月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2023.03.23

利き腕骨折のベテランシューター岡田優介、なるか完全復活 - アルティーリ千葉vs.佐賀バルーナーズ戦で復帰後初スリー炸裂

(写真/©B.LEAGUE)

「決して平坦なリハビリ期間ではなかったです。これだけ大きなケガで、しかも利き手なので、正直かなりきついなと…」


318日に千葉ポートアリーナで行われたアルティーリ千葉対佐賀バルーナーズ戦GAME1で、昨年1217日以来3ヵ月ぶりに3Pショットを成功させ72-67の勝利に貢献した岡田優介は、試合後の会見でこう話した。

12月のあの日、アルティーリ千葉は印西市松山下公園総合体育館で西宮ストークスを迎え撃ち、75-74で勝利した。しかし岡田は第4Q半ばに相手のプレーヤーと交錯し、右腕を痛めてしまう。相手プレーヤーの重みが岡田の腕にのしかかり、どこを痛めたかは判別できなかったものの明らかに大きなダメージを受けたことがわかる情景だった。二日後クラブが発表したのは、右腕尺骨(人の前腕にある細長い2本の骨のうち、体幹に面した方の1本)骨折という診断。以降岡田は戦列を離れ、手術とリハビリを経て実戦復帰という過程に向き合ってきた。

38歳の年齢を考えても、復帰までの道のりが相当厳しいだろうことを多くの人が想像したのではないだろうか。それがシューターの利き腕であれば、明るい見通しを語るのは簡単なことではなかったはずだ。しかし、ベテランシューターは絶望的とも感じられる状況から、比較的短期間で相当高いレベルに回復した姿を見せた。

ドリブルゼロで3Pショット3本成功

実戦復帰自体は、311日の熊本ヴォルターズ戦GAME1ですでに済ませていた。コートの感触をつかむためか、そのときは4つのクォーターそれぞれで少しずつコートに立ち、合計641秒の出場でフィールドゴール1本をミスし、オフェンスリバウンド1本をつかんだ。

復帰2試合目だった18日の佐賀戦では、岡田は1週間前の倍近い1254秒プレーして3Pショット6本中3本成功により9得点を記録している。チームプレーの中で勢いのあるオフボール・ムーブを繰り返し、オープンスペースができた一瞬のチャンスを逃さずフィニッシュに持ち込むプレーぶりが健在だった。


(写真/©B.LEAGUE)

復帰後最初の3Pショット成功は、43-474点差を追う第3Q残り3分過ぎのプレーで生まれた。岡田はまず、トランジションでバックコートからフロントコートの左コーナーに駆け上がる。そこから右ウイングへ、さらにもう一度左コーナーへと2度サイドチェンジを伴うカットをした後、大崎裕太のドライブ&キックで状況がカオスとなったところで、イバン・ラベネルからのパスを受けて左コーナーから決めた。

51-501点リードという状況だった第3Q残り11秒の2本目は、ショットクロック上も3秒程度しかないクラッチショット。左サイドでラベネルとブランドン・アシュリーのスクリーンを使ったカールカットから、左ウイングにオープンスペースを作ってのキャッチ&シュートがネットを揺らした。

3本目は56-56の同点で迎えた第4Q残り744秒の一撃だ。この時は右サイドのベースラインからのインバウンドプレーで、岡田はスローインを担当して右ウイングにいる大崎にパスした後、逆サイドのローポスト付近にいたレオ・ライオンズと、同じサイドのハイポスト付近にいたラベネルの傍らを駆け抜けてトップでボールを受け、思い切りよく狙ったショットがゴールを射抜いた。

「自分のシュートじゃないみたい」からの終盤戦完全復活に期待

3度の得点シーンで岡田のドリブルがゼロだったことや、カットの途中で相手のビッグマンと激しくぶつかり合っても負けずに突っ走る様子は、岡田がシステムの中で十分機能している証しと感じられた。ただ、本人の言葉を聞くとまだまだ100%までの道は長いようだ。

「ちょっと動けるようになってシュートを打てるようになってからもずっと違和感が消えなくて、今でも正直万全ではないです。自分のシュートが取り戻せていません。徐々に、本当にちょっとずつ良くなってはいるものの、何だかやっぱりしっくりこないなみたいな。一本一本打つたびにすごくストレスがかかって、自分のシュートじゃないみたいな…」

「自分にとってシュートはすごく大事なもの。これでずっと生きてきているので、それが制限されているのは非常にストレスフルな毎日だし、まだそれが少し残っています」

手術後は、当座の復帰目標を311日・12日の福島ファイヤーボンズ戦と設定してリハビリをスタートし、術後1-2週間のうちにはシューティングを再開。復帰を早める希望的な見方さえ持てるようになった。試合に出ようと思えば3週間程度前から出られる状態ではあったが、無理を控え福島戦は見送りに。最終的にその翌週の熊本戦で試運転ができ、ホームでの首位攻防戦となる佐賀との対戦で、一段レベルを高めたパフォーマンスを披露するまでは回復できたという状態だ。実際、佐賀戦GAME1の前半にはずしたショットに関しては、「何であんな簡単なシュートを決められないんだ」というようなストレスもあったという。

「シュートは繊細なので、ちょっとした違和感でも昔はこんなシュートだったかなぁみたいな。今はそれを少しずつ消している状態で、ぶっちゃけ万全ではないです」

入った3本に関しては、長年のキャリアで体に染みついた実戦感覚や、2,753人の観衆が集まった会場の雰囲気に助けられたとも話した。

「試合中はアドレナリンが出るし、ゲームに入っていくことでその違和感を忘れるというか。今まで何十年もずっとやってきた自分の動きに合わせて打つだけで、(違和感を)忘れられているのがよかったのかもしれません。ゲームのメンタリティーだったから入れられたのかなと。会場の雰囲気とかの中で、一瞬だけ忘れられたようなこともあると思います」


(写真/©B.LEAGUE)

「完璧ではないし、完璧を待っていたらシーズンが終わってしまいます。今週いってみようか…、アップから入ってみようかと迷いながら過ごしてきましたが、今週の練習はいけるんじゃないか、試合で皆の足を引っ張らないレベルかなというくらいの状態で入って、結果こうして決められたのでほっとしています」

まだコンディション的な不安はぬぐい切れない様子の岡田だが、佐賀との2試合を終えた週明けの320日に、「ストレスフルな日々でしたがホーム復帰戦で役割を果たすことが出来ました。日頃から温かい声をかけてくださるファンの皆さんのおかげで心折れることなくここまで頑張れました」とソーシャルメディアで復帰を報告。終盤戦に向け意欲も自信も強めているようだ。

アンドレ・レマニスHCも、試合後に岡田の復活ぶりに対する手応えを以下のように語っていた。

「本来の彼の姿でしたね。コートに入って活力とオフェンスのペースをもたらしてくれました。相手が彼を放っておけない状態でしたよね! 警戒させて味方にいくつも好機を生み出してくれました。やはり彼がいてくれるのは助かります」 
That's what he does. He comes in and he brings the energy and the pace in the offense. He has to be guarded! He attracts a lot of attention and that opens up opportunities for his teammates. So, it's nice to have him there.”


この日が誕生日だったアンドレ・レマニスHC。岡田の復帰弾はうれしいプレゼントだったに違いない
(写真/©B.LEAGUE)

「足を引っ張らない」と踏んでホーム復帰を果たした週末は、結果として2試合で3Pショット7本中4本成功(フィールドゴール全体では8本中4本成功)の12得点に、ビッグマンと格闘しながらのカットやタフなディフェンスで満たされた1935秒のバトルとなった。チームは強敵相手に連勝。その中で岡田は、内面的に迷いながら3ヵ月を費やした後の再スタートとして、今後が楽しみになる活躍だった。

柴田 健/月刊バスケットボールWEB

タグ: アルティーリ千葉 アンドレ レマニス岡田優介

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