金近 廉(東海大)、初A代表参加からの展望
FIBA U19ワールドカップ2021での金近 廉。同大会では全体8位タイの3P成功率を残した(写真/©FIBA.U19WC2021)
「初めてA代表に選ばれました。先週デベロップキャンプですごくいい手応えがあって、合宿が終わったときにトムさん(トム・ホーバスHC)から来週も来てほしいと言われました」。FIBAワールドカップ2023アジア地区予選Window6直前合宿中の2月17日に行われた、男子バスケットボール日本代表のオンライン会見で、金近 廉(東海大)は、自身初のA代表合宿招集の喜びを初々しく話した。「初めてプロのトップ選手とプレーする機会をもらい、今後のキャリアにとって良い経験になると思います」
今年のディベロップメント・キャンプは、学生が3人だけだった昨年と異なり参加者全員が学生だったことで「自分としてやりやすかった」という。「トムさんから指導を受けるのが2回目だったので、ほかのメンバーよりもリラックスした状態でできました」。そうした要素がA代表合宿への継続参加につながったようだ。
ホーバスHCの下で継続してプレーする機会があることは、環境に対する慣れという点で今回のA代表合宿でも助けになる。しかし実績のあるベテランがそろう中、最大のテーマはアジャストだという。「そこをテーマに、このチームのオフェンスのシステムやディフェンスの考え方を自分の中で理解して、うまく遂行することを目標にやっています」と金近は話した。
Window6の舞台に立つことに対しても、「選ばれれば初めてのA代表。アンダーカテゴリーと違った緊張感や責任が伴われてくると思います。残り日数が少ないですけど、しっかり準備して最高のパフォーマンスを披露したいです」と強い意欲を見せている。
「将来は今」の世代、奮起と飛躍に期待
現時点ではワールドカップ本番に関して、ルカ・ドンチッチを擁するスロベニア代表が来日することが公になっている。NBAでもトップレベルのタレントと同じ舞台に立てる可能性があることについての思いを聞いてみた。
「大学1年生の夏にU19のワールドカップ(2021年のラトビア大会)に出場して、初めて世界レベルの自分たちと同年齢の選手たちと戦って、彼らとワールドカップやオリンピックで戦いたいと思うようになりました。実際にカナダ戦でマッチアップした選手が今シーズンNBAドラフトで上位に入って、今インディアナ・ペイサーズでプレーしています。彼らを見るたびに、またあのような舞台に立ちたいなと思っています」
「実際にこうしてA代表に選ばれて、半年後にそういうチャンスがもしかしたら僕にも来るかもしれません。今ここでも、自分と年の離れた方々とプレーしている中で、まだあまり想像がつかないんですけど、もし選ばれてWindow6でイランとバーレーンと試合ができたら、自分の中で目標やイメージが明確になってくると思います。先のことはまだ考える余裕がないのですが、この合宿でまずアピールして、今後の代表活動でのキャリアにつなげていきたいと思います」
金近が言及しているカナダ代表のプレーヤーはベネディクト・マサリンというスモールフォワードだ。2023NBAドラフト1巡目6位でぺイサーズから指名を受け、ルーキーシーズンに平均17.2得点、4.1リバウンド、1.4アシスト、0.6スティール、0.1ブロックのアベレージを残し活躍している(2月17日時点)。ブルックリン・ネッツとの試合で渡邊雄太がマッチアップしていた場面を記憶している人も多いのではないだろうか。
金近自身、FIBA U19ワールドカップ2021ラトビア大会ではシャープなシューティングを武器に7試合で平均7.7得点、1.1リバウンド、1.0アシスト0.6スティール、0.4ブロックのアベレージを残した。チームは参加16チーム中の最下位に終わったが、金近の3P成功率40.0%(25本中10本成功)は大会全体の8位タイに入る好成績。大激戦の末韓国に92-95で敗れた最後の15-16位決定戦では、ファウルアウトしたものの3Pショット8本中5本を決めて17得点を稼いだ。
15-16決定戦での金近。活躍が大いに光った(写真/©FIBA.U19WC2021)
ちなみに、この15-16位決定戦で36得点、12リバウンドを記録して韓国勝利の立役者となった身長203cmのフォワード、ジュンソク・ヨ(Jun-seok YEO)は、2023-24シーズンから八村 塁(ロサンゼルス・レイカーズ)の母校ゴンザガ大に加わることが伝えられている。チーム成績が振るわなかったとはいえ、平均25.6得点で同大会得点王、10.6リバウンドも2位というヨ自身のパフォーマンスはやはり世界の目を引いたのだ。
ゴンザガ大に進む韓国のジュンソク・ヨはU19ワールドカップ2021の得点王だ(写真/©FIBA.U19WC2021)
同大会で王座に就いたアメリカ代表のロスターにはジェイデン・アイビー(デトロイト・ピストンズ)、パトリック・ボールドウィンJr.(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)、ケネディ・チャンドラー、ケネス・ロフトンJr(ともにメンフィス・グリズリーズ)、チェット・ホルムグレン(オクラホマシティ・サンダー)、ジョニー・デイビス(ワシントン・ウィザーズ)とすでにNBAデビューを果たしたタレントがずらりと並んでいた。フランス代表には、今年のNBAドラフト最大の注目株であるビクター・ウェンバヤマの名があった。
世界に目を向け金近と同世代の躍進を目にすると、「将来は今」とも思える様相だ。
金近が出場した2021年のU19ワールドカップには今話題のビクター・ウェンバヤマもフランス代表で出場していた(写真/©FIBA.U19EC2021)
まずはA代表合宿で頭角を現し、アジア地区予選の舞台を踏むこと。そしてその先へ。U19世界8位のシューターはどんな飛躍を見せるだろうか。期待と可能性は無限に膨らんでいく。
取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)