月刊バスケットボール7月号

Bリーグ

2023.03.07

チュクゥディエベレ・マドゥアバム(トライフープ岡山)インタビュー – 「“ハック・ア・チュウ”はご免です」

B3プレーオフ圏内のせめぎあいの真っただ中で奮戦中のトライフープ岡山。そのセンター、チュクゥディエベレ・マドゥアバムに、3月3日の東京ユナイテッドバスケットボールクラブとのアウェイゲーム後に時間をもらった。


 
チュクゥディエベレ・マドゥアバム(Chukwudiebere Maduabum)
トライフープ岡山#14 C 206cm/125kg
1991年3月19日ラゴス(ナイジェリア)生まれ

マドゥアバムはこの試合でフィールドゴール4本すべて、フリースロー10本中9本を成功させてゲームハイの17得点、6リバウンド、3アシスト、1スティールを記録。試合には78-81で敗れたが、2011年のNBAドラフトでロサンゼルス・レイカーズから指名された能力の高さを見せつけるような豪快なブロックショットと、ゴールの位置がずれてしまったほど力強いドライビングダンクで、有明スポーツセンターに集まった両チームのブースターを沸かせた。

ニックネームは“チュウ”

“チュウ”のニックネームで親しまれるビッグマンは、チーム広報の中野恵子さんとともにインタビューの現場に姿を見せると、まずは「My name is Keiko”(私はケイコです)」と軽くボケをかました(そばから広報のケイコ氏が「それは私」と挙手)。マドゥアバムの「なっはっは〜!」という明るい笑い声とともに、Q&Aへとなだれ込む。

——ニックネームは"チュウ"ですよね。チュウさん、よろしくお願いします。日本語を話すんですか?

少し…、今勉強中です。

——素晴らしい!

ははは〜!

——今日はモンスターのようなプレーがいくつかありましたね。最初はものすごいブロックショット。あれはどんな状況で起こったんですか? あんなプレーは日本でできる人はいませんよ!

いやぁ、ほかにもできる人はいるとは思いますけど…、ありがとうございます!

あの時は相手が中央から突っ込んできて、パスの出しどころがなくなっているのがわかったので、これはレイアップに来るなと読みました。思いっきり跳び上がりましたよ。ダンクに来るかもしれなかったので。それであんなすごい状況になったんでしょうね。彼は僕を見て、高く放らなければと思ったはずですから。僕もできるだけ高く飛ぼうとしました。そんな流れですね。

——目と目が合ったんですか?

彼とですか? そこまではわかりませんが、僕のことは見えたでしょうね。こちらはゾーンをやっていて、僕はブロックに跳び上がりましたから。

この説明を受け「あれはすごかった!」と伝えると、“チュウさん”は「デンキュウ!(Thank you!)」と歯切れよく反応した。

このプレーが起こったのは、28-33と岡山が5点差を追う第2Q残り34秒だ。岡山のディフェンスのギャップを突いてペイントにアタックしてきたフォファナ ママドゥのドライビング・フローターに対して、レーンの左寄りにいたマドゥアバムが空中高く跳び上がり、ボールが軌道のピークに差し掛かる直前の非常に高い位置で叩き落した。

ボールはまるで、バレーボールのアタッカーがウォームアップで打ちまくるスパイクのように、逆サイドのベースライン付近に鋭角的に打ち込まれた。岡山は第2Q序盤に2桁のビハインドを背負っていたところからの反撃中だったが、この驚くべきプレーも勢いをもたらしたのは言うまでもない。

一点、これがチームディフェンスの中で成し遂げられていることを付け加えておきたい。本人が触れているとおり、ママドゥのパスコースはすべてほかのディフェンダーによって塞がれていた。マドゥアバムが思いっきりジャンプするほどこの瞬間にコミットできたのはこの連係があったから。そんなプレーだった。

ゴールが揺れた…だけでなくずれてしまったパワフルダンク

そしてさらに続いたのが、前半残り6秒に飛び出したベースラインドライブからのボースハンドダンクだ。34-351点差に迫る重要な得点でもあったが、あまりのパワーでゴールが台座と支柱ごとずれてしまい、試合がしばらく中断される事態になったことにもびっくりだ。数人がかりで台座を押し動かした後、高さの計測もやり直して、ようやくプレー再開となった。

このプレーについて話を聞いてみた。左ローポストでボールを持ったところから、マドゥアバム自身の解説は以下のようなものだ。

——もう一つ、ゴールをグラングランと揺らして叩き込んだものすごいスラムダンクがありました。あれはどんな状況だったんですか?

彼らがトラップを仕掛けてくるのがわかりました。ときどきベースライン側を塞がれることがあるんですが、あのときはそうなっていなかったので、一度フェイクをかけて、2度目もかけてからスピンしました。相手は『あ、パスかな? それとも内側にくるかな?』みたいな思考だったと思います。僕は顔をそちら(ハイポスト側)に向けていた状態から、逆側にドリブルしてダンクにもっていきました。

——今日は17得点、6リバウンド、3アシスト、1ブロックに1スティール。オールラウンドなプレーでした。その中で左サイドのローポストでプレーすることが多かったと思うのですが、あそこが得意な場所なのですか?

僕は右利きなので、自然とあのようになるんです。利き手が生かせるんですよ。トラップが来ても右手でいいパスが楽に出せるので。右手の方が強いし判断も良くなるので、左から攻めるんです。もしもダブルチームしてこないようなら両方のサイドを同じように使うでしょう。


左ローブロック(ローポスト)付近でボールを持つチュウさんの背中は凛々しい逆三角形だ(写真/©TryhoopOkayama)

——でも(あのダンクのプレーでは)左手でドリブルしなければならなくなりますね。

あれは逆になりますね。あまりスカウティングになるようなことを出したくないですが、左サイドのローブロックだとパスでチャンスを作ったり、ディフェンスの様子を見ながらいろんなプレーができます。でも右サイドからだと内側(ベースラインと反対側)に攻めて得点を狙うことが多くなるんですよね。

――リバウンドについても聞かせてください。今日は合計6本でそのうちディフェンス・リバウンドが5本でした。比留木謙司HCはもっと獲ってほしいと言っていましたが…。


そうなんです。僕ももっと獲りたいんですけどね。でも相手のプレーのしかたも影響して、思うように獲れないときもあります。東京Uのようにジャンプショットが多いチームだと…。今日彼らが何本打ったかはわからないですけど、たくさん決められたと思うし、うちもジャンプショットが多かったと思います。そうなると僕はあまりリバウンドが獲れません。

インサイドが多いチームとやると僕のリバウンドも増えます。リバウンドもペイント内が多くなりますから。でも3Pショットが多いチームとの試合ではリバウンドもペイントの外に飛んでいくことが増えるんですよ。そうなると、ゴール下でディフェンスを頑張ろうとしている僕が獲る本数は減ってしまいます。

大きな課題はフリースロー

マドゥアバムと話す前に比留木HCに試合の総評を聞いたとき、確かに「僕としては満足いく出来ではないです。あの体つきでそれだけしか獲れないのかなぁと。彼とは(リバウンドについて)常々コミュニケーションをとっていますよ」と話していた。

また、比留木HCがこの話題に続けて触れたのがフリースローだった。実はマドゥアバムにとって泣きどころがこのフリースローなのだ。35日までを終えた時点でアテンプト数299本はB3リーグ3位で、これは良いのだが、外した本数166本がトップという状態だ。このインタビューでも以下のようなやり取りがあった。

——シーズンの最終局面に入っていきますが、B2昇格に向けて成し遂げたい、あるいは改善したいことは何ですか?

安定感のあるディフェンスをしっかり続けることです。個人的にもディフェンスでチームに迷惑をかけないように。それとフリースロー。これを入れないと…。

——今日は10本中9本成功でしたね!

いやぁ、今日は…! 神様に感謝ですね(笑) 僕はたぶんB3で一番たくさん外しているんですよ。200本近いんじゃないかな…。ひどいんです。これを改善しなければなりません。簡単に言えば僕のせいで200点近く損しているわけですから。僕の頭の中では、それができたらチームも間違いなく良くなるはずです。相手も僕にファウルしてオフェンスを崩せると考えなくなるでしょう。

——ハック・ア・シャックならぬハック・ア・チュウができなくなるということですね。

そう、ハック・ア・チュウ。これはいりません。僕のせいで負けるなんて嫌ですからね。誰にもそんな役目をしてほしくはないですけど、それを僕が請け負うのもご免です!! チームのためになることをやらなきゃだめです。迷惑をかけないように頑張りますよ!

こうしてマドゥアバムの二つのビッグプレーと二つの課題について話を聞かせてもらった。ビッグプレーに関しては、その場で見られて心底すごいと思ったし、ぜひ今後彼のプレーを多くのファンに見てもらいたいという思いだ。また、二つの課題についてはもちろん改善を期待するのだが、チーム内でこれが課題として捉えられており、本人にもその克服に向けた意欲があるのは非常によい兆候だろう。



トライフープ岡山はオーナーから若手スタッフまでを含めとても家族的で、お互いの自宅にプレーヤーたちが行き来して食事をともにしたりということもあるところが大好きだともマドゥアバムは話していた。「僕らの絆はそんな感じですよ」。その中でマドゥアバム自身とトライフープ岡山がどんな改善を成し遂げるか。レギュラーシーズンは残すところあと10試合となっている。



取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

タグ: トライフープ岡山

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