月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2023.01.15

東京ユナイテッドBC、大盛況の有明アリーナメインコートで2連勝 - 1.14・15の週末に13,392人来場

114日・15日に有明アリーナメインコートで開催された東京ユナイテッドBC(以下東京U)対金沢武士団の2連戦は、B3リーグの公式戦としては異例の大盛況となった。


今シーズンからB3リーグに新規参入したばかりの東京Uが、ホームとする有明アリーナでメインコートを稼働させたのは、昨年10月9日・10日のホーム開幕節(さいたまブロンコス戦)以来二度目だったが、二日間の来場者数は計13,392人(初日が5,384人、二日目が8,008人、一日平均6,696.0人)に上った。今回の来場者数はそのときの17,415人(初日が9,295人、二日目が8,120人、一日平均8,707.5人)には及ばないものの、この会場、あるいはアリーナというあらたなカルチャーに秘められたポテンシャルの大きさを感じさせる数字だ。


迫力満点のプレーに会場は大いに沸いた(写真はチームハイの18得点、15リバウンドを記録したアンジェロ・チョル)

東京Uはこの大観衆に、開幕節で達成できなかったメインコートでの勝利(初日が84-69、二日目が82-67で連勝)をプレゼントした。プレーヤーやコーチ陣の経験値と能力からみても、この両日の戦いぶりとスコアで判断しても、チーム力の点では「新規参入」というのはもはやその事実だけでしかない。特に14日の試合で右足首を痛めた金沢のビッグマン、オレクサンドル・アンティボが欠場となった15日は、ほぼ40分間を通じて東京Uが主導権を握り続ける展開だった。

それだけでも地元ブースターは大喜びのはずだが、この両日は「TUBC fes」と銘打って開催しただけに場内を盛り上げるパフォーマンスも盛りだくさんで、幅広い年齢層の来場者がその場を楽しんでいた様子だった。いつもどおりのユナイトダンサーズ(チアダンスチーム)とユナイト(マスコット)はもちろん、地元江東区の砂町小学校の生徒たちで編成した鼓笛隊が登場したり、Tシャツをコート上からスタンド3階席まで打ち上げる「Tシャツバズーカ」など様々な趣向が満載。サブアリーナには子どもたちがミニゴールでシュートを楽しめるスペースがあり、車いすバスケットボールの体験教室も行われていた。


砂町小学校の生徒たちによるパフォーマンスにも温かな拍手が送られていた

一番驚かされたのは、試合終了後に竹内 峻Aコーチがフィアンセでビーチバレープレーヤーの丸山紗季さんにサプライズでプロポーズしたことだ。センターサークルで丸山さんを前にして「つきあっていた9年のうち8年は遠距離でした」と二人の物語を語り始めたとたん、その場は8,008人が見守る「愛のアリーナ」と化し、「愛しています。結婚してください」という求愛の言葉に丸山さんが「よろしくお願いします」と答えたときには、一気に盛大な祝福のステージに変わった。

この演出を知らされていなかったのは丸山さんだけではない(一緒に観戦していたご両親はご存知だったとのこと)。竹内Aコーチのほかには、クラブ内でもこのアイディアを知っていたのは発案した早水将希HCらごく数名だけ。完全極秘で成し遂げられた勝利の後のサプライズは、感動そのものだった。帰路につくブースターにとっては、笑顔で会場を後にする理由をもう一つ手渡されたようなものだっただろう。

この日有明アリーナで目にした出来事のすべてをマーケティング手法の一環と捉えるべきなのかわからない。しかし、バスケットボールの試合というコンテンツを、このときできる範囲のすべてのエンタテインメントと人として共感できる喜びで包んだような、特別な何かだった。「この雰囲気を味わいにまた来たい」「メインコートの東京Uを見たい」「サブアリーナの試合も見に行こうかな」というような気持ちで帰った人は多かったに違いない。

チーム力、クラブ運営手法とも後半戦は新たな挑戦

東京Uはこの日の勝利で通算成績を199敗とし、現在B3リーグ6位とプレーオフ圏内(8チーム出場できる)での位置を固めつつある。ホームでは113敗とさらに強いが、この位置に満足することなくさらに上位を目指している。それだけでなく、有明アリーナという素晴らしい会場を持つだけにホームゲーム運営も勝敗と同じほど注目される要素だ。

15日時点までで、ホームでの14試合における平均入場者数は2,436.4人。ホームとして使用した有明アリーナメインコート、サブコート、有明スポーツセンターの3会場ごとの収容人数に格差がある(有明アリーナメインコートは15,000人、ほかの2会場は最大で500人程度)ため、そのまま素直に見るべき数字ではないかもしれないが、新規参入クラブとして上々の評価をしてよい数字ではないだろうか。ちなみに有明アリーナメインコートでの4試合は平均7,701.8人、それ以外の10試合は平均330.3人というのが公表データから手計算した数字になる。


果敢なドリブルドライブを見せる東 宏輝(右は金沢の山本浩太)。アツいプレーでチームとしても地元の人々の心をつかみたいところに違いない

今シーズン中は、有明アリーナメインコートの稼働はこの日が最後。後半戦では、それ以外のコンパクトな会場でブースターといかにユナイト(「結びつく」の意)していけるだろうか。新規参入シーズンでのプレーオフ進出、B2昇格、B3制覇に向けた挑戦とともに、スポーツビジネスの側面からもユニークな見どころを提供する事例となりそうだ。



取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

タグ: 東京ユナイテッドバスケットボールクラブ 金沢武士団B3リーグ有明アリーナ東京ユナイテッドBC

PICK UP

RELATED