月刊バスケットボール6月号

Wリーグ

2023.04.03

[Wリーグ プレーオフ]ENEOS、シャンソンがセミファイナルに進出

 Wリーグ プレーオフがスタートした。41日(土)にセミクォーターファイナル、42日(日)にクォーターファイナルが新潟県東スポーツセンターで開催された。

 セミクォーターファイナルは富士通(リーグ5位)対日立ハイテク(リーグ8位)、トヨタ紡織(リーグ6位)対シャンソン化粧品(リーグ7位)が対戦。第1戦は富士通が延長戦を制し、第2戦はシャンソン化粧品が最終クォーターに逆転して勝ち上がった。これによりクォーターファイナル第1戦はENEOS(リーグ4位)対富士通、第2戦は三菱電機(3位)対シャンソン化粧品の対戦となった。このクォーターファイナルを勝ち抜けた2チームが、セミファイナルで待ち受けるデンソー(リーグ1位)とトヨタ自動車(リーグ2位)とのセミファイナルに臨む。


延長戦を制した富士通の司令塔・町田

延長戦を制した富士通の司令塔・町田



ENEOSが気合全開で富士通を圧倒

Wリーグプレーオフはクォーターファイナルまでは一戦勝負、セミファイナル以降は2先勝方式。ENEOSのキャプテン渡嘉敷来夢は「キャリアで初めて」というクォーターファイナルからの出場。「最初から自分たちのゲームを」と気を引き締めていた。

  そのENEOSが気合全開で試合をスタート。林咲希の3Pシュートを皮切りに、プレッシャーの強いディフェンスから立て続けに得点。10-0と序盤のペースをつかんだ。

 富士通はプレーオフではベンチスタートとなっていた宮澤夕貴を投入、その宮澤が富士通に初得点をもたらした。その後、町田瑠唯、宮澤の3Pシュートが決まるなどしたが、ENEOSオフェンスも好調、23-14とENEOSがリードして1Qを終えた。

 2Qに入り。富士通ディフェンスも厳しさを増し、ENEOSが攻めあぐねるケースも見られたが、ENEOSは37-262ケタリードを守って後半へ。

 後半に入ると富士通の司令塔・町田が3Pシュート、ドライブでファウルをもらうなど積極的にオフェンスをけん引。ディフェンスでも粘りが出ると、35-37とワンゴール差に詰め寄る。その後ENEOSは渡嘉敷がインサイドで強さを見せ、富士通は江良萌香が3Pシュートを決めるなど点を奪い合う展開となったが、高田静、宮崎早織が3Pシュートを決めたENEOSが55-478点差として最終Qへ。


圧倒的な存在感を見せた渡嘉敷

圧倒的な存在感を見せた渡嘉敷


 ENEOSは渡嘉敷、長岡萌映子を中心にインサイドを攻め込む。対する富士通は江良、町田の3Pシュートで対抗するも、なかなか点差を縮められない。その後も富士通の攻撃が単発に終わり、ENEOSは宮崎のドライブ、高田の3Pシュートが効果的に決まる。終盤、富士通がプレスディフェンスで猛追するも及ばず、76-69でENEOSが逃げ切った。

 富士通の町田は「林選手の3Pシュートという、やられたくないところからスタートして、出だしで流れをつかまれてしまった」と悔やむ。テーブスHCも「1Q以外はオフェンス、ディフェンスと自分たちのゲームはでき、最後まであきらめずに戦ってくれたのですが」としつつ、「渡嘉敷選手、長岡選手のコンビプレー、ハイ&ローなどにやられました」と合わせて38得点をあげた2選手を抑えられなかったことを敗因に挙げた。

 ENEOSの渡嘉敷はインサイドでコンビを組むパワーフォワードの長岡を「これまで組んできたタイプと違った形で自分を生かしてくれる」と昨シーズンまでの梅沢カディシャ樹奈(現トヨタ自動車)、かつての大崎佑圭らセンタープレーヤーのコンビとの違いを語る。その長岡もシーズンが進むにつれ、「チームメイトがどんなプレーをするのか分かってきた」と積極的にコミュニケーションを取ってきたのが功を奏していると話す。

 また渡嘉敷は「富士通来いって思ってました」とこの試合への思いを強くしていた。昨シーズンのプレーオフでもセミファイナルで富士通に敗れ、開幕シリーズで連敗していただけに、「優勝するにはどのチーム相手でも勝たなければならないのは同じですから。であれば富士通さんとやりたかった」とリベンジを期し、それを果たしたのだ。

 シャンソンが連夜の逆転劇

 続く三菱電機とシャンソンの一戦は序盤から三菱電機のスコアラー・渡邉亜弥が得点を積み上げ、根本葉瑠乃が3Pシュートを決めるなど流れをつかんだ。また、固い守りでシャンソンを苦しめ、26-13とダブルスコアで2Qに。その後、シャンソンも小池遥、金田愛奈らを中心に巻き返しを図るが続かず、アーリーエントリーで加入して以来、リーグにインパクトを与えてきたインサイドの柱イゾジェ・ウチェも、三菱電機のディフェンスの前に苦戦。前半は4得点にとどまった。一方でバランスよく攻める三菱電機が徐々に点差が開いていき、51-3120点のリードを奪った。

 後半も三菱電機がペースを握って試合は進んでいったが、4Qに入ると流れが一変。勝ちを焦ったのか三菱電機はシュートを決め切ることができず、その間にシャンソンが徐々に点差を詰めていく。残り8分あまり、水野妃奈乃の3Pシュートで8点差とついに一ケタ差。さらに吉田舞衣の3P、ウチェのゴール下と続き試合は混戦模様になっていく。

 試合後、三菱電機のエース渡邉は「司令塔でキャプテンの小池選手が若い選手たちを引っ張っており、ウチェ選手のインサイドを気にしたところで、水野選手が3Pシュート決め、吉田選手もスキを突いて決めてくるなど、若い選手たちがそれぞれの役割を果たし、乗ってきている」と、4Qに入って潮目の変化を感じ、警戒心を抱いた。

 一方「最後まであきらめない中で、逆転のチャンスが巡ってきた」とシャンソンの小池。終盤残り2分を切ったところから水野、小池の連続3Pシュートでついに逆転。再逆転した三菱電機に対し、残り29秒で水野がこのクォーター3本目となる3Pシュートを決めて逆転勝利を手にした。シャンソンは前日も4Q10点差をひっくり返しており、連夜の逆転劇で生き残ることになった。

若い選手たちを引っ張り、シャンソンをセミファイナルに導いた小池

若い選手たちを引っ張り、シャンソンをセミファイナルに導いた小池


 勝負どころで3Pシュートを決めた水野は「小池主将がずっと『最後まであきらめないで、ディフェンスとリバウンドだよ』と言い続けてくれたので、あきらめずにプレーできていました。4Qまでは無得点でしたが、思いっきり打てとみんなが声をかけてくれました」と話す。小池も「コーチがやりたいバスケットを理解できていますし、今はチームが一つになって、いい雰囲気でやってこれてます」とチーム状況の良さを語った。

 ENEOSはデンソーと、シャンソンはトヨタ自動車と46日(土)から始まるセミファイナルで激突する。



文・飯田康二/写真・石塚康隆

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