月刊バスケットボール1月号

【男子日本代表】総力戦で強豪イランに快勝! 煌めきを見せた若手メンバーたち

迷いのないバスケットでリズムをつかんだ日本


 最終スコアは9661。高崎アリーナに集まった3,304人が歓喜の拍手を送る中で、赤いユニフォームをまとったAKATSUKI FIVEの選手たちはそれぞれにハイタッチや抱擁を交わして健闘をたたえ合った。


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【関連記事】日本代表がイランにリベンジ勝利、ホーキンソンがダブルダブル、金近廉は3Pシュート6発と大活躍

 2月23日に行われた「FIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選 Window6」のイラン戦、日本は全Qで相手の得点を上回り、35点差の快勝を収めた。12人全員出場でタイムシェアし、それぞれが見せ場を作りながらの会心の勝利。イランは大黒柱のハメド・ハッダディ(218cm)がケガで欠場していたとはいえ、FIBAランキングでも格上(日本38位、イラン20位)の相手で、昨年8月のWindow4でも6879で敗れた強敵。今回の価値ある白星で、26日に行われるWindow6のバーレーン戦、そして8月に行われる決戦の「FIBAバスケットボールワールドカップ」(フィリピン、インドネシア、日本の共同開催)に向けて、大きな弾みを付けたと言えるだろう。

 

 試合後、指揮を執るトム・ホーバスHCは「出だしから日本のアグレッシブなディフェンスと速いペースを作れたと思います」と振り返った。序盤はイランも日本と同じくトランジションの速い展開を仕掛けてきたが、「我々がファストブレイクで点を取られても、すぐにファストブレイクをやり返したので、イランは長くは続かずに途中からスローダウンした」。

 

 また、たとえブレイクを止められても「イランは全部スイッチして守ってくるので、合宿で準備してきました。今まではスイッチされたときに足が止まっていたけれど、今日の試合は止まらなかった。#24ジョシュ・ホーキンソン(信州)にダブルチームが来ても、パスをさばいて良いチームワークが作れたかなと思います」とホーバスHC。こうして攻防にわたって前半から主導権を握り、その後も「最後までアグレッシブなディフェンスをやり続け、リバウンドも良かった」と相手に反撃の余地を与えなかった。

 

代表デビュー組をはじめベンチメンバーも輝く

 


 特筆すべきは、先にも名前が挙がったホーキンソンとチームハイの20得点を挙げた#16金近廉、2人の代表デビュー組の目覚ましい活躍だ。2月6日に日本国籍を取得したばかりのホーキンソンは2328秒の出場で17得点、11リバウンド、4アシスト。ホーバスHCも彼を高く評価し、「イランはハダディがいなかったけれど、今日は逆にジョシュがハダディのような働きをしてくれました。彼がボールを持つとディフェンスが寄ってきましたが、そこでパスをうまく出してくれた。イランのようなバスケットができたのですごく良かったです」と、相手のお株を奪うような大黒柱としての働きを称賛していた。

 

 一方の金近は、東海大在学中の19歳でチーム最年少。196cmのオールラウンダーは初の大舞台にも物おじせず、思い切りの良さを発揮して6本の3Pシュートを決めてのけた。普段も東海大で得点源の役目を担っているが、代表チームではより外角のシュートに集中できるようで、金近は「自分がボールを持ってプレーを作るというよりも、代表ではガード陣を含めハンドラーの人たちがプレーをしっかり作ってくれるので、僕はオフボールの動きをしっかりやってパスコースを作ればいい。すごく打ちやすい環境です」と言う。若手代表候補によるディベロップメントキャンプで彼のポテンシャルを見出し、A代表に抜てきしたホーバスHCも「19歳の選手があれほどのデビューを飾るとは思わなかった。すごくうれしかったし、楽しかったよ!」と満面の笑みを見せていた。

 

 このホーキンソンと金近をはじめ、100%の確率でシュートを決めてディフェンスでも会場を沸かせた#33河村勇輝(15得点、4アシスト)や、力強いドライブでバスケットカウントも獲得した#45テーブス海(15得点、5アシスト)、オフェンスリバウンドでチームに活力を与えた#34渡邉飛勇(6得点、8リバウンド)ら、若い控え選手の活躍が光った今回の一戦。ホーバスHCは「試合前は経験ある選手と新しく入った選手との間にギャップが生まれないか不安でしたが、全員よくやってくれました。自分の仕事を迷わないことが大事で、この試合は迷わなかった」と言う。

 

 結果的にベンチメンバーだけで全得点の6割以上となる61得点。出てくる選手が代わる代わる活躍する戦いぶりは、ベンチや会場を大いに盛り上げるとともにイランの勢いを削ぐものだった。多彩でにぎやか、それでいて指揮官のシステムの下で秩序立ったバスケットは、まるで万華鏡のような煌めきで人々を魅了したのだ。それぞれに光るものを持った若手選手たちの台頭は、より選手選考の争いを激しいものとし、日本の強化に直結する。アジア地区予選のラストゲームとなる26日のバーレーン戦も、勝利とともに内容にもこだわり、夏のワールドカップにつながる収穫を得たい。

 

取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

写真/山岡邦彦

 



文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

タグ: 月バス 男子日本代表Akatsuki Five

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