月刊バスケットボール1月号

Bリーグ

2023.03.07

西宮ストークス、プレーオフとB1昇格に向け決戦の春

©B.LEAGUE

B224節でホームに越谷アルファーズを迎えた西宮ストークスは、35日のGAME167-64で勝利したが、翌日のGAME2では、立ち上がりに優位を作りながら第2Qに逆転を許し、後半も粘りを見せたものの57-69の敗北を喫した。この結果36日までの日程を終えた時点で、B2東地区はアルティーリ千葉(3411敗、勝率.756)と越谷(3312敗、勝率.733)が1ゲーム差で首位を争い、西宮と福島ファイヤーボンズ、そして青森ワッツが2124敗、勝率.467)で並ぶ大激戦となっている。


B2は西地区で佐賀バルーナーズ(387敗、勝率.844)が早くもプレーオフ進出を決め、同地区の長崎ヴェルカ(3213敗、勝率.711)、熊本ヴォルターズ(2619敗、勝率.578)、東地区のA千葉と越谷までの上位5チームはある程度以上プレーオフ進出争いで足場を固めつつある。しかし“第2グループ”では別の物語が進行中だ。西地区の愛媛オレンジバイキングスも同勝率であり、ワイルドカードの2枠を含むプレーオフ進出権争いが非常にし烈な様相となってきた。

24節の西宮と越谷の対戦は、そんなシーズンの流れの中で注目すべき見どころを提供する対戦だった。というのも、越谷が前節ホームでA千葉に連勝しており、しかもGAME2の勝ちっぷりも桜木ジェイアール スーパーバイジングコーチが「これまでで最も大きな勝利」と表現した101-60という大勝だったからだ。

前節を終えた段階では首位の座を取り戻していた越谷が勢いづいていないわけがない。その越谷を相手に、プレーオフスポットを争う西宮も負けられない。

お互いの魂がぶつかり合った大激戦、西宮は、前半一度は2桁点差のビハインドを背負う。その後接戦に持ち込んだものの、第4Q開始3分過ぎの時点で再び51-60と9点差を追う状況に追い込まれた。



チームをけん引するキャプテンの道原紀晃(写真/©B.LEAGUE)

しかしキャプテンの道原紀晃が要所で果敢なドライブからのレイアップなどでゴールを奪い、ゲームハイの17得点。フロントラインでもジガ・ディメッツとトレイ・ポーターがそれぞれリバウンドを11本、10本つかむ奮闘をみせた。64-64の同点で迎えた残り2秒、ジョーダン・ハミルトン(この試合で12得点)がトップやや右寄りの深い位置から、厳しくクローズアウトしてくるブレコット・チャップマンの長い腕をかわしてブザービーターとなるステップバック3Pショットで決めた瞬間、1,959人のブースターが集まった西宮市立中央体育館を大歓声が包んだ。執念とブースターの思いが生んだような白星だった。


勝負を決めるクラッチスリーを放つジョーダン・ハミルトン(写真/©B.LEAGUE


翌日のGAME2を逆転で落としたのは悔しかったに違いないが、西宮は終盤戦に向けて、決して悪くはない戦いをできたのではないだろうか。

越谷の桜木スーパーバイジングコーチは、この2試合を終えた後のコメントで「我々が今シーズン目標としているディフェンスからリズムを掴んでオフェンスに繋げるということをできた」と話し、得点力のある西宮を60点台以下に抑えられたことを大きな勝因として挙げている。「マンツーマンからゾーン、ゾーンからマンツーマンへと変幻自在の“スイッチディフェンス”で西宮のリズムを崩すことができた」という見方だ。西宮は越谷との4度の対戦を22敗のタイとしているが、負けた2試合は確かに、どちらも50点台に封じられている。

西宮にとって越谷とのGAME1での勝利は、今シーズン初めて60点以下の得点での勝利でもあった。そのケースでは14敗。4敗のうち2敗が越谷に対するものだ。ただ、こと越谷とは前述のとおり直接対決の勝敗がタイであり、相性の良さも感じさせている。

ここまでの45試合中、上位5チームとの18試合は612敗。その18試合での平均得点は78.2であり、平均失点は82.7だ。この中で特筆すべきなのはA千葉との対戦で、直接対決は04敗ながら、そのうち3敗は4点差以内の大激戦だった。こうした個別の対戦をみると、西宮と上位5チームの差は成績が示す以上に紙一重と思える。越谷とのケースは、異なる戦い方でも勝つ術を見つけられる証しとも言えるのではないだろうか。

昨年12月、A千葉との対戦を終えた段階で森山知広HCに話を聞いた際には、「これまでのように外国籍選手をスコアラーに据えたスタイルではなく、全員がリングに向かっていくスタイル。慣れていなかったこともあってまだオフェンスが向上しきれていませんが、最後の詰め、ゲームの綾のところの質をいかに上げられるか。それで勝敗も変わってくると思うんです」と状況を説明してくれていた。その時点では914敗だったが、とりこぼした感覚の黒星も5-6試合はあったようだ。どこかで“ブレイクスルー”できれば順位も上がってプレーオフに出られる——そんな思いも語っていた。


3月5日の越谷アルファーズ戦でコート上の戦況に目をやる森山知広HC(写真/©B.LEAGUE)

興味ぶかいのは、今後の西宮に残された15試合中、以下のとおり上位5チームとの対戦が6試合、現時点で同勝率のチームとも6試合を残していることだ。

3/1112佐賀(アウェイ) 直接対決0-2
3/22福島(アウェイ) 直接対決1-24/2122にもホームで対戦)
3/2526越谷(アウェイ) 直接対決2-2
4/12青森(ホーム) 直接対決3-1
4/89A千葉(ホーム) 直接対決0-4
※このほかバンビシャス奈良(3/18・19、ホーム)、アースフレンズ東京Z(4/15・16)と対戦

この日程は相当タフに感じられる一方で、仮にここを乗り越えてプレーオフに進むとすれば、チームとしての結束や勢いがかなり高まっているだろうことも想像できる。特にアウェイで上位とライバル相手に戦う6試合、下位の奈良とホームで戦う2試合を行う3月をどのような形で乗り切るか。

前述の12月の取材時、森山HCは「最後まで選手とチームを信じてやっていくだけです」と話してインタビューを締めくくっていた。西宮にとっては“決戦の春”。信じる力が実を結ぶことを期待しよう。



取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

タグ: 西宮ストークス

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