと、長崎は一気に攻勢を強めるチャンスを迎える。逆にクォーターファイナルで爆発的なシューティングを披露した大塚裕土や、欠場が続いている岡田優介らの3Pショットが炸裂するとA千葉に優位な展開になりそうだ。ただし長崎には、狩俣昌也というB2のベストシューターがおり、得点王のマット・ボンズ、経験豊富なパブロ・アギラール、ジェフ・ギブスとA千葉のインサイドを悩ませるフロントラインがいる。両チームはどこまでも互角。そんなシリーズだ。
クォーターファイナルで熊本ヴォルターズを破りホームの観客に手を振るマット・ボンズ(後ろはパブロ・アギラール 写真/©B.LEAGUE)
新アリーナで念願かなうか佐賀、移転を控えた西宮
佐賀バルーナーズ vs. 西宮ストークス
試合日程: 5/13(土)17:00-/5/14(日)15:00-/5月15日(月)19:00
試合会場: SAGAアリーナ
通算成績: 佐賀45勝15敗(勝率.750)、ホーム22勝8敗(勝率.733) / 西宮29勝31敗(勝率.483)、アウェイ14勝16敗(勝率.467)
直接対決: 佐賀2勝-西宮2勝
12/3 西宮85-89佐賀
12/4 西宮71-83佐賀
3/11 佐賀78-85西宮(佐賀がホーム)
3/12 佐賀79-94西宮(佐賀がホーム)
直近10試合:佐賀7勝3敗 / 西宮4勝6敗 ※クォーターファイナルを除く
セミファイナル進出を決めた佐賀バルーナーズのメンバーは、SAGAアリーナを埋めた大観衆と喜びを分かち合った(写真/©B.LEAGUE)
SAGAアリーナで事実上のこけら落としとなるB2プレーオフのクォーターファイナルを戦い、福島ファイヤーボンズをスウィープして勝ち上がった佐賀は、クラブ創設5シーズン目で初のB1にあと一歩のところまでやってきた。
一方の西宮は、2018年に一度B1昇格を果たしており、そのとき以来5シーズンぶりの返り咲きを目指す戦いだ。西宮はクォーターファイナルの4つの対戦で唯一、越谷アルファーズを相手にアップセットを実現してセミファイナルの舞台にやってきた。
勝率的には佐賀が圧倒できそうな差があるが、直接対決では2-2のタイであり、かつ西宮が勝ったのはいずれもアウェイでの試合。アップセットを経て士気も高まった状態である上、西宮にはぜひともB1昇格を果たしたい理由が別にある。今シーズンを最後に、西宮から神戸にホームタウンが移転するのだ。
新任ヘッドとして西宮を率いる森山知広HCは、レギュラーシーズン中の3月26日に越谷との一戦を終えた後、キャプテンの道原紀晃や谷直樹、松崎賢人ら生え抜きのベテランの名前に触れながら、こんなコメントをしていた。
「西宮を作ってきた、クラブとともに歩んできた彼らがあと8試合でプレーオフというところ。絶対に今年は…。西宮は今年移転してしまうので、ラストシーズンというところでも気持ちを出してくれると思っています。彼らの気持ちをしっかり結果につなげられるように、僕もいい組み立てができるように準備したいです。そこはすごくあるチーム。最後に彼らで負けるんだったら全員が納得するようなクラブだと思うので、その中でいい組み立てができるように最後頑張ろうかなと思っています」
クォーターファイナルGAME3での道原紀晃は11得点、5アシストで西宮ストークスをけん引した(写真/©B.LEAGUE)
こうした思いだけではなく、森山HCは外国籍プレーヤー頼みにならないチーム力の向上を目指して取り組んできた。その成果は越谷とのクォーターファイナル3試合を通じて日本国籍プレーヤーの2桁得点がいずれも二人以上出ていたことからも感じられる。
西地区王者の佐賀に関しては、自信を深められる要素が数多くそろっているのではないだろうか。新世界のようなSAGAアリーナに2日間で延べ9,300人を超える大観衆を集めた中での福島とのクォーターファイナルは、2試合の平均失点が59.5。レギュラーシーズンでも失点(72.6)はリーグ最少だったが、大事なところで堅固なディフェンス力が際立った。
これ以上ないほどホームの熱狂を浴びながら、持ち味を発揮してつかんだ二つの白星が勢いをもたらさないわけはない。しかも、2月からインジュアリー・リスト登録となっていたミカイル・マッキントッシュが、GAME1から登録できる状態と発表されている。
ビッグゲームを前にさまざまな状況が整ってきた佐賀に、強い思いで2週連続のアップセットを狙う西宮。両者がすべてをぶつけあうSAGAアリーナは、開業直後から情熱的かつ非情なドラマの舞台となること間違いなしだ。