月刊バスケットボール10月号

鳥海連志がMVPでパラ神奈川が優勝。車いすバスケ新時代到来

車いすバスケ新時代到来


 車いすバスケットボールのクラブ日本一決定戦、天皇杯第48回日本車いすバスケットボール選手権大会決勝が121日(土)、東京体育館(東京都渋谷区)で行われた。

 3年半ぶりの開催となった天皇杯決勝はNO EXCUSE(東京ブロック)、パラ神奈川スポーツクラブ(関東ブロック)の顔合わせとなった。NO EXCUSEの香西宏昭 (3.5)、パラ神奈川の鳥海連志(2.5)、古澤拓也(3.0)といった東京2020パラリンピック銀メダリストたちの対決にも注目が集まった。

 両チームは天皇杯出場をかけた東日本第2次予選会決勝でも対戦しており、そのときは69-66NO EXCUSEが勝利している。NO EXCUSEは予選の対戦同様に勝利することで、チームの目標でもある天皇杯初優勝を狙う。及川晋平HCは「チームの立ち上げから20年。これまで何度も頂点に挑戦してきましたが、そのたびに阻まれてきました。(ドイツでプロとしてプレーしてきた)香西も日本でプレーしてくれることを決断し、チームに戻ってきてくれましたので、ことしこそ天皇杯優勝の目標を成し遂げたい」と準決勝後に話した。

 パラ神奈川にとっては、予選のリベンジ、そして1997年以来となる優勝を目指しての戦い。チームのエースでキャプテンの鳥海は「ヒロさん(香西)を自由に動かさないようにしなければ」と日本代表を長年引っ張ってきた相手チームのエースを意識。堀井幹也HCも「我々はサイズに劣るので、スピードとハードなディフェンス、アウトサイドシュートがカギになります。東日本予選では香西、そして森谷(幸生/4.0)、橘(貴啓/4.0)のハイポインターにやられたので、そこをいかに抑えるか。シュートは水物なので、ディフェンスから得点できる形を増やしていきたい」とディフェンスの重要性をチームに徹底してきた。



NO EXCUSEの香西は23得点の活躍も初優勝には届かず

NO EXCUSEの香西は23得点の活躍も初優勝には届かず


 出だし硬さの見えるパラ神奈川はシュートの確率が上がらない。一方NO EXCUSEはエース香西が1Qだけで12得点を稼ぐ活躍で、チームを導いていく。しかし、パラ神奈川のディフェンスがアジャストし、徐々に機能し始めていくと、オフェンスにもリズムが出てきて、前半を24-204点リードで終える。

 後半に入っても、オールコートプレスとハーフコートディフェンスを巧みに織り交ぜながらNO EXCUSEのリズムを断ち切ると、攻めては「前半はダメだったのですが、ヘッドコーチも、周りのメンバー、先輩方もみんなが『打っていけ』と言ってくれた」というシューター丸山弘毅(2.5)のアウトサイドシュートが決まり始める。3Qでリードを2桁に広げられたNO EXCUSEは、香西を中心に巻き返そうとするものの、そのたびに鳥海、古澤らが勝負強さを見せ、流れを奪い返す。3Q最後には鳥海が外した3Pシュートのリバウンドに飛び込んだ古澤がワンタッチで押し込むブザービーターのビッグプレー。最終クォーター終盤にNO EXCUSEも香西、橘らが得点を重ね猛追するも、パラ神奈川はディフェンスで崩れることなく51-44で逃げ切りを果たした。

「相手を40点台に抑え切ったディフェンスの勝利」と堀井HC。一方NO EXCUSEの及川HCは「うちは60点くらい取れるチーム。香西に周りの4人がうまく組み合わさっていくのが理想だが、今日はそれをなかなかやらせてもらえなかった」と振り返る。

 決勝戦で22得点、12リバウンドのパフォーマンスで優勝に導き、大会MVPを獲得した鳥海は「観客が応援してくれる中で、一戦一戦、仲間とともに戦えて優勝できました。宝物を手に入れた」と感激を表した。さらに「連覇を続けていた宮城MAXさんの姿にあこがれていました。これからは自分たちがそうなれるように、勝ち続けられるチームにしてきたい」と将来を見据えた。

 若手スター選手を主力とするパラ神奈川の優勝によって、コロナ禍、東京パラリンピックを経て、世代交代が進んだことを印象付けられる大会となった。


MVPに選出されたパラ神奈川の鳥海

MVPに選出されたパラ神奈川の鳥海



1月21日 試合結果

[5 – 7位決定戦]

LAKE SHIGA BBC 54 – 49 宮城MAX

伊丹スーパーフェニックス 71 – 63 ワールドBBC

 

[3位決定戦]

埼玉ライオンズ 66 – 44 千葉ホークス

 

[決勝]

パラ神奈川SC 51 - 44 NO EXCUSE

 

[最終順位]

優勝パラ神奈川SC

準優勝 NO EXCUSE

3埼玉ライオンズ

4千葉ホークス

 

[オールスター5]

クラス1 川原 凜 (千葉ホークス/1.5)

クラス2 丸山弘毅 (パラ神奈川SC2.5)

クラス3 古澤拓也 (パラ神奈川SC3.0)

クラス4 森谷幸生 (NO EXCUSE 4.0)

MVP 鳥海連志 (パラ神奈川SC2.5)



文・飯田康二/写真・石塚康隆

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