NBAスラムダンク・コンテスト2016「ラビーン&ゴードンが見せた異次元の決勝」
史上初!ダブルダンクオフとなったコンテスト
現地2月17〜19日(日本時間18〜20日)、「NBAオールスター・ウィークエンド」が開催される。オールスター・サタデーで行われるイベントで特にワクワクさせるのがスラムダンク・コンテストだろう。その歴史の中でも特に決勝が盛り上がったのが2016年だ。前年王者のザック・ラビーン(ミネソタ・ティンバーウルブズ)とアーロン・ゴードン(オーランド・マジック)の対決、それは史上最高レベルのものだった。
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前年のコンテスト、ファーストラウンドで100点(50点満点2本)、ファイナルラウンドでは94(45点&49点)を叩き出して優勝を果たしたラビーン。コンテスト前に「タイトルを防衛するチャンスがあることは、とてもエキサイティングだよ。コンテストが待ち遠しいし、ファンのためにも素晴らしいショーを見せたい。楽しみたいね」とファンのためにも良いショーを見せると語っていた。まさにそのとおりのコンテストとなる。
2016年のコンテストにはアンドレ・ドラモンド(デトロイト・ピストンズ)、ウィル・バートン(デンバー・ナゲッツ)も出場していたものの、残念ながら2人には及ばないダンクとなって1回戦で敗退となっている。結果、99得点(50点&49点)を挙げたラビーン、94点(45点&49点)を挙げたゴードンがファイナル・ラウンド進出。2人による戦いは、1988年の“ヒューマン・ハイライト・フィルム”(ドミニク・ウィルキンズ/アトランタ・ホークス)対“ヒズ・エアネス”(マイケル・ジョーダン/シカゴ・ブルズ)に引けを取らないものになる。
ファイナルで先にダンクしたのはゴードンだ。ボールを託されたマジックのマスコット“スタッフ・ザ・マジック・ドラゴン”は、バランススクーターに乗りながら、ペイントエリア内でゆっくりと右回転。タイミングを合わせて走り込んできたゴードンは、踏み切って捻りを入れると右手でボールをキャッチし、360度スピンとウインドミル(腕を風車のように回して決めるダンク)を合わせたダンクを決める。会場は騒然となり、審査員も50点満点とジャッジする。
続いては王者ラビーン。 “俺ならもっとうまくできるよ”という挑戦状か、シュートのようにしてボールをペイントエリアに落とすと走り込んでジャンプ。同様に右手でボールをキャッチし、360度スピンとウインドミルを合わせたダンクを決めた。審査員のシャキール・オニール(元ロサンゼルス・レイカーズ)は両手を上げて信じられないよという仕草。ジャッジはまたも50点満点を出した。
続く決勝2本目、ゴードンはまたも“スタッフ・ザ・マジック・ドラゴン”に頭上でボールを持たせてスタート。両足で踏み切ると、飛び越える瞬間にボールを両脚の裏を通して左手でリバース・ダンクを決めてまたも50点満点。対するラビーンは、バックコートから走り出すとフリースローラインでジャンプしてウインドミル・ダンク! これを見たシャックはニヤケだしてしまう。当然これも50点満点となった。2本の試技を終えて共に100点。勝負を決めるエキストラのダンクオフを行うことになる。
ダンクオフ1本目、ゴードンはチームメイトだったエルフリッド・ペイトンJr.にボールを渡すとバックボードのサイドにボールをぶつけさせる。そのバウンドに合わせてジャンプしたゴードンは、空中でキャッチするとボースハンドのウインドミル・リバースダンクというド迫力のダンクを決めてみせる。文句なし、50点満点だ!
史上初、ダブルのダンクオフで決着!
続いてラビーンの試技へ。49点でも負けとなる王者は、ゴードンと同じくエンドラインを越えたところからスタート。シュートのようにボールを放り投げると、空中でキャッチし股抜きしたうえでボースハンドでのエビ反りリバースダンクを決めてしまう。1994年のコンテストでは、同様の位置からアイザイア・ライダー(ミネソタ・ティンバーウルブズ)が似たような股抜きして決めるイースト・ベイ・ファンク・ダンクで優勝している。だが、ラビーンは空中キャッチしての股抜き、さらによりジャンプ力が必要なボースハンドでのリバースダンクというとんでもないダンクを見せた。これを見て、ゴードンはうなずいてみせる。50点満点が出るとわかったのだ。なんと史上初、ダブルのダンクオフとなった。
ファーストラウンドから入れると5本のダンクを繰り出した両者。アイディアが尽きてもおかしくはない。ゴードンは最初、ゴールの上にあるショットクロックにボールを当てるが、ダンクには行かず。少し考えると、右コーナーから走り出して両足で踏み切り。両手で掴んだボールを一度大きく振りかぶってから股の下に運んでボースハンド・リバースダンクを決めてみせた。会場は大歓声に包まれた。またも50点満点だろうと思われたが、なんと47点に。9点としたトレイシー・マグレディー(元マジック)、ディケンベ・ムトンボ(元デンバー・ナゲッツ)、デニス・スコット(元マジック)にブーイングが飛ぶ。
48点以上を出せば優勝となるラビーンは、最後も圧巻のダンクを見せた。決勝2本目と同様にフリースローラインから踏み切るダンクだったが、今度はウインドミルではない。イースト・ベイ・ファンク・ダンクを見せたのだ。コートサイドで見ていた選手たちが興奮してラビーンにハイタッチをしにいく。今度は審査員そろって10点。50点満点が出てラビーンが連覇を達成した。
「最高のコンテストだったと思う」
優勝したラビーンは語った。
「今までにないようなダンクも見せられたしね。偉大な選手たちのことは言いたくないけど、プロのダンカーが4、5回トライしてやっと決めるようなものを、僕たちは1回で決めていってしまった。クレイジーなコンストだったよ」
“偉大な選手たちのことは言いたくない”とラビーン。“史上最高の選手”論議ではないが、時が異なるものは比べるのは困難な話だし、納得するに足る理由なんて出しようもない。
ただこの年のコンテストを見た人は思ったはず。この戦いはまちがいなく“史上最高レベルだ”と。
※文中の所属チームは当時のもの