月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2023.03.01

アルバルク東京のカークが子どもたちに伝えたいこと「どんなときも感謝の気持ちを持ちながら過ごしてほしい」

キャリアを通じて継続してきた子どもたちとの触れ合い


プロバスケットボール選手の仕事は、ただ単にバスケットボールをプレーすることだけにはとどまらない。Bリーグでも慈善活動にいそしむ者、自身のアパレルブランドや会社を立ち上げる者、所属クラブやパートナー企業とコラボしてイベントを催したり、グッズ制作をする者など、多くの選手が“自分”というブランドを生かした活動を行っている。

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世界に目を向ければ、NBAのレブロン・ジェームズ(レイカーズ)は自身の生まれ故郷であるオハイオ州に学校を設立するといった大掛かりな取り組みをしていたり、南スーダン出身の故マヌート・ボル(元ブレッツほか)はNBAでの年俸のほとんど(全額という説もあり)を母国の支援のために使っていたという話もある。

立場や形は違えど、さまざまな活動で社会貢献をしようとしている選手たちが数多く存在しているわけだが、アルバルク東京に所属する211cmの大男アレックス・カークもその1人だ。

かつてはNBAでもプレー経験があり、A東京では今季で在籍6年目。気づけば田中大貴、ザック・バランスキーに次ぐ古株となったビッグマンは、2月28日に催された「アルバルク東京×KINTOバスケットボールクリニック」にて、自分の肩ほどの身長の中学生に熱心な指導を行っていた。

このクリニックは昨年6月に活動拠点の体育館が火災に見舞われてしまった立川市立第七中学校のバスケットボール部に対して、近隣の府中市に練習場を構え、立川市と相互協定を結ぶA東京と、クラブのプラチナパートナーである株式会社KINTOがサポートの場として提供をしたもので、この日は男女合わせて22人の部員が集まった。

クリニックにはカークとPGの岡本飛竜が参加し、前半は岡本によるハンドリングドリル、後半はカークによるシューティングドリルが実施された。



講師役を務めたカーク(左)と岡本

伊藤大司トップチームGMの通訳を受けながら全体の音頭を取ったのはカークで、その進行ぶりは過去の経験から来る慣れと手際の良さが見受けられた。「NBAやヨーロッパでプレーしていたときもオフにニューメキシコの地元に戻ったときには子どもたちを招待してクリニックやキャンプを行っていました。そのときには100人以上の子供たちを相手にすることもあって、そういう経験があって今回のMC役もうまくできたと思います」と、昔から行っていた子どもたちへのサポート活動とあって、その表情からは笑顔がこぼれた。

日々のチーム練習では真剣な表情でバスケットに向き合い、試合中にはパワフルなダンクや力強いインサイドプレーを見せるカークだが、このクリニックに関しては終始リラックスした表情で子どもたちと接しており、そのギャップは彼の人間性の豊かさを表しているようだ。そんなカークに釣られるように岡本にも笑顔が増え、彼ら2人の姿を見た選手たちもバスケットボールという競技の楽しさを改めて感じたに違いない。



カークはイベントを終えて、楽しげに以下のような感想を語ってくれた。

「特に外国籍選手は日本の子どもたちと触れ合う機会があまり多くないので、KINTOさんのご協力もあってこういった機会を与えてもらえたのがすごくうれしいですし、楽しかったです。彼らに一番伝えたいのは先生やコーチ、両親にしっかり感謝をすること。中学生というと思春期や反抗期ではあると思いますが、ご両親や先生たちは子どもたちの成功を一番に考えて動いてくれているので、そこに対してまずはしっかりと感謝をして、そういう人たちのおかげで今、自分たちがこうして過ごせているんだと感じてほしいですね。どんなときも感謝の気持ちを持ちながら過ごしてほしいです」

最初はやや遠慮気味だった選手たちもカークと岡本のリードもあって徐々に表情が柔らかくなり、最後には笑顔でクリニックを楽しんだ様子。クリニック後には2選手への質疑応答や記念撮影に記念品の贈呈、カークからのサプライズプレゼントにサイン会など、サービスももちろん欠かさない。



A東京はバイウィーク前の時点で30勝8敗の東地区2位の成績で、現在ホーム16連勝中。ただ、直近の試合では島根スサノオマジックにアウェイで連敗しており、ケガ人の状況なども含めるとシーズン終盤にかけてより緊迫した試合が増えていくことが予想される。

そんな中での子どもたちとの束の間のふれあいはカークにとっても絶好のリフレッシュの場となった様子。「子どもたちとこういう時間を過ごすことによって、自分のルーツがどこだったのかを振り返ることもできるし、こういう時間を過ごせることが一番のリフレッシュ。ここらリスタートするために必要な環境だと思っています」とカーク。

こういった取り組みの輪を広げていくことが、プロ選手、プロクラブとしてのテーマの一つであり、リーグ自体の価値向上に向けた大事なステップである。最後にカークに、このクリニックに参加した選手たちにどんな選手、人間になってほしいかを問うとこんな回答をくれた。

「彼らにはまずチャレンジをして、それが成功しても失敗しても、どれだけハードワークできるかを心がけてほしいですね。実際、それはなかなか難しいことですが、そうすることが経験値にもなるし、継続することが最終的な目標達成には必要。そうすれば目標を必ず達成できると思うので、常にハードワークすることを心がけて、選手としても人間としても成長してほしいです」

カークと岡本との触れ合いが、選手たちの未来にプラスの影響を与えてくれることを願っている。




取材・文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)

タグ: Bリーグ アルバルク東京

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