月刊バスケットボール6月号

NBA

2023.02.11

「大切なのはハートのサイズなんだ」アイバーソンがMVP、NBAオールスター2001で起きた“奇跡の逆転劇”

イーストを勝利に導いたアイバーソン(写真左)と決勝シュートを決めたマーブリー(写真右)

22年前、オールスターで起きた奇跡の逆転劇

現地2月19日(日本時間20日)、アメリカ・ユタ州ソルトレイクシティーで「NBAオールスター・ゲーム」が行われる。過去71回行われているNBAオールスター・ゲームではいくつもの名シーンが生まれてきている。その中でも語り種となっているのが、イーストが奇跡的な逆転を果たした2001年の「NBAオールスター・ゲーム」である。

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1998年にマイケル・ジョーダンを擁するシカゴ・ブルズが2度目の3連覇を果たしたあと、リーグの戦力は西高東低に傾いていった。今となれば豪華ガード陣がそろうイーストだが、当時のウエストのメンバーを見れば、このオールスターでもウエストが優勢だと思われていた。そして試合がスタート。なんと、ウエストは開始4分で11-0というラッシュをかける。
イーストを指揮するラリー・ブラウンヘッドコーチは、サイズのそろうウエストに対抗すべく、より身長のあるラインナップを選択。そのため、アレン・アイバーソン(シクサーズ)、ステフォン・マーブリー(ネッツ)も前半の多くをベンチで過ごすことになる。

なんとか差を詰めようとするイーストだが、ハーフタイムで61-50、3Q終了時で89-70とウエストはリードを保持する。
「誰かが10点差での負けに持ち込めたら、よくやったほうだろうって言っていたんだ。それで俺は彼らに言い続けた。『ここですべてをこの試合に賭けてみろよ』とね。オレは勝つと思っていた。だから、賭けをしないかって、彼らをからかい続けてみたんだ。誰も賭けをしたがらなかったね(笑)」と試合後に語ったのはアイバーソンだ。

4Q残り9分8秒、マイケル・フィンリー(マーベリックス)がオフェンス・リバウンドからシュートを決めてウエストの95-74とこの試合最大の21点差に。誰もが勝負は決まったと思っていた。
しかし、続くアイバーソンのプレイがイースト選手の魂に火を点ける。残り8分29秒、アイバーソンは左ウイングからドライブ。ゲイリー・ペイトン(スーパーソニックス)、デビッド・ロビンソン(スパーズ)の間に飛び込んで3ポイントプレイを決める。するとディケンべ・ムトンボ(ホークス)のリバウンドからビンス・カーター(ラプターズ)が、次にカーターのスティールからレイ・アレン(バックス)が得点。さらに速攻からジェリー・スタックハウス(ピストンズ)がダンクを決めて4連続得点で83-95とする。追われるウエストはロビンソンのフリースロー、アントニオ・マクダイス(ナゲッツ)のティップイン・ダンクで追加点を奪うが、イーストの勢いは止まらない。

アイバーソンのアシストでスタックハウス、カーターが連続3Pシュートを決めると、アイバーソン自身が続けて3ポイントプレイ。残り4分半で96-100と4点差まで迫る。この間に、ウエストのリック・アデルマンヘッドコーチは、ティム・ダンカン(スパーズ)、ケビン・ガーネット(ティンバーウルブズ)、クリス・ウェバー(キングス)をコートに戻して勝負に出ている。

イーストは残り3分13秒、アイバーソン、トレイシー・マグレディー(マジック)の得点で100-100とついに追いつく。その後、アイバーソンの3Pシュートで103-102と一旦逆転するが、ウエストはガーネット、ウェバー、コービー・ブライアント(レイカーズ)の得点で残り1分で108-105とリードを作った。

シュートを決めて手を叩き、タイムアウトでも真剣な表情でコミュニケーションを取る。もはやオールスター的な雰囲気はなくなっていた。

ゲームのクライマックス、イーストに勝ち星をもたらしたのはマーブリーだった。まず残り54秒、右ウイングから3Pシュートを決めて同点にする。今度はコービーがダンカンのピックを使ってオープンとなり、左コーナーからジャンプシュートを決めて2点リードを奪う。しかし、直後のオフェンス、マーブリーが右からボールを運んでいくと、ジェイソン・キッド(サンズ)との1対1からステップバックして3Pシュート。残り28.4秒、これが見事決まって111-110と1点リードを奪う。

しかし、タイムはまだ残っている。ウエストは残り10.9秒からのインバウンズでキッド→コービーへとボールを渡す。コービーは、左ウイングからトップ・オブ・ザ・キーにドリブルで進むとポンプフェイク。これにマーブリーが見事引っかかったが、真裏にいたムトンボがブロックに跳ぶ。ここでコービーは左ローポストでオープンになっていたダンカンにパス。シュートを放ったが短い。それでもウェバーがボールを拾ってシュートしたが、ボールはリングに弾かれてしまい万事休す。試合終了のブザーがなると、イーストのメンバーはまるで優勝したかのように両手を挙げて走り回り、歓喜した。

ブラウンHCは「うちのプレイヤーが何かを証明したいと思っていることがわかっていたから、ウィークエンドの最初から今夜が楽しい試合になると思っていたよ」と感激の面持ちでコメント。決勝シュートを決めたマーブリーは「今夜の出来事は夢を超えるものだ」と夢描いていたこと以上のことが起きたと喜んだ。

オールスターMVPに輝いたのは、アイバーソンだ。劣勢のチームに火を点けて25得点(内15得点は4Q)を獲得した“ジ・アンサー”はここであの名言を残している。

「『俺たちが勝てないのはサイズのせいだ』とみんなが言っていた。だからオレは言ったんだ。『体のサイズは関係ない。大切なのはハートのサイズなんだ』とね」







*:スターター、MIN:出場時間、FG:フィールドゴール成功数-試投数、3P:3Pシュート成功数-試投数、FT:フリースロー成功数-試投数、OR:オフェンス・リバウンド数、DR:ディフェンス・リバウンド数、TR:合計リバウンド数、AST:アシスト数、STL:スティール数、BLK:ブロック数、TOV:ターンオーバー数、PF:パーソナルファウル数、PTS:得点



写真/佐々木智明、文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

タグ: アレン・アイバーソン NBAオールスター・ゲーム

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