月刊バスケットボール7月号

Bリーグ

2023.01.06

ライアン・ステファン(横浜エクセレンス) - ある万能ビッグマンのユニークな成長の軌跡

今シーズンから横浜エクセレンスに加わることになった身長208cmのセンター、ライアン・ステファンは、ひょろ長いタイプの少年から平均的な体格に近い若者へ、そして超ビッグな大人へというユニークな身体的成長過程をたどった。そして相当程度、この成長過程がステファンの人生全体を規定する要素となっている。



ライアン・ステファン(横浜エクセレンス#13, C, 208cm/113kg)

特にバスケットボールにおけるプレースタイルは、この成長過程の影響を受けた。サイズを生かしたペイントエリア近辺のフィジカルなプレーは大きな武器だが、ステファンにはほかにも、プロ入り以来一度も30%を割ったことがない3P成功率が示す通り、ロングレンジ・シューティングのスキルが備わっている。このバランスがステファンの価値を高める持ち味だ。

12歳の頃、ステファンの身長はすでに170cmを越えていたという。これはアメリカでもそこそこ大きな方。バスケットボールをしていれば、その年齢の子どもたちは身長によらず多様なポジションを経験するものだが、この年齢でこの身長ならば、ゴール近辺で優位な機会が多くなることが想像できる。ステファンはこの頃、センターをプレーした。

ところがその後約3年間、ステファンはほぼ同じ身長のまま過ごす。すると周囲の子どもたちの成長がステファンの成長を追い越し、いつの間にかステファンは小柄な方のグループの一人となっていた。それに伴いポジション的にもアウトサイドで活躍するウイングに移っていく。

この経過が影響して、ステファンは15歳の頃までにシューティングに力を入れるようになった。それが現在の広いレンジの土台だ。しかし16歳になって以降身長が再び急激に伸び始め、現在の208cmに到達するまでの時期は非常にアンバランスに。長身ではあったものの線が細かったステファンは、一度は身につけたはずのハンドリングやシューティングの感覚を急激な身体的成長とともに失ってしまう。

にもかかわらず、ステファンはこの時期にそれまでに築いた土台をさらに揺るがぬものにする。その助けとなったのは、当時のステファンを見守ったコーチの一人からの激励だった。「AAUのコーチが『君はウチのベストプレーヤーだ。思い切ってやってくればいい』と声をかけてくれました」

それだけではなく、ステファンは試合や練習で様々なことを試す機会を与えられていたという。「もっとシュートを狙え、ドリブルしてこい、タッチダウンパスをやってみろと、何でもやらせてくれました。だから僕もあの3-4ヵ月間は『よし、俺が最高のプレーヤーだ、やってやれ!』と自分に言い聞かせながらプレーしました。本当にありがたいことです。あのときのコーチとは今でも親しくしています。僕の人生を変えてくれた人物の一人ですから。彼は、僕も本当にすごいプレーヤーになれるんだと信じさせてくれたんです」

例えば当時、「もうハンドリングもシューティングも難しそうだね。そうしたら、君はデカいからペイントで体を張る方向に専念したほうがいいんじゃないか。その方が勝利につながるかもしれないぞ」というような助言をされていたらどうだっただろう? もしかしたら、それはそれで、別のタイプのプレーヤーに発展する可能性があったかもしれない。しかし現在のシューティングレンジは失われていた公算が強いのではないだろうか。それが正解か、不正解かは簡単に判断できるものではないが、指導者の一言が若者の人生を大きく左右することを、ステファンのエピソードは感じさせる。

当時のコーチの助言はステファンのフレキシブルな持ち味を発展させることにつながったと言えそうだ。一筋縄ではいかない特異な成長期を、こんな激励と状況に見合った指導の下で乗り切ったステファンは、その後NCAAディビジョン2のコロラド・メサ大に進み、4年生のときにディビジョン2全体の年間最優秀選手賞に輝く。スキルの土台は完全に固まり、その頃にはストレッチビッグとして自らのアイデンティティーを確立していた。

2016年の卒業後、プロキャリアは横浜エクセレンスの前身である東京エクセレンスで始まった。以降7年目となる今シーズンまで、日本一筋のプロキャリアだ。



過去6シーズンは東京エクセレンスでの3シーズン(2016-1718-1919-20)のほか、群馬クレインサンダーズ(2017-18)、愛媛オレンジバイキングス(2020-21)、ベルテックス静岡(2021-22)でそれぞれ1シーズンずつのキャリア。通算でのアベレージは平均18.6得点、フィールドゴール成功率53.2%3P成功率33.6%11.1リバウンド、2.4アシストなどハイレベルだが、ホームタウンが横浜に移ったエクセレンスでの今シーズンは、2022年内の日程を終えた時点で平均18.9得点、フィールドゴール成功率57.8%3P成功率41.6%11.3リバウンド、3.3アシストと、過去のアベレージ以上の数字をたたき出している。

日本については、これまでに所属したクラブのそれぞれのホームタウンに独特な“マイクロカルチャー”からいろいろと学んでいると話す。「大好物はココイチ(カレーハウスCoCo壱番屋)のささみカツカレー」とのことで、一人でも出かけて、好みのトッピングを盛り付けて楽しむことがあるそうだ。


横浜エクセレンスの2023年は、16日(土)・7日(日)にホームの横浜武道館で行われる湘南ユナイテッドBCとの2連戦で始まる。ステファンの新年初戦はどんなものか。日本の文化を愛する万能ビッグマンの成長の軌跡にも思いを馳せながら、その活躍を楽しんでみてはどうだろう。



取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

タグ: 横浜エクセレンス

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