月刊バスケットボール6月号

3x3男子

2023.04.11

荒 優大(3x3三条ビーターズ)がスペイン武者修行で学んできたこと

3x3.EXE PREMIERに参戦しているSANJO BEATERS.EXEの荒 優大が、2月にマドリッド(スペイン)に遠征して取り組んだ武者修行の経験を語ってくれた。コロナ禍による国際的な人の交流が長らく制限されてきた後でもあり、3x3に特化した海外でのスキルトレーニングや実戦体験をシーズン開幕前に持てること自体が貴重だ。テクノサイエンス株式会社(サプリメント)とBrutus Design & Sports(アパレル)の支援を受けて実施した約2週間の現地滞在で、どんなことを学んできたかを聞かせてもらった。




今回のマドリッド武者修行は荒にとって海外渡航自体が初体験。「楽しむことが大前提」というアプローチとともに、「帰国後に以前と違った姿をチームに見せられるようにという思いで行ってきました」と荒は言う。目的意識としては、「日本と考え方が違うので戦略、セットプレーやコミュニケーションの質を高めることと、自分の課題であるアウトサイド・ショットの改善」とのことで、その上で実戦も体験しながら「自分がどれだけ通用するかを確かめられたら」という思いだった。

シュートに関しては、3x3では5人制以上にロングレンジの意味合いが大きい。5人制ならば通常のショットが2得点なのに対しアークの外側からのショットには1.5倍の3得点が与えられるが、3x3では通常が1得点、アークの外は2得点で2倍になるからだ。また、5人制の約半分の大きさのコートで、得点直後の比較的短いパス1本で即座に失点の可能性がある3x3では、攻守のトランジションを速くできるかどうかが勝負を左右する。さらにはコンタクトプレーに対するコールにも5人制とは異なる寛容さがあるため、フィニッシュに向かう流れとしては、スポットアップして放つジャンプショットよりも、激しい動きの中でのキャッチ&シュートやプルアップ・ジャンパーがどうしても多くなる。

そうした3x3ならではの特質を踏まえ、荒は「常に動いた状態でモーションを安定させるように意識する練習をひたすらやっていました」と話す。「シューティングモーションとミートのしかたを学んで安定するようになりました」

滞在中に、セビージャで行われた「La Quinta Parada de La Liga 3x3 Indoor Disputada3x3インドアリーグ第5戦)」という大会に出場することが決まったため、荒はVulcano 3×3というチームに所属して練習に励んだ。大会参加は出国時には確定していなかったとのことだが、遠征をコーディネートしたビーターズの笈入正和と現地スタッフの尽力が奏功し、目的意識をさらに高くしながら取り組める状況も作られた。また、ビッグママのニックネームでも知られる3x3女子スペイン代表のアイタナ・クエバス(Aitana Cuevas)とワークアウトをともにする機会にも恵まれた。


アイタナ・クエバスと荒

練習は一日3時間、個人スキルとチーム練習にわけて取り組んだ。「現地のスペイン人プレーヤーと作ったチームでしたが、何より皆IQが高いしシュートが上手でしたね。個人的には、体が強いというのはそこまで感じませんでした」というのが、世界でもトップレベルのバスケットボール大国スペイン武者修行の実感だ。「一人一人のIQも高いですが、チームとしてのIQが高いんです。相手がこういう選手だからこういうディフェンスにしようとすぐに切り替えるとか、そこでミスが出てもすぐに修正するとか。コミュニケーションをすればするほど質が高まる感じです」

コミュニケーションの取り方は、日本との大きな違いを感じた部分だったという。「会話は日本より多くて、常に話している感じでした。国民性もあるのかもしれませんね。それで質が自然と高くなるし、IQが高くなるのかもしれません。日本を否定するわけではないですが、どのチームもぎりぎりまで話しているんです」。現地のコーチやプレーヤーは、荒とコミュニケーションを深めるために英語を使ったという。笈入が通訳としてサポートできない試合中なども、何かあっても英語で問題なく解消できていたとのことだ。

直接的なプレーヤー同士のコミュニケーション以外でも、スペイン人らしい人と人との近しさを感じさせるエピソードも荒は話してくれた。練習は現地のコーチが手配してくれた体育館だけではなく、町中のアウトドアコートで行うこともあったが、そこで荒がシューティングをしていると、周りじゅうからやんやの歓声や拍手喝采が聞こえてくるというのだ。「練習していると周りで見ている子どもがわあ!っと盛り上がってくれて! 日本よりも情熱的でした。あんな中だと簡単にミスできませんよね(笑)」

研ぎ澄まされた環境でトレーニングを積んだ2週間の締めくくりとして出場した「La Quinta Parada de La Liga 3x3 Indoor Disputada」で、荒はVulcano 3x3の一員としてグループラウンドから出場機会を得た。準決勝で負傷したのは残念だったが、チームは見事この大会で優勝を飾っている。


Vulcano 3x3の優勝記念写真(左から2番目が荒)

当初の目標どおりスペイン滞在を大いに楽しみ、内容の濃い充実した武者修行を行うことができた荒は、「ショットに対するマインドとコミュニケーションは意識していこうと思っています。この二つが一番感じたことでしたから」と語り、「ケガはしたけどスペインでやれて自信がつきました。世界でも通用するプレーヤーになりたいです」と夢を膨らませている。

520日から始まる3x3.EXE PREMIER 2023でのビーターズの目標は日本一奪取。すでにスペインでの経験はビーターズのメンバーとも共有し、コミュニケーションも密にして開幕までの時間でレベルアップを図っている。「目標達成に向かって頑張るのみです」と意欲的な荒が、スペインでの学びをどんなパフォーマンスに結びつけるか注目してみたい。

SANJO BEATERS.EXE

20194月に誕生した新潟県内初の3x3プロチーム。昨シーズンの3x3.EXE PREMIERはカンファレンス4位。今シーズンは本文にもあるとおり初の日本一を狙う。運営母体は「NPO法人 ソーシャルファームさんじょう」で、三条市下田で廃校となった小学校を活用してバスケットボールと農業を通じた地域おこしに取り組んでいる。ユニークな「半農半バスケ」というコンセプトを掲げ、地元の人々と一体となって地域を盛り上げ、三条から世界に羽ばたくタレントの創出を目指している。


荒 優大(SANJO BEATERS #8 写真右はスペインの現地コーチ、ハビエル・ウエルタス[Javier Huertas])
1999324日生まれ(千葉県柏市出身) 182cm G


柴田 健/月刊バスケットボールWEB

タグ: 3x3.EXE PREMIER

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