月刊バスケットボール24年3月号

3x3

2023.02.25

どん欲さと自然体…“2人の齊藤”が見せた対照的な勝利への道すじ【第8回 3x3日本選手権大会ファイナルラウンドより】

「まだまだ強いんだ、トップに居続けるんだという姿勢は見せていきたい」
(齊藤洋介/UTSUNOMIYA BREX)

2月18~19 日に大森ベルポート (東京都品川区) で開催された「第8回 3x3日本選手権大会ファイナルラウンド」。今季3x3 OPENカテゴリーの日本一の座をかけた戦いは、男子はUTSUNOMIYA BREX(以下BREX)が2年連続2度目、女子はXD(クロスディー)が2年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた。BREXには、2023 FIBAワールドツアーマスターズ アジア・オセアニア大陸予選大会の出場権が与えられた。

2021年9月に開催の「3x3.EXE PREMIER JAPAN PLAYOFFS」で優勝を飾って以来、「3×3 JAPAN TOUR」、そしてこの「日本選手権」と国内主要タイトルを独占してきたUTSUNOMIYA BREX。だが、その強さが絶対的であるほど包囲網が厳しくなるのは勝負の世界の常。特に、怖いものなしで立ち向かってくる若いチームからのプレッシャーは厳しく、負けてもおかしくなかったという苦戦を強いられることもしばしばで、昨年11月に大阪で開催された「JAPAN TOUR 2022 FINAL」では決勝で顔を合わせたTSUKUBA ALBORADA(以下ALBORADA)に21‐19という僅差の勝利。さらに、そのALBORADAには今回の日本選手権の予選にあたる東日本エリア大会のリーグ戦で18‐21と敗戦を喫している。

「負けることがニュースになる。そういったところまで自分たちを作り上げてこられたことには自信を持っていますし、誇りに思っていますが、ふがいない試合を見せてしまっては、皆さんに『BREXもそろそろ…』と評価されるのは仕方のないこと」と、リーダーの齊藤洋介は語る。





 そんな状況で迎えた今大会、決勝で相まみえたのは、今回もALBORADAだった。♯13小澤崚(178cm/23歳)、♯19藤沢宏隆(185cm/29歳)、♯30改田拓哉(176cm/22歳)、♯35八幡原礼音(186cm/23歳)という4人のメンバーの平均年齢は24.25歳、平均身長は181.25cmのALBORADA。一方のBREXは、♯5ドゥサン・ポポビッチ(193cm/28歳)、♯10ドゥサン・サマルジッチ(193cm/26歳)、♯齊藤洋介(184cm/37歳)、♯55成瀬新司(188cm/33歳)、その平均年齢は31歳、平均身長は189.5cm。ALBORADAは、経験値の違いや高さのハンデを、若さを武器に凌駕しようとしていた。

昨年暮れ、今回と同じ大森ベルポートで開催された「3x3 U18日本選手権」で解説を務めていた齊藤は、こんなことを話していた。
「世界でも日本国内においても、3x3の試合は10分という試合時間の中で大体30回前後のオフェンスを仕掛け、いかに守り切るか、もしくは効率良く先に21点を取るか(ノックアウト)で勝負が決まっています。毎回の試合で30回攻めることができないペースの遅いチームは、その分、確率高く決めることができなければ、そもそも勝負の土俵には乗れないというのがデータ上からも分かっているのです」

そう語っていた齊藤にとって、ALBORADAは「めちゃくちゃペースが速いチーム」で、さらにやっかいなことは、「1点の確率が超高い」ということだった。「僕らはツーメンゲームで1点を取りにいくのに対して、彼らは1対1で1点を確率よく取っていくんです。JAPAN TOUR決勝では、実は1点を100%の確率で取られていました。本数的には確か8本ですけれど、あとは(要所で)2ポイントが入れば21点取れるというゲーム展開のチーム。だから今回も、とにかく2ポイントを取られないように、それだけを徹底していました」。

だが今回の決勝、残り3分13秒で♯13小澤に2ポイントを決められ、ALBORADAに13‐17とリードされた時点で、「BREXがついにタイトルを奪われる時が来るのか…」という予感が見る者誰にもよぎったはずだ。増して、この時点でのファウルの数はALBORADAの3に対して、BREXは9と、フリースローの1点も与えるわけにはいかない、BREXにとっては正に瀬戸際だった。

しかし、そんな土壇場から♯10サマルジッチがゴール下、2ポイントを立て続けに決めて16‐17と迫り、♯5ポポビッチがゴール下を決めて同点。ファウルを得た♯5ポポビッチがフリースローをきっちり決めて18‐17と逆転に成功すると、さらに♯10サマルジッチのドライブも決まってBREXが19‐17とリードした。ALBORADAも踏ん張りを見せ。♯30改田、♯13小澤のドライブで19‐19と並んだが、1分42秒を残して♯10サマルジッチの放った2ポイントが見事リングに吸い込まれ、ノックアウトで勝負は決した。ALBORADAの2ポイントを警戒していたBREXが、最後は自らの2ポイントでタイトルを守り切った。

「今、本当に厳しい戦いが続いていますし、どこに負けてもおかしくない状況だと思っています。それでも、やっぱり取りたいもの(タイトル)はちゃんと取って、まだまだ強いんだ、トップに居続けるんだという姿勢は見せていきたい」と齊藤は語る。加えて、「勝ち続けることによって、(自分自身に)なあなあになってしまっている部分…例えば試合の入りで少し余裕を見せてしまうとか、そういったところが少なからず出てきてしまっていることに改めて気付かされます。自分たちの首を、この一瞬にかけて狙ってくるチームが幾つもあるということを認識して、ちゃんとやっていかなければ」。
 齊藤のその言葉は、“勝って兜の緒を締めよ”という諺(ことわざ)を思い出させた。強い意志を携えた、まるで野武士のような鋭い眼差しを一層引き締めて、齊藤は、そしてBREXはさらに先=世界を見据えている。





「大会ごとに、何か“懸ける気持ち”とか“思い”というのは、特に自分の中ではないんです」
(齊藤桃子/XD)

試合時間は残り2分45秒。♯3浅羽麻子の2ポイントが決まってTEAM HUSTLEが20‐16とリードした時点で、誰もが「優勝は決まった」と思ったはずだ。しかし、ここからXDは♯23高橋優花のドライブで反撃の狼煙(のろし)を上げると、♯54齊藤桃子が立て続けに2本のドライブを決めて20‐19と猛追。そして、攻防が激しく交錯する中、一瞬フリーとなった隙に渾身の力を込めて放った♯54齊藤の2ポイントが、まるで導かれるようにリングに吸い込まれ、XDが劇的な優勝を飾った。

「“ノーマークになったら打たなきゃ”、本当にただそれだけで打ちました」。試合中の切れ味鋭いプレーとはかけ離れた、おっとりとした口調で齊藤は振り返った。

チームの中でも抜群の得点力を誇り、これまでも数々の勝利を積み重ねてきた齊藤だが、「大会ごとに、何か“懸ける気持ち”とか“思い”というのは、特に自分の中ではないんです。仲間と集まって試合ができることが本当に楽しいし、(メンバーそれぞれが仕事を持ち)試合でしか会えない仲間もいるので、一緒に(プレーを)合わせていく、組み合わせていく時間がすごく楽しい」と語る。まるでドラマのような“ここ一番”の勝負強さを持ちながら、齊藤自身は勝ちに対して意外にも無欲だ。





 それにしても、その“勝負強さ”はいったいどこから生まれるものなのか? そのヒントが、齊藤の言葉の中にあった。「ノーマークで打つときよりも、ディフェンスがいるときの方が集中できるのかもしれません。ノーマークだと周りの景色が見えてしまうけれど、ディフェンスがいればボールだけに集中できる。気が引き締まるから、体幹にスッと力が入るんです。だから、ディフェンスがいてくれるときの方が打ちやすい」。

ディフェンスがいる=困難に直面した状況ほど力を発揮できるというのは、齊藤が持ち合わせたアスリートとしての本能なのかもしれない。だが一方で、その強さは、実は仲間が導き出してくれるものだとも齊藤は語る。「試合前はいつも、キャプテン(♯3猪崎智子)が、『楽しんでやろうね』と声を掛けてくれて、その声にみんな癒されつつ、いざコートに入ったらスイッチが入って顔が変わる(笑)。そういうのを感じるのも楽しいなって思いながらやらせてもらっています」。“無欲”というよりも、“自然体”と表現したほうがいいのかもしれない。♯32藤井美紀を含めたXDの4人のメンバーは、そんなコート内外のONとOFFを、明るく、そして軽やかに駆け抜けた。












取材・文・写真/村山純一(月刊バスケットボール編集部)

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