どうなる? アルティーリ千葉vs.越谷アルファーズ - B2最終節頂上決戦の見どころ
B2は4月22日・23日の週末でレギュラーシーズン最終節を迎えているが、東西両地区ともいまだ優勝は決まっておらず、またプレーオフのワイルドカード枠争いも、二つのスポットに4チームが可能性を残す大激戦となっている。最終節ではその当事者同士による対戦が4つ汲まれているが、中でも東地区首位のアルティーリ千葉と同2位の越谷アルファーズが地区優勝とB2最高勝率をかけて激突する“千葉ポートアリーナ対決”は、見どころ満載のリーグ頂上対決という舞台設定をかなえるマッチアップとなった。
☆地区優勝とB2最高勝率の可能性がどちらにもある
両者の通算成績は、アルティーリ千葉の46勝12敗(勝率.793)に対し越谷アルファーズが44勝14敗(勝率.759)。その差は2ゲームあり、アルティーリ千葉はこの週末に1勝することができれば東地区優勝とB2最高勝率を手にすることとなる。
ただし、追いかける越谷の方には直接対決上の秘められた優位性がある。アウェイで連勝することができればアルティーリ千葉に対しては4勝2敗と勝ち越すことになり、B2最高勝率でタイに持ち込むとともに、逆転で東地区優勝をかなえることができるのだ。
昨年12月28日の直接対決より。ボールを持つブランドン・アシュリー(18得点、5リバウンド)などの活躍で、この試合ではアルティーリ千葉が勝利を収めた(写真/©B.LEAGUE)
☆2022-23シーズンの直接対決は2勝2敗のタイ
アルティーリ千葉と越谷アルファーズが戦った今シーズンの4試合には、いくつか注目しておくべきポイントがあった。最終スコアの流れは以下のとおりだ。
2022年10月26日(ウイング・ハット春日部) 越谷80-85A千葉
2022年12月28日(バルドラール浦安アリーナ) A千葉94-88越谷
2023年02月25日(ウイング・ハット春日部) 越谷90-77A千葉
2023年02月26日(ウイング・ハット春日部) 越谷101-60A千葉
一つは4試合の流れだ。2022年内に行われた最初の2試合は、いずれも中盤までに越谷が2ケタ点差のリードを奪いながら逆転で敗れるという展開だった。ところが今年に入ってからの2試合では、2月25日の3度目の対戦は接戦から第4Qに越谷が31得点を奪う爆発力を見せて快勝。翌日の一戦も越谷が序盤から圧倒的な勢いを誇示して41点差の大勝を手にした。
しかし、両チームの間にそこまで地力の差があるという見方は幻想にすぎないだろう。その翌週、福島ファイヤーボンズとのGAME1でダブルオーバータイムの勝利をつかんだアルティーリ千葉は勢いを取り戻している。
キャプテンを務める大塚は、越谷に対する悔しい黒星について「悔しさもありますが、相手の弱みを理解して、見つけて、話して、実行できることが大事」と冷静に捉え、逆にバネにしている様子だった。この一戦に出場できなかった岡田優介は、「ゾーンにはまってしまったんです。うちの2番・3番が少し自信をなくしているときに、相手のゾーンが当たってしまったんですよね」と戦術的な観点からの話を聞かせてくれている。その言葉には、次はそうはいかないぞという決意もにじみ出ていた
越谷アルファーズが思わぬ点差で勝利し、直接対決成績を2勝2敗のタイに戻した2月26日の直接対決より。中央の#2二ノ宮康平の表情も明るい(写真/©B.LEAGUE)
☆キースタッツ
両チームの直接対決におけるスタッツ面でのカギは、リバウンドとペイントでの得点になるのではないだろうか。アルティーリ千葉は勝利した最初の2試合でのリバウンド数は39.0-35.5と上回ったが、その後の2試合では越谷の方が45.0-33.5と大きく上回った。ペイントでの得点は、最初の2試合が37.0-37.0と全くの互角だったが、あとの2試合は45.0-23.0で越谷が圧倒している。
この点に関しては岡田のコメントも無視できない。越谷がリバウンド力を発揮できるようならば、アルティーリ千葉のシューターたちの自信に何らかの影響があるかもしれないからだ。3Pショット自体ももちろん重要な要素だが、その精度にはリバウンド力が影響する可能性があるし、いつどのようにゾーンディフェンスを使うかという越谷の判断にも影響することだろう。
その裏側の要素として、両チームの外国籍プレーヤーたちのファウルトラブルも試合の流れを揺さぶるに違いない。例えばアルティーリ千葉の最大の得点源であるブランドン・アシュリー(シーズン平均18.2得点=リーグ3位)は、4度の直接対決すべてで4ファウル以上を記録しており、4度目の対戦ではファウルアウト。勝った2試合では平均19.0得点だが、負けた2試合は7.5得点に終わっており、そのパフォーマンスが勝敗に直結したような形になっている。
もしもアシュリーがペイントで大暴れできるようなら、アルティーリ千葉のペースと言えるのではないだろうか。それは同時に越谷のビッグマンが苦戦していることを意味するからだ。
逆に越谷側で、トップリバウンダーのアイザック・バッツ(平均11.4本=リーグ3位)が長くベンチにいなければならないようなことになれば、それはリバウンドだけでなくディフェンスにも大きな影響を及ぼすだろう。そうなると、アルティーリ千葉側のシューターに積極性をもたらす要素にもなってくるかもしれない。
アイザック・バッツは4月16日の山形ワイヴァンズ戦ともにでチームハイの13得点、12リバウンドと大黒柱らしい活躍を見せた(写真/©B.LEAGUE)
☆直近10試合はどちらも快調
両チームともシーズン終盤戦をうまく乗り切っており、直近10試合はアルティーリ千葉が9勝1敗 越谷アルファーズも8勝2敗という好成績だ。奇しくもアルティーリ千葉は、前回越谷に大敗を喫した直後から、2度の7連勝を含む14勝1敗という快進撃。その15試合中14試合がプレーオフ進出を争う上位チームというタフな日程にもかかわらず、いかんなく強さを示している。
一方越谷は、敗れた2試合がどちらも山形ワイヴァンズに対するものだった。前節の対戦も山形との試合だったが、山形側もワイルドカード枠奪取を狙う状況で2試合とも大激戦となった。
越谷はGAME1を落としたが、GAME2はシーズン平均得点77.0(リーグ10位)の山形を55得点に封じ込める強度の高いディフェンスが威力を発揮し、良い勢いを携えて最終節を迎えることができている。ただし、3Pショットの不発が気になるところ。GAME1が22本中3本のみの成功(成功率13.6%)、GAME2が15本中2本のみの成功(成功率13.3%)。桜木ジェイアール スーパーバイジングコーチは、「まったく心配していません。皆、切り替えてしっかり練習してきてくれると思っています」と自信のコメントを聞かせてくれたが、3P成功率がチームトップの40.8%というキャプテン長谷川智也(169本中69本成功)、松山 駿(37.1%、237本中88本成功)、ブレコット・チャップマン(36.8%、155本中57本成功)らボリュームシューターがどのような決定力を発揮するか。ここは面白い見どころだ。長谷川は「ここはひたすら練習あるのみ。しっかり皆でやっていきたいです」と気を引き締めていた。
なおアルティーリ千葉では、この直接対決を前にした前節の福島戦GAME2で、チーム内の日本国籍プレーヤーで今シーズントップの平均8.8得点を記録している木田貴明が右足首を負傷するアクシデントに見舞われた。それでも79-77で逆転勝利を収めたこの試合について、アンドレ・レマニスHCは「途中、選手の負傷などでローテーションが普段と違う形になってしまったが、ベンチから出場した選手もよく頑張ってくれた。苦しいタイミングでも自分達のやっていること、チームを信じることができたということが大きな学びだった」と前向きなコメントを残しているが、経過は気になるところだ。
アルティーリ千葉では3P成功率45.6%の岡田も、3月26日の青森戦GAME2を最後にコートに立っていない。彼らの登録に関しては未確認だが、コートに立てば間違いなくインパクトをもたらす存在。注目して見守ろう。
アルティーリ千葉の日本国籍プレーヤーではトップスコアラーの木田貴明。4月16日の福島ファイヤーボンズ戦でいためた右足首の状態を心配する声がSNSでも見られる(写真/©B.LEAGUE)
☆両チームそれぞれのドラマ
今節の対戦でアルティーリ千葉には、B2昇格後初シーズンにおける地区優勝とリーグ最高勝率の栄誉という大きなプライズがかかっている。おかしな例えかもしれないが、創立2シーズン目でB2昇格直後のここまでの快進撃は、2歳の赤ちゃんがハーバード大学に合格するようなものではないだろうか。
いうまでもなく、地区優勝もB2最高勝率もたやすく手に入るものではない。多くのベテランプレーヤーや優秀なタレントが総出でかかって何度もチャレンジしても、何年も歴史を重ねたクラブがどれだけ真剣に取り組んでも、現実的に手の届く位置まで来ることさえできない目標だ。それは、昨シーズンB1を制した宇都宮ブレックスをヘッドコーチとして率いた安齋竜三がアドバイザーとして加わった越谷が、現在彼らを追う立場であるという事実自体が如実に物語っている。にもかかわらず彼らの方は、それを2歳の段階で成し遂げようと試み、頂に手をかけようとしているのだ。
しかも、その重要なプライズを手にするためには、プレーオフに臨む直前のレギュラーシーズン・フィナーレで、大きな借りのある相手を倒さなければならない。そんなドラマを知るブラックネイビーのファンが、千葉ポートアリーナで2歳の赤ちゃんを笑顔にさせようと大勢やってくることだろう。どんな結果かは神のみぞ知るところ。しかし、このホームゲーム開催自体がクラブの大切な歴史の一ページになるに違いない。
アルティーリ千葉のキャプテン大塚裕土。避けて通ることのできない相手を迎える最終節のビッグゲームでどんなリーダーシップを発揮するか(写真/©B.LEAGUE)
越谷は、数字の8にまつわる不思議な物語を綴っている最中だ。今シーズンのキャッチフレーズは「七転び八起き」だが、今直面している現実はまさにそのものずばりだと言える。
越谷は今シーズン7連勝を4度記録したが、いずれも8連勝をかけた試合でつまづいた。3月半ばからは、背番号8の長谷川がキャプテンの座に再就任してチームをけん引している。さて、B2優勝を目指す彼らが最終節で対戦するアルティーリ千葉は、奇しくも7連勝中のチームだ。越谷はGAME1でアルティーリ千葉の8連勝を阻むことでのみ、地区優勝と最高勝率への望みをつなぐことができる。しかしもその勝利により、面白い道筋も見えてくるのだ。
レギュラーシーズン最終節は2試合。その後B2制覇に至る過程ではクォーターファイナル、セミファイナル、ファイナルにおける6勝が必要になる。つまりアルティーリ千葉とのGAME1から8勝目が、念願のB2制覇(とB1昇格)を意味しているのだ。
「最後の頂上決戦。最高のチャレンジだと思うので、必ず勝つという気持ちで準備していきたいと思います」。長谷川は決戦を前にそう話した。
越谷のキャプテンに再就任した長谷川智也。念願のB2王座とB1昇格に燃えている(写真/©B.LEAGUE)
両チームとも、失うものも得るものも大きなB2最終節の頂上決戦。「トップリーグの2部」などという捉え方はまったく適していない。歴史的対決として大いに楽しませてもらいたい。