月刊バスケットボール10月号

Bリーグ

2023.04.06

長谷川智也、越谷アルファーズB1昇格への覚悟を体現するキャプテン再就任

©B.LEAGUE

シーズン終盤に来てチーム内で大きな動きがあった越谷アルファーズ。今シーズン開幕前にも、昨シーズン宇都宮ブレックスをヘッドコーチとしてB1チャンピオンに導いた安齋竜三をアドバイザーに迎えるなど、近年リーグ全体の中でもダイナミックな部類の様々な動きを見せてきているクラブではあるが、プレーオフも間近に控え激しい首位争いのまっただ中という状況で、立て続けにビッグニュースが発信されたことに驚いた人も多かったのではないだろうか。


39日に前キャプテン落合知也の自由交渉選手リスト入り(3x3活動に専念するため)が発表されたところから、市岡ショーン獲得(310日)桜木ジェイアール スーパーバイジングコーチ(以下SVC)の現役選手登録(313日)、そして317日には落合の前にキャプテンを務めていた長谷川智也が、再び落合からキャプテンの立場を引き継ぐことが明らかとなった。

その前後には2年連続でのプレーオフ進出確定(312日)、B1ライセンス交付(314日)、プレーオフクォーターファイナルのホーム開催確定(314日)、および41日の桜木SVC現役プレーヤー復帰と初戦でのダンク成功と注目の話題が相次いだ。3月に入って以降、チームは35日にアウェイで戦った西宮ストークスとの一戦を64-67で落としたが、その試合を含め4月2日のアースフレンズ東京Z戦までの11試合を92敗で乗り切り、45日時点で通算成績を4113敗(勝率)としてB2東地区2位(B2全体でも2位)の座を維持している。

アルファーズにとって3月中最後の試合だった26日の西宮戦(100-95で勝利)を終えた後、新キャプテンの長谷川に話を聞かせてもらった。

チームにコミュニケーションをもっともっと求めたい
※以下質問は要約です


3月26日の西宮ストークス戦で、ハドルを組んで話し合う越谷の5人。頭髪をユニフォームとおそろいのゴールドにした長谷川智也(ハドルの左端)が新キャプテンとして望む光景の一つだろう(写真/©B.LEAGUE)

――キャプテンとして自分自身注意すること

落合前キャプテンがチームを去ったのはすごく寂しいのですが、彼がやってきたことがチームにプラスになっています。ポジティブなマインドだったり、試合に出ていなくても鼓舞し続ける姿勢とか、すごくチームにプラスになっていました。僕は途中で抜擢されましたが、その部分は引き継いでやらなければいけないと思います。

――同じくキャプテンとして、チームに徹底したいこと

一人のプレーヤーとして3Pシューターとしての自分もキャプテンとしての自分もあり、気持ちの部分で葛藤もありますが、チームが勝てればそれでいいんです。落合さんが残してくれたことを引き継ぎつつ、僕はやっぱりチームにコミュニケーションをもっともっと求めたいです。全然足りていないので。

戦術面でのコミュニケーションでも、チームの仲間に対する声がけでも、40分間ずっと皆がしゃべり続けるチームにしたいですね。そこはこれからプレーオフに向けて徹底したいと思います。今日の試合では、ベンチでも皆スクラムを組んだり。僕が鼓舞する姿を皆見てくれているので、特に若手のトロイ(マーフィーJr)なんかに伝わると良いなと思います。

――あらためてキャプテンに返り咲いた心境

正直びっくりしました。本当に突然決まったことで、まさかキャプテンをやるとは思っていなかったので。ただ、昨シーズンまでキャプテンだったので、「ああ、もう一回やるんだ!」みたいな感じです(笑)

――ALPHAS.HOUSE(専用練習施設)の誕生や安齋アドバイザー就任による変化

大枠をチームが整えてくれているので、とても感謝していますし、B2でやる中では恵まれている環境だと思うので、そこに対する感謝を忘れずにやらなければと思います。

――今シーズンの個人的なパフォーマンス

点数を獲れる選手が増えたので、彼らに負けないぞという気持ちもあるし、僕の武器である3Pショットをパスが来たらしっかり決めることにフォーカスしています。それによって、周りがもっと良いプレーをしやすいスペースを作れます。やりがいを感じているし、ちょっとしたスペーシング、位置のずれで全然状況が違ってきて、「もう少しこっち側だったらシュートにいけたな」とか、いろいろ感じながら勉強中です。スポットシューターとして磨きをかけたいですね。

去年はがむしゃらにやっていた感覚で、今、イチからまた学ばせてもらっているというイメージです。


4月2日に行われた直近の対アースフレンズ東京Z戦でゴールに向かう長谷川(写真/©B.LEAGUE)

チームの覚悟を体現し、B1昇格をかなえたい

長谷川は、3月初めにアウェイで11敗だった西宮を相手に月末の連戦で2勝できた要因について、「前半は49-49。竜三さん(安齋アドバイザー)から、やることをやった方が勝てるという話をもらって、ベンチメンバーを含めそれを意識できたかなと。勝ちたいという気持ちが相手を上回ったかなと思います」と話しており、試合中の安齋アドバイザーの存在感も感じさせていた。その安齋アドバイザーを迎えたことや2021年秋に春日部に完成させた練習施設「ALPHAS.HOUSE」など、クラブが整える支援体制にB1昇格への覚悟も感じているという。キャプテンとして同じ覚悟を体現し、チームに浸透させる仕事の意義は甚大だ。

桜木SVCも長谷川のリーダーシップを大いに頼りにしている様子で、以下のようなコメントをしていた。

「最も大きくて価値があるのは、彼が自分自身の行動で示せるということです。彼は実際にやって見せ、単に言って聞かせたり指示を出すだけで終わりません。彼の行動は手本になるし、どのようにプレーすれば良いかの見本です。これはとても価値があることですよ。ベンチにいるときにも盛り上げてくれています。とても情熱がありコミュニケーション能力が非常に高いので、チームをぐんと勢いづきます。助かりますね」
“I think that mostly I see in him, it’s very valuable. He leads by example. He’s actually doing things. He’s not just talking to the players, not directing. His action shows. He’s giving example of how to play. I think that’s very valuable. When he’s on the bench, he’s cheering, you know. He has a lot of passion, you know, communication…, it’s very high. So, it brings the level of energy up, really help our team.”


ベンチでも長谷川は率先してチームメイトに声をかけ、立ち上がって声援を送る(写真/©B.LEAGUE)

桜木SVCが話している長谷川のコミュニケーション能力の高さは、記者の立場でも感じることができる。この日もそうだったが、話し方だけでなく表情やボディーランゲージを含めた長谷川の接しやすさや質問への前向きな対応は、いわゆる“メディア・フレンドリー”なことが特徴だ。その人柄にコート上の結果が伴っていることで、長谷川のリーダーとしての存在感が際立つ。今シーズン長谷川の3P成功率40.7%(162本中66本成功)は、規定数に達していないものの現時点でB2公式ランキング1位の狩俣昌也(40.2%)を上回っている。これはやはり説得力がある数字だろう。

越谷は48日(土)・9日(日)の週末以降レギュラーシーズンでは6試合を残している。B2首位のアルティーリ千葉を1ゲーム差で追う現時点での順位は、プレーオフ全体のホームコートアドバンテージ獲得に向け非常に良い位置と言える。というのも、越谷はA千葉との直接対決成績を22敗のタイとするとともに得失点差で43上回っており、かつ422日(土)・23日(日)のレギュラーシーズンフィナーレで、そのA千葉と千葉ポートアリーナで直接対決2試合を残しているからだ。

もちろん両チームの星取り動向にもよるし、いずれにしても勝たなければ何も手には入らない。しかし残りの6試合はすべて、自らの運命を自力で決める機会だ。長谷川のキャプテンシーはどんな形で発揮されるのか。その6試合だけでなくプレーオフも含めて、注目に値する事項の一つに違いない。


写真/©B.LEAGUE

柴田 健/月刊バスケットボールWEB

タグ: 越谷アルファーズ 長谷川智也

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