月刊バスケットボール6月号

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2023.04.24

157cmの“キレキレハンドラー”小野寺佑奈を突き動かす無限のインスピレーション

母の教えが小野寺のプレースタイルの原点に


4月23日、毎年恒例の日体大と筑波大による「日筑定期戦」が開催された。

女子本戦は両チームなかなかショットが決まらないロースコアな展開だった。特に2Qの残り5分を切った場面(27-14で日体大リード)で筑波大がタイムアウトを取って以降のスコアは0-2。前半で27-16というスコアだった。後半はややペースアップし、最終的には要所の3Pシュートなどで突き放した日体大が58-38で筑波大に勝利したが、両チーム課題の多い試合内容だったと言えるだろう。

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そんな中で、ゲームの流れを一変させる一際輝く選手がいた。日体大4年の#3小野寺佑奈だ。

下級生の頃からスポットライトを浴びてきた司令塔は、この試合ではシックススマンとしての出場。ただ、試合に出るなり力強く縦にレーンを突破し、観客もうなるノールックパスにステップバックジャンパー、ストリートボール顔負けのハンドリングで試合をペースアップしていった。6得点、8リバウンド、4アシスト、2スティールというスタッツもさることながら、試合に与えた影響はそれらの数字以上のものだったと言えるだろう。





「自分がコートに出たときにはやるべきことをしっかりやる、どの場面でもそれを徹底することを意識しています。とにかく足を使って速いテンポで進めるのが得意なので、自分が試合に出たらすぐにギアチェンジするというか、足を使ってプレーで表現するのを意識しています」

小野寺のこの言葉のとおり、彼女がプレーした26分44秒は明らかに試合がテンポアップしていた。

今年はストリートバスケットボールブランドballaholicがプロデュースする「TOKYO STREETBALL CLASSIC 2023」にも出場し、名だたるストリートボーラー相手に抜群のテクニックを披露し会場を沸かせた小野寺。157cmとひときわ小柄だが、その姿は彼女自身が憧れるカイリー・アービング(マーベリックス)を思い起こさせるシーンも多い。

そんな小野寺がバスケットを本格的に始めたのは小学1年生の頃。ただ、バスケットに触れ合っていたのはもっと前からだそうだ。「小さい頃からお母さんがバスケを教えてくれたんです。幼稚園生の頃からボールに触れていて、ミニバスを始められる小学1年生から本格的にプレーしています。当時から女子のバスケを見るよりもNBAや男子の試合を観てそのプレーをマネしていて、お母さんが『これをやってみな』と言ってくれたり教えてくれたり。自分のバスケが今のスタイルになったのはお母さんのおかげです」。キレのあるドリブルワークは母の影響で見るようになったアービングらNBA選手からインスピレーションを受けたものだったのだ。

夢中は努力を超えるという表現をしばしば耳にするが、小野寺もバスケットに夢中になっている一人。体育館を使用できる自由度が高い日体大で、「自主練習でもYouTubeなんかを見てやりたい練習を探したり、NBA選手がやっているプレーを遊び感覚でマネして、それを試合でできるのかを試したり。楽しみながらやっています」と小野寺。大学4年生を迎えた今でも、その好奇心は子どものころと変わらぬままだ。





同時に、今年は最上級生としてチームを引っ張る立場になる。小野寺は言う。「私は声で引っ張るよりもプレーや背中で見せることを目標にしています。それを40分間続けて、後輩たちにそういう姿を見せて引っ張っていくのが今年の課題。最終目標は日本一なので、そのために日体らしい走るバスケットと脚を使ったディフェンスを表現していきたいです」

また、この試合のロースコアな展開についても「今日は筑波さんのシュートが入っていなかった部分が多かったと思います。その中でもトランジションで点を取られる場面はいくつかあったし、3Pシュートも結構打たれていたので、そういうシュートが入っていたらハイスコアな試合になっていたと思います。そういうところをもっと詰めてオフェンスでもディフェンスでももっと良くしていきたいです」と、課題を見極めて前に進もうとしている。

卒業後はWリーグ入りを目指していくという小野寺が見据えるのは「世界に挑戦していけるような面白い選手」になること。近年では町田瑠唯や安間詩織ら、小野寺と同じく小柄なガードが世界を相手に活躍してきた。そんな先人たちの背中を追いながら、「身長が小さいけど、逆にそれを生かしてどれだけできるか挑戦していきます」と力強く語ってくれた。

チャレンジを楽しむ小野寺を突き動かすのは、憧れるアービングやバスケットの楽しさを教えてくれた母、さらには海外に飛び立っていった先人たちが与えてくれる無限のインスピレーションに他ならない。



左から二番目が小野寺

取材・文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)

タグ: 日本体育大学 筑波大学日筑戦

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