月刊バスケットボール5月号

NBA

2023.02.11

ミケル・ブリッジス(ネッツ)が語った大型トレード当日の心境

「びっくりです。これがビジネスというものだとは思っていますけど、これが人生ですなんですね。コーチ・モンティ(フェニックス・サンズのモンティ・ウィリアムズHC)からはいつも、戦場に送られるわけじゃないから心配するなと言われていましたけど…(I mean it’s crazy, man as you know it’s part of business. But life goes on, you know. Coach Monty has always said that you ain’t get sent off to the war. So, you’ll be alright...)」


日本時間210日(北米時間9日)に正式に確定した4チーム絡みのトレードで、フェニックス・サンズからブルックリン・ネッツにやってきたスモールフォワードのミケル・ブリッジスは、同日ネッツのホームアリーナ、バークレイズ・センターで行われたシカゴ・ブルズとの一戦に姿を見せ、テレビ中継の担当局TNTのインタビューで移籍を知った日の様子を振り返りそう語った。

このトレードは、今回のトレードデッドライン直前の動きの中でも最も衝撃の大きなものではないだろうか。超大物スターのケビン・デュラントをTJ・ウォーレンとともにサンズが獲得。入れ替わりにネッツはブリッジスとキャム・ジョンソンの二人を将来のドラフト指名権(サンズの2023年、2025年、2027年、2029年の1巡目指名権[2028年の1巡目指名権の両チーム間での交換権も含む]と、ミルウォーキー・バックスの2028年、2029年の2巡目指名権)およびインディアナ・ペイサーズのファン・パブロ・バウレットとの交渉権とともに獲得した(バックスはサンズからジェイ・クラウダ―を、ペイサーズはバックスからジョーダン・ウォーラ、サージ・イバカ、ジョージ・ヒルの3人と3つの2巡目指名権および金銭を獲得)。しかもそれが、ネッツのカイリー・アービング(現ダラス・マーベリックス)放出から数日後というタイミングが世間を驚かせた。

ブリッジスはトレードを知ったときの心境についてもフランクに明かしている。実は、心の準備はシーズン開幕前からできていたそうだ。

「去年の夏にKDがサンズに来たいと言い出したときから、そうなったら僕とキャムの二人が出されることになるかもしれないなとは思っていたんです。びっくりですけどこうしてブルックリンにやってきたんだし、早くプレーしたいです」
Kind of had a feeling of such in the summer when KD wanted to go to the Suns, I knew me and Cam will probably the two guys that probably go. But I’m…, it’s crazy, man but, excited to be here in Brooklyn and can’t wait to go out there.

自身がトレードの当事者になった事実はチームメイトからの一報で知り、ツイッターで確認。エージェントからの報告はその後だったという。フェニックスを離れたくないとの思いを明かしていたブリッジスだが、超大物のデュラントを含む取引に理解も示した。

「相手が彼ですからね。わかります。僕が育ってきた中で大好きだったプレーヤーの一人ですから。彼ほど才能に恵まれているプレーヤーが相手なら、この取引もわかります」
It’s just kind of just look at him and yeah, I get it, you know. I get it. I get it, man. One of my favorite players growing up and I know how incredibly talented he is. So, I get it.

「仲良くしているデイミオン・リーがホテルでフェイスタイムしてきて、なんだか驚いているような様子でした。「残念だ。あれやこれやいろいろ残念だ」みたいな内容だったので、「何が残念なの?」と聞き返したら、「見てないのかい? 君はKDとのトレードでブルックリンに行くんだよ!」と知らせてきたんです。それで、ええ…! まじかよとなってツイッターを見て知りました。その数分後にエージェントからも連絡が入るという…。そんな流れでした」
So, my boy Damion Lee, he was in the hotel and FaceTimed me. You could tell he was upset. He was just like “I’m sorry. Like I’m sorry about this and that…” “What are you talking about?” “You ain’t seen that?” “See what?” “You got traded to Brooklyn for KD!” “Oh, man…” and watched the Twitter, saw it. That’s when I tweeted. And then my agent come in like come minutes later. And that’s how I found out.

ネッツはカイリー・アービングとデュラントという二大看板スターをほぼ同時に手放すという大きな決断をしたが、ショーン・マークスGMはこの動きを総体的なチーム再建とは捉えず、ブリッジスやジョンソンを加えた新生ロスターで勝ちに行く姿勢を見せている。ブリッジス自身も、今シーズンが負け戦覚悟の立て直しではないことを聞き、非常に前向きなコメントを残した。

「チームの仲間に飛び込んで一生懸命にプレーするだけです。このチームは活力があります。話題になっているのはディフェンスですけど、オフェンス面でもいいプレーができるメンバーがそろっているので戦うのが楽しみです。楽しく思いっきりバスケをしたいですね」
Just come in, man, play hard. I thought they play with energy. And we get just…, you know obviously defense everybody talk about but feel like we could all play on the offensive end as well. So, I’m just excited, man, with the guys and we’re just going to go out there and have fun and go hoop.

フィラデルフィア生まれで、同じペンシルバニア州の強豪ビラノバ大出身のブリッジスは、2018年に地元のフィラデルフィア・セブンティシクサーズから1巡目10位指名を受けたが、その後一時間も経たないうちにサンズにトレードされたという経験がある(そのため今回のネッツ入りで、そのとき一緒にプレーするのを楽しみにていたベン・シモンズとの「元シクサーズコンビ」が誕生する)。

そんな始まり方をしたNBAでのキャリアにおいて、ブリッジスは一度も試合を休んだことがない。2021年にはNBAファイナルの舞台も踏んでいる。粛々とプレー続け結果を残すことができる、心身とも非常にタフな「鉄人」だ。

新たなチームメイトとなった渡邊雄太よりも2歳年下だが、プロ入りの時期は同期。また、身長203cmと登録されている渡邊よりも小柄な198cmながら、昨シーズンは最優秀ディフェンシブ・プレーヤー賞争いで2位に入ったほど、ウイングでのディフェンス力を高く買われている。

オフェンスでも今シーズンはキャリアハイとなる平均17.2得点。渡邊にとってはローテーションのスポット争いのライバルにもなるが、一緒にサンズからやってきたジョンソン、ダラス・マーベリックスから移籍してきたドリアン・フィニー-スミス、これまでネッツのスターターとして活躍しているロイス・オニール、そして渡邊らを含めたウイングプレーヤーの切磋琢磨が、二大スターを失ったネッツを上位に維持させる原動力となるとみる評論家も多い。


ブルズ戦では渡邊もデマー・デローザンに対する好ディフェンスを見せ、3Pショット5本中4本成功を含む14得点と攻守に力を示し116-105の勝利に大きく貢献している。3試合連続40得点以上を記録したキャム・トーマスの爆発ぶりを見ても、大幅にチーム構成が変わったとはいえ、ネッツは後半戦でも非常に見応えのあるチームになりそうだ。



文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

タグ: 渡邊雄太 ブルックリン・ネッツフェニックス・サンズ

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