月刊バスケットボール6月号

大学

2023.04.30

三谷桂司朗&永野雄大、筑波と日体を率いる両キャプテンの思い

4月23日に毎年恒例の日筑定期戦が開催された。今大会はコロナ禍以来初の有観客開催となり、多くの観客が勝敗の行方を見届けた。そんな中、男子本戦で勝利を飾ったのは筑波大(82-67)。小川敦也や三谷桂司朗ら大学界屈指のタレントをそろえるチームだ。一方の日体大も中心格となる2年生の西部秀馬にルーキーの小澤飛悠、インサイドには206cmのムトンボ・ジャンピエールが構えるなど、ポテンシャルの高さを感じさせる布陣。試合後、そんな両チームのキャプテン(筑波大:三谷桂司朗/日体大:永野雄大)に自チームのことや相手チームのこと、1年の目標など、さまざまな思いを語ってもらった。

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それぞれに試行錯誤するキャプテンとしてのあり方

──まずは試合の感想を教えてください。

三谷 日体は留学生の高さがあって日本人選手もみんな3Pを打てて、あとはブレイクが速いイメージがずっと昔からあります。僕らはリバウンドとブレイクを出される前にディフェンスで捕まえるというのが課題だったので、そこを克服しないと試合が成り立たないと思っていました。そこをチームとして意識して取り組んで、今日の試合に臨みました。最初はリバウンドを取られる場面やブレイクに走られる場面もありましたが、後半にしっかり修正できたので、それで自分たちのバスケットができてリズムを徐々につかめたというような試合だったと思います。

永野 前半は何とか食らい付いて要所のタフショットも決まっていたと思います。でも、そういうシュートも決まった上での前半の接戦だったので、後半に筑波がノーマークのシュートや3Pを高確率で決めていって逆にうちはボールも動かず、ショットも入らなくなってブレイクを出されたりするシーンが増えてしまいました。本来、日体がやりたいプレーを全部やられた後半になってしまった印象です。でも、点差が開いた中でもカッティングやドライブが増えてきて、特に3年の#9大森(尊之/23得点)がそれを体現してくれました。そういうプレーがもっと早い時間帯からできていたら結果も変わったかもしれません。

──お互い今年はキャプテンになりました。意識変化のようなものはありますか?

永野 自分は1年生から一応メンバーには入っていましたが、試合にはあまり絡むことができなかったです。それで今年キャプテンになったので、自分の立場で物を言うのって結構難しいなと感じています。もともと試合に出てプレーでもチームを引っ張る状態から物を言うのは言いやすいと思うんですけど、あまり試合に出ていなかった自分の立場から言うとなると、チームメイトが素直に付いてきてくれるかが最初は心配でした。それで発言するのをためらってしまうこともあるので、そこは持ちも全部入れ替えて…今日もベンチで静かになっちゃった場面もあったし、後輩が多いチームだからこそ尚更ズバズバ言えるようになろうと思っています。



日体大を率いる永野は下級生主体のチームをどうまとめるか


三谷 筑波は毎年推薦で入ってくる選手が3、4人なんですけど、その中で学年のリーダーを決めて、その人が4年生になったときにキャプテンをやるという流れがあるんです。僕の同期は#11横地(聖真)と#2木林(優)なんですけど、入学したときに誰が学年のリーダーをやるかという話になって、「おれらはちょっと…」って2人が言うから「じゃあ自分がやるか」となりました。高校まではキャプテンなんてやったことがなかったんですけど、挑戦できるチャンスがあるんだったらやってみようかなと。それで新チーム初め頃にもう1回話し合って、正式にキャプテンになりました。
でも、いざキャプテンになると全部が初めての経験なのでどういう形でチームを引っ張っていくのが正解なのか…今はそれを模索しながら過ごしています。でも、自分は言葉で引っ張っていくよりも、プレーで引っ張っていくのが自分なりのキャプテンシーなのかなと最近は感じ始めています。もちろん、言葉でも言わなきゃいけないんですけど、そこは他のメンバーにも任せつつ、ディフェンスが緩いときなんかには自分が率先して気持ちを出してディフェンスをするとか。チームの流れ良くないときに自分が絶対に下を向かないような精神的な支えとして、リーダーシップを発揮していくのが一番良いのかなと最近は思っています。でも、まだまだ弱いところが多いのでもっと成長しないといけないなと思っています。



三谷は背中でキャプテンシーを示していく構えだ

──永野選手は市船橋高でもキャプテンでしたよね。お二人ともキャプテンとして違った悩みを抱えていると思いますが、お互いに聞いてみたいことはありますか?

永野 練習でグダッっちゃうときにどう対応しているのか聞きたい!

三谷 そうだな。そう感じることは筑波でもあって、そういうときは一つのメニューが終わって次のメニューに移るまでの間に1回みんなを集めたり。今までのキャプテンも練習の合間にみんなを集めて「ディフェンスが緩い」「リバウンドを○本も取られているのは許さない」とか、そういうことを言っていたんだよね。そういうのを自分もまねしながらやっているかな。この前、選手同士でミーティングしたときに#35平田航大が自分以外では結構しっかり発言してくれるんだけど、僕らが何か言ってもそれに周りがついてきてくれないと雰囲気も変わらない。だから「おれたちがしっかり意見を言うからみんなもそれについてくるような声かけをしてほしい」ってお願いしたんだよ。そうしたら他のチームメイトもそれを理解してくれて、チームがちょっとグダったときも合間に止めて、もう1回仕切り直す。そういう流れを今は作れているかな?
逆に、さっきも話したんだけど発言したり指摘するのが自分には難しくて…。高校と大学でキャプテンの違いってどんなところにあるのか聞きたいな。

永野 高校ってわりと監督が指導してくれる場面が多いと思うんだけど、大学は監督とのコミュニケーションももちろんあるけど学生コーチだったり、学生同士の会話が増えているんだよね。だからこそ、選手一人一人に寄り添った言葉をかけるようにはしているかな。例えばプレーだったり、メンタルでも一人一人によりはっきりした形があるのが大学なのかな。それが結構違うところだと思うよ。



三谷と平田(写真中央)が先頭に立って筑波大を率いてゆく


──ちなみに今年のチームの強みはそれぞれどんなところですか?

三谷 筑波は例年に比べても全ポジションがサイズアップしたことだったり、5番の選手でも3P打つ選手が増えました。昨年まではベーシックに1イン4アウトだったんですけど、今年は5アウトに挑戦しています。去年までだったら基本は5番がインサイドにいて、それにマッチアップする相手の留学生もずっとインサイドにいたので、僕たちがドライブして留学生の高さもあってなかなかフィニッシュまで成功しないという課題がありました。でも、5番の選手も外に出ることで、留学生が引っ張られてドライブするスペースを広げられたり、逆に5番の選手が外でノーマークの3Pを打てるという利点もあるので、そこはチームに合っているし今年の強みとしてやっています。

永野 日体はスタートのメンバーを見ても分かるとおり、メインで試合に絡む上級者が少ないです(同試合では3年生1人、2年生3人、1年生1人がスタメン)。でも、上級生が少ないことで気を使う場面も少ないと思うので(笑)、後輩たちの思い切りの良さはチームの武器になると思います。でも、逆に悪い流れになったときに立ち直ることがなかなかできないのは、上級生が少ないことによる欠点かなと思います。

──逆にお互いのチームの印象はどうですか?

永野 今日に関しては本当に外のシュートの確率がヤバかったですね。それに身長的には筑波の方が全体的に高いのもありますし、リバウンドに関しては例年に比べても強い印象がありました。

三谷 昨年までは留学生がジャンピ1人だったので、ジャンピが休んでいる時間に点差を詰めるとか、リバウンドでイニシアチブを取ることができたんですけど、今年は2人いるので常にインサイドには高い壁があります。リバウンドは簡単には取れないです。それに特に前半にやられたガード陣の飛び込みリバウンドだったり。あと、自分たちがタフショットを強いられたときの走り出しが日体はすごく速くて、それですぐに点を取られたので厄介でしたね。



永野が相手のキーマンに挙げる#28浅井はこの試合で7得点、8リバウンド、4アシストとオールラウンドな働き


──相手チームで厄介だった選手は?

永野 今日の試合では結構いました(笑)。三谷くんや小川くんはどの試合でもコンスタントに活躍するので、そこをどう守るかはもちろんキーなんですけど、個人的には浅井英矢くん(3年/197cm)ですね。今日の試合でもジャンピの上からフックを入れてきたりかなりやられた印象があったので、今後も注意しないといけないです。

三谷 僕は9番の大森くんです。自分がディフェンスをしていて3Pも打てるしドライブも力強かったしフィニッシュもうまかったです。留学生がいる分、インサイドケアしたりブレイクをやられないように意識していたので、結構疲れていたんですよね。その状態であれをされるとキツいし、結構マークしていて嫌な選手でした。

──自チームで注目してほしい選手は?

永野 日体は西部秀馬(2年/189cm)ですね。西です。今日は調子が悪かったけど、去年も1年生ながらスタートで出ていた選手で、今年は1個学年が上がってエース的なポジションになってきます。そこでもう少し責任感が出てきたり、クォーターエンドなんかでより力強いプレーできたらもっと良くなるんじゃないかなと思っています。

三谷 筑波から一人挙げるとすると、今日の試合はケガで出られませんでしたが、1年生の#6副島成翔(197cm)です。一昨年、井上宗一郎さん(SR渋谷)が抜けてインサイドでのディフェンスの課題がすごく顕著になりました。副島はその課題を埋めてくれるくらいのポテンシャルあると感じているので、体を張って頑張ってほしいです。



日体大2年の#7西部にはエースとしての進化が期待される

──ありがとうございます。ここまで聞いておいて今更感がありますが、お二人は結構仲が良かったりするのですか?

永野 今日初めてちゃんとしゃべったって感じです(笑)

三谷 実はそうなんです(笑)。高3のウインターカップ1回戦で市船と対戦して僕ら(広島皆実)が負けて引退したんですよね。面識はあるけど、ちゃんと話したのは今日が初めてです(笑)。せっかくなので、日体がどんな練習をしてるのか聞きたいです。

永野 練習時間は1時間半くらいかな?

三谷 え、そんな感じなの?

永野 そうそう。その中で毎日やっているのはディフェンスのところで、結構学生コーチがメインでみんなが主体的にやっているんだよね。チーム練習が1時間半くらいでその後に自主練を好きなだけ、的な感じかな。筑波は1日どれくらいの時間、体育館にいるの?

三谷 4年生になって授業が少なくなったから、朝7時半くらいに体育館に行って、去年まで筑波の学生コーチをしてくれていた先輩が大学院に上がったから、その人にファンダメンタルとやシューティングをやってもらって…。日中は授業とかで体育館が使えないからその間にウエイトをして、4時半くらいから7時半くらいまでチーム練習と自主練をしてって感じかな。だからトータル5、6時間くらい。夜10時には体育館が閉まっちゃうからそんなに遅くまでは残ってないかな?
練習も日によって男女で時間が変わるから男子が4時からの日は女子が7時半からで、その逆の日もあったりって感じかな。

──では最後に、今年の個人の目標とチームの目標を教えてください。

永野 個人としては、今日もなかなか試合に絡むことができなかったので、4年生としてスタメンで出場してチームを勝利に導けるような選手になっていきたいです。チームとしては毎年優勝という目標がある中でも、今年はトーナメント、新人戦、新人インカレ、リーグ戦、インカレの“5冠”を目標に掲げているので、それを達成するためにも日々の厳しくやっていきたいです。

三谷 チームとしては、去年はリーグ戦もトーナメントもインカレも結果を出せずに悔しい1年間だったし、僕も先輩に頼りっぱなしで自発的な行動がなかなかできてなかったので悔いが残っています。その悔しさを払拭するためにもチームとしては日本一を目指すこと、試合や練習の一つ一つで成長を重ねてどんどんレベルアップしていくことが目標です。個人としてはもっと『自分がチームを引っ張るんだ』っていう強い気持ちを持ってプレーしていきたいです。周りからも「ちょっとしつこいぐらい強気でやってもいいんじゃないか」と言われたので、去年よりももっと得点に絡むプレーをしたり、ディフェンスで体を張ってチームを鼓舞していくのが目標です。



日体大の永野雄大と筑波大の三谷桂司朗

取材・文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)

タグ: 日本体育大学 筑波大

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