月刊バスケットボール5月号

NBA

2023.02.15

NBAスラムダンク・コンテスト2000「復活祭に神はビンス・カーターを遣わした」

史上最強最高の男が見せた5本のスーパーダンク


現地2月17〜19日(日本時間18〜20日)、アメリカ・ユタ州ソルトレイクシティーで「NBAオールスター・ウィークエンド」が行われる。オールスター・サタデーで行われるイベントで特にワクワクさせるのがスラムダンク・コンテストだろう。多くのスーパーダンカーが、見たこともないようなダンクを披露してきた舞台。その歴史の中でも特筆すべきなのが2000年である。それはビンス・カーター(ラプターズ)が救世主として現れたコンテストだった。

【動画】伝説の2000年スラムダンク・コンテストのハイライトを見る

2000年のスラムダンク・コンテストは、試験的な復活という意味合いがある。1997年の開催後、盛り上がりに欠けるとして翌年は中止に。1999年はロックアウトで開催されず。3年ぶりの開催となったのがこの年だった。

その後の存続も決めかねない年に、カーターが出場したのは何かの縁としか思えない。ほかに出場したのは、スティーブ・フランシス(ロケッツ)、カーターのいとこであるトレイシー・マグレディー(ラプターズ)、リッキー・デイビス(ホーネッツ)、ジェリー・スタックハウス(ピストンズ)、ラリー・ヒューズ(セブンティシクサーズ)。だが、いずれもカーター・レベルにあるスラムダンカーではなかった。1本目のダンクを見せた時点で“勝負あり”という状況だった。

カーターの1本目、左サイドから走り込んでミドルポスト付近で踏み切ると、360度スピンを披露する。右手で決めたのに左回転で決めたのだ。独創性、迫力、姿勢、すべてが見事なもので当然50点満点を獲得する。ちなみにこのコンテストでNBAはテレビ用にジャンプ計測器を設置していて、このダンクは36〜37インチ(約91〜94cm)だった。

続く2本も我々が見たこともないものだった。スタートはゴール真裏。ゴール下に進んでいくと真上にジャンプし、体を反転させて右腕で芸術的ウインドミル(風車のように腕を回して決めるダンク)を叩き込む。49点というのはにわかに信じがたい点数だった。
そして3本目、これはコンテスト史上屈指のものとなる。
この年のコンテストでは、1回戦の中で1度は誰かの手を借りるダンクを盛り込む必要があった。カーターはチームメイトのマグレディーとプレイし、左からペイントエリアに走り込んで踏み込り。マグレディーがバウンドさせたボールを空中でつかむと、レッグスルーを入れてダダンクを叩き込んだ。完璧に決まった3本目はまたも50点満点に。カーターはゴール下で点を指差すポーズを決め、観客は総立ち。審査員だったアイザイア・トーマス(当時ニックスヘッドコーチ)はテーブルの上に跳び上がって我を忘れて喜んでいた。のちに「あのダンクを見て、思わず、驚きの声を出してしまった。(机の上に)飛び上がったのは無意識だったんだ(笑)」と語っている。

こうしてカーターはマグレディー、フランシスと共にトップでファイナルラウンドに進出したものの、“ビンサニティー(ビンス+狂気の沙汰の造語)”に対抗できるダンクなんてできるはずもない。ファイナルラウンドは、カーターのショータイムとなった。

1本目、カーターは普通のトマホークダンク(オノを振り下ろすように上から叩き込むダンク)を決めようとする。いや、これが普通ではなかった。まったく異常なダンクだ。なんとボールをリングに叩き込んだあと、腕を曲げたままヒジを支点にリングにぶら下がってみせたのだ。これもまたカーターならではオリジナリティー、美しさを見せたもの。もはや会場すべての人、いや世界で見ていたすべての人が魅了されてしまったはずだ。

最後の1本はジュリアス・アービング、マイケル・ジョーダンでおなじみのレーンアップ(フリースローラインで踏み切ってのダンク)だった。フリースローラインより1歩中に入って踏切となったが、カーターは偉大な先輩たちとはやり方を変えて、両手で決めてみせた(48点)。本人的にはこのダンクに不満だったようだが、これでコンテスト史上最強最高の男の優勝が決まった。

「信じられない、ピンと来ない」
トロフィーを持ちながら、カーターはそう語っていた。だが、世界中のすべての人が思っていたはず。“スラムダンク復活祭に、神はカーターを遣わした”と。



スラムダンク・コンテスト2000結果


プレイヤー 1回戦決勝
ビンス・カーター(ラプターズ) 100 (50/49/50)98 (50+48)
スティーブ・フランシス(ロケッツ) 95 (45/50/32)91 (43+48)
トレイシー・マグレディー(ラプターズ) 99 (45/49/50)77 (45+32)
リッキー・デイビス(ホーネッツ) 88 (40/32/48)
ジェリー・スタックハウス(ピストンズ) 83 (41/36/42)
ラリー・ヒューズ(セブンティシクサーズ) 67 (30/30/37)
※1回戦は得点の高い2本で優劣を決めている



写真/佐々木智明、文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

タグ: NBAオールスター・ゲーム

PICK UP

RELATED