車いすバスケ赤石竜我、天皇杯に向けて意気込み語る「目標の“日本一”を達成できるようにプレーしたい」
12月31日、川崎ブレイブサンダースvs.京都ハンナリーズの試合前に川崎のホーム・とどろきアリーナにて車いすバスケのエキシビションマッチ(前後半各10分)が行われた。
今回のエキシビションマッチは、クラブが2020-21シーズンより推進しているSDGsプロジェクト「&ONE」の一環である「KAWASAKI LIGHT UP STAGE(カワサキライトアップステージ)」の今シーズン第3弾。この取り組みはBリーグ公式戦前のショータイムで、一芸に秀でた川崎ゆかりの人物にパフォーマンスを披露する場を提供し、川崎をより住んで幸せな街にすることに寄与することを目的に実施している。
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対戦したのは、スポーツを通じて川崎を盛り上げる活動を行っている車いすバスケットボールクラブ「川崎WSC」と、埼玉ライオンズをはじめとした強豪クラブに所属する選手たちで構成された「川崎フレンズ」。試合は終始接戦となったが、35-32の僅差で川崎WSCが勝利して熱戦の幕が閉じられた。
そこで、試合後に川崎フレンズの一員としてプレーした赤石竜我にインタビュー。赤石は、東京2020パラリンピックで銀メダルを、さらに2022年の「U23世界選手権」で金メダルを獲得した男子日本代表メンバーの一人だ。現在は、埼玉ライオンズのキャプテンとして、1月20日、21日に東京体育館で行われる「天皇杯 第48回日本車いすバスケットボール選手権大会」の優勝を目指している。
「天皇杯 第48 回日本車いすバスケットボール選手権大会」公式サイトはこちら。
白のユニフォームが川崎フレンズ、赤のユニフォームが川崎WSC
車いすバスケとBリーグで手と手を取り合って…
――Bリーグの公式戦前に、車いすバスケを披露した感想からお聞かせください。
大晦日の大事な試合にエキシビションマッチとはいえ、試合を盛り上げるためのイベントとしてお呼びしていただきすごくうれしいです。車いすバスケとBリーグは競技として共通しているので、手と手を取り合ってお互いに盛り上げられるような、そんな関係性になれたらいいなと思いますし、こういったインベントがもっともっと増えていったらうれしいです。
――対戦相手の川崎WBCは一つのクラブで、赤石選手の川崎フレンズはいろいろなチームに所属している選手たちによるチームでした。普段一緒にやっていない選手たちとのチームプレーはいかがでしたか?
エキシビションマッチですから、勝ち負けにこだわったりせず、ちょっとゆったりとした感じで、楽しみながらバスケットボールをさせていただきました。
「車いすバスケだからこその戦術・戦略がある」
――Bリーグのファンにとって車いすバスケを間近で見ることはなかなかありません。実際に競技をしている赤石選手にとって、車いすバスケの魅力は何ですか?
試合を見てくださった方はちょっと分かったと思うんですけど、やっぱり車いすバスケならではのコンタクトの激しさや、車いすバスケだからこその戦術・戦略というのもあります。ただ、それは車いすバスケを見続けて詳しくなることによってそういったところにも気づくことがあり、気づくことができればもっともっと車いすバスケの魅力や面白さを知ることができるので、そういったところが魅力かなと思います。
――ところで、赤石選手は何歳から競技を始めたのですか?
中学1年生の時です。中学生の時に仲の良かった友達がバスケ部に入っていて、3つ上の兄が中学・高校とバスケ部だったこともあり、周りの人がバスケットボールに関わりを持っていたことがきっかけです。
――赤石選手の得意なプレーは何でしょうか?
よく私はディフェンス力をすごく評価されているので、ディフェンスですね。
――東京パラリンピックで銀メダルを取られて、気持ちの変化はありましたか?
東京パラリンピックで銀メダルを取って車いすバスケの認知度は間違いなく上がりましたし、僕個人のことも多くの方に知っていただいて応援してくださる方が大きく増えました。そういった応援してくださる方々の気持ちに応えたいと思っていますし、少しでも結果で恩返しできるような、そんな選手になっていきたいと常々思うようになりました。
天皇杯はキャプテンとして挑戦
――今は天皇杯に向かって練習を激しくやっている時期だと思いますが…。
天皇杯は(取材時から)3週間後にあるので年末年始もゆっくりはしていられないですし、チームとしても本当に切羽詰まった状況です。今シーズンからキャプテンになったので、緊張感を持って気持ちを高めて大会に臨めるような、そういったチームビルディングをしていきたいと思っています。
――埼玉ライオンズ(2019年/第47回天皇杯準優勝)はこれまでのチームから新しくなったとお聞きしていますが、どのようにチームは変わったのですか?
単純に人が入れ替わったのがすごく大きいことです。東京パラリンピック後に、これまで埼玉ライオンズの主力を張っていた選手たちが引退などで抜けて、その代わりに5月、6月に新しく入ったプレーヤーたちがたくさんいます。まず選手・スタッフが大きく入れ替わったことで、チームが生まれ変わりました。チームの体制も替わり、私自身も今シーズン(5月)からキャプテンを任されました。もちろんそれによって意識も変わりましたし、今までチームの中心選手だった選手たちが抜けて、弱くなったと言われないようにしたいです。「やっぱり埼玉ライオンズは強い」「全国トップクラスの強豪チームだ」って胸を張って言えるような、そういった意識を持てるようにやっています。
――バスケそのもののスタイルは変わりましたか?
もちろん変わりましたね。今までは日本のトップクラスの選手たち、強化指定選手がチームに4、5人いたようなチームでしたから、個の力が高かったので、その力で打開できた部分もありました。しかし、今はそういう状況ではないのでチームワークをすごく大事にしています。ですから、本当によく話すチームだと言われるんですけど、コミュニケーションを取って連係を密にする。そういうところのすり合わせをこの半年間やってきました。
――キャプテンとしてもその辺りをいつも心にとどめて、選手をまとめてきたのですか?
そうですね。私がチームメイトにああしようこうしようと指示をするのではなく、みんなはどう思っているのか、どう感じているのか、どうしたいのかといった選手たちの声を引き出すことを意識して取り組んできました。
――天皇杯は宮城MAXが11連覇中で次は12連覇に挑戦します。しかし、そこを破るチームは出てくるのか注目ですね。
宮城MAXだけじゃなくて、他のチームも完成度、チーム力を高めているので、どこが勝っても、どこが優勝してもおかしくないような時代になってきたと感じています。埼玉ライオンズも一戦一戦、まずは目の前の相手にだけ集中したいと思います。1回戦は伊丹スーパーフェニックス(西日本2次予選1位)なので、まず伊丹SPにどう戦って、どう勝つかに全力を注ぐやり方しかないと思っています。先のことばかり見据えていても仕方がないですから、まずは目の前の相手にチーム全員が全力でぶつかりにいく。それを3回続けるだけだと思っています。
――1回戦で伊丹SPに勝てばその後は鳥海連志選手がキャプテンとなったパラ神奈川スポークラブか、西日本2次予選2位のワールドバスケットボールクラブですね。
どっちが上がってくるか分からないですけど、どっちが上がってきても、僕らは僕らのバスケットボールをやって勝ちたいと思っています。
――では最後に天皇杯に向かっての意気込みをお願いします。
埼玉ライオンズは先ほども言ったように本当に新しく生まれ変わったチームです。主力選手が抜けて、周りからの評価はすごく下がってしまった部分はあると思います。でも、埼玉ライオンズがそれで弱くなったと言われないような結果を出すために、チームとして、目標の“日本一”を達成できるようにプレーしたいと思います。
赤石 竜我
あかいし・りゅうが◎2000年9月11日生/ガード/日体大卒/埼玉ライオンズ所属/埼玉県出身/東京2020パラリンピックではチーム最年少、現役大学生として出場し、強固なディフェンス力とチームメイトを鼓舞するプレーで銀メダル獲得に貢献した。さらに2022年9月にタイ・プーケットで行われた「2021 IWBF 男子U23世界選手権」では金メダルを獲得。これからの車いすバスケ界を背負うプレーヤーの一人だ。
取材・文/飯塚友子
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