月刊バスケットボール10月号

NBA

2023.04.13

コービー・ブライアント、60得点を記録した引退試合から7年が経過

ブラックマンバが牙をむいた衝撃的なラスト


2016年4月13日は、コービー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)がNBAで現役最後の試合をプレイした日である。ラストゲーム、コービーは全盛期を彷彿とさせるプレーも見せて60得点をマークした。あの試合から今年で7年。いまだその劇的なエンディングを忘れられないという人は数多い。その「ブラックマンバ」のラストゲームを振り返っていきたい。※この記事は2020年刊行『英雄伝説 コービー・ブライアント』に掲載したものを再編集したものです。
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ブラックマンバ――。2015-16シーズンのコービー・ブライアントは、その凶悪なニックネームが嘘であるかのようなお粗末なプレーを見せていた。数シーズン前であれば朝メシ前だった20得点を記録するのにも一苦労。そのショットはリングにかすりもしないこともあった。そんな最中での引退宣言。驚かなかったと言えば嘘になるが、心のどこかでその日が近いことを予感していたのもまた、事実だ。

スターターとしてコートを去る。実にコービーらしいタイミングだ。引退宣言以降、レイカーズ戦のチケットは飛ぶように売れ4月13日、コービーのフェアウェルツアーは終着点を迎えた。引退試合となったのはホーム、ステイプルズ・センター(現クリプト・ドットコム・アリーナ)でのユタ・ジャズ戦。試合前日の時点で、ジャズはウエスト9位(40勝41敗)とプレーオフ進出の当落線上にいた。しかし、この試合開始前に同8位のヒューストン・ロケッツがサクラメント・キングスに勝利したことで、ジャズのプレーオフへの道は断たれた。つまり、この試合は“コービーの引退試合”という肩書きのみが残る試合となったのだ。

LAの英雄がパープル&ゴールドのユニフォームを身にまとう最後の日。15点でも20点でもいい、1点でも多く点を獲れればいいんだが…。これがファン、そしてコービー自身が考えていたことだろう。実際にコービーも「今日はとにかくハードにプレーして、自分ができる限りのショーを見せようと思っていた」と試合前の心境を振り返っている。――このときは最後の48分間の結末など、誰一人、知る由もなかった。

試合開始。序盤からチームメイトたちは、コービーにボールを集め、彼自身も積極的にリングを狙った。しかし、なかなか入らない。不安そうに見つめるファンがようやく安堵したのは試合開始から7分近く経過してからだ。インサイドに切れ込んだコービーはマッチアップしていたゴードン・ヘイワードをかわし、ジャンパーを成功させる。これで勢いづくと、第3Q終了までに37得点を積み上げた。

そして第4Q、ブラックマンバが牙をむく。笑顔は消え、相手をにらみつけるようなかつてのコービーの姿がそこにはあった。ドライブ、ポストアップ、3ポイントプレイ。あるゆる手段で得点を重ね、残り31.6秒で得意の右45度からジャンパー。「また決めた! 58得点目! これでレイカーズリードです(He’s got it! 58 points! And Lakers lead!) ――興奮を隠しきれない実況の声が響く。これはレイカーズ初リードの瞬間だった。

そして、現役最後の得点はフリースロー。NBAでの初得点も、憧れのマイケル・ジョーダンの通算得点を抜き去ったときもそうだった。節目の得点はいつもフリースローだ。直後にジョーダン・クラークソンのダンクをお膳立てして勝敗が決すると、コービーは駆け寄ってくる若手を力強く抱きしめた。「後は頼んだぞ」と言わんばかりに。

「今日はいろいろな場面で感傷的になったよ。ロッカールームで自分のジャージが掛かっているのを見て『ああ、これを着るのも今日が最後か…』とね。アリーナに着いたときも、さまざまな場面で感傷的になっている自分がいたんだ」。試合後の会見でそう語ったコービーの表情は、ブラックマンバから一人の男のそれへと戻っていた。

コービーがこの試合で記録した60得点は引退試合での歴代最多得点であり、2015-16シーズンのリーグの最多得点でもあった。20年もの間、多くのファンを魅了し続けた男は、最後にとびきりのサプライズを披露し、プレーヤーとしてのキャリアに幕をおろした。一言“マンバアウト”と言い残して。


1234TOTAL
ユタ・ジャズ 2136182196
ロサンゼルス・レイカーズ 19232435101

コービー・ブライアント クォーターごとのスタッツ

Q MINFG3PFTORDRREBASTSTLBLKTOPFPTS+/-
1 12:005-131-54-40220011115-2
2 6:132-71-42-4000000007-11
3 12:007-141-70-001111010156
4 11:568-163-54-4011300002314
TOTAL 42:0922-506-2110-1204441121607

BOXSCORE

ユタ・ジャズ MINFG3PFTORDRREBASTSTLBLKTOPFPTS+/-
ゴードン・ヘイワード★ 31:566-162-63-51123002217-12
トレイ・ライルズ★ 39:077-152-62-329113503218-6
ジェル・ウィシー★ 27:474-70-02-31891111310-3
ルドに―・フッド★ 18:042-70-20-0112310114-18
シェルビン・マック★ 34:335-120-42-21456003212-1
ラウル・ネト 18:594-70-20-00114000085
トレバー・ブッカー 28:474-70-00-2235210138-1
ジョー・イングルス 20:304-74-70-00114200112-8
クリス・ジョンソン 20:173-51-30-002210022719
トレイ・バーク DNP - Coach's Decision
アレック・バークス DND - Right Knee Soreness
デリック・フェイバー図 DND - Right Knee Soreness
ティーボー・プライス DNP - Coach's Decision
TOTALS 39-839-309-158303827101131696-5

ロサンゼルス・レイカーズ MINFG3PFTORDRREBASTSTLBLKTOPFPTS+/-
コービー・ブライアント★ 42:0922-506-2110-1204441121607
ジュリアス・ランドル★ 33:091-40-00-00991111223
ロイ・ヒバート★ 21:002-30-00-03362001243
ジョーダン・クラークソン★ 34:076-100-10-025711011129
ディアンジェロ・ラッセル★ 36:004-100-31-10445202391
マルセロ・ウェルタス 25:531-20-00-00446003220
ラリー・ナンスJr. 28:083-30-02-215601012810
タリク・ブラック 18:072-30-00-0257001244-8
ライアン・ケリー 1:270-00-00-00000000000
ブランドン・バス DNP - Coach's Decision
ロバート・サクレ DNP - Coach's Decision
ルー・ウィリアムズ DNP - Coach's Decision
メッタ・ワールドピース DNP - Coach's Decision
TOTALS 41-856-2513-1583947196313171015

★:スターター、MIN:出場時間、 FG:フィールドゴール成功数-試投数、 3P:3Pシュート成功数-試投数、 FT:フリースロー成功数-試投数、 OR:オフェンス・リバウンド、 DR:ディフェンス・リバウンド、 REB:リバウンド数、 AST:アシスト数、 STL:スティール数、 BLK:ブロック数、 TO:ターンオーバー数、 PF:ファウル数、 PTS:得点、 +/-:出場時間での+/-




文/堀内涼(月刊バスケットボール)

タグ: NBA レイカーズコービー・ブライアント

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