月刊バスケットボール5月号

車いすバスケ「埼玉ライオンズ」とバイオレーラ<チームの絆を深めて目指す“日本一”> [前編]

「バイオレーラ」と「埼玉ライオンズ」

両者が持つ共通項とは!?

 

 “天皇杯で悲願の日本一を”。埼玉県を拠点に活動する車いすバスケットボールチーム「埼玉ライオンズ」が目指すのは、クラブチームの頂点の座である。3年前に行われた前回大会(過去2年は新型コロナウイルスの影響で中止)では、決勝進出を果たしたものの準優勝に。今度こそ日本一を、それがチーム全員の想いだ。


 その選手たちがまとうのは、オフィシャルトップサプライヤーとなっている「VAYoreLA(バイオレーラ)」のウェア。両者の関係がスタートしたのは、2016年リオ・パラリンピック後から。今回、取材をしていくうえで感じたのは、バイオレーラとライオンズ、両者には共通するものがあるということ。バイオレーラには、オフィシャルサイトにも記しているとおり、“ウェア視点から日本のバスケットボール競技に携わる皆様に貢献したい。「<チームの絆>が更に深まる」 そんな商品を提供致したい”という想いがある。そしてライオンズの特徴と言えるのが他チームに勝ると自負する“チームの絆”なのだ。


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ライオンズを率いる森田俊光氏は「選手たちは、コートを離れても結びつきが強い。そういったチームワークこそが一番の強みだと思っています。その中で“日本一になりたい”という目標を共有し、競争し合っている。だからこそ、まとまりがあるこういうチームで日本一になりたいんですよ」とチームの特徴について語っている。


 

 1978年創部のライオンズと森田氏の出会いは1998年ごろだったという。前年に交通事故に遭って車いす生活となっていた森田氏は、リハビリ施設の体育館でライオンズと出会う。「練習を見た時に、これはすごいと思いましたね(笑)」と森田氏。自分と同じくらいの障碍(がい)を持つ人たちが、車いすに乗って“すごい”プレーをしている。すぐに「自分にもできるのかもしれない」と思い、誘われたこともあって競技を始めることになる。 

 小学4年生から大学まで剣道一筋、球技も団体スポーツも初めて。だからこそ車いすバスケは刺激的で、「やればやるほど吸収できる」「できなかったことが一つずつできるようになる」、何もかもがおもしろいと感じたという。また貴重だったのが、居場所だった。「まだバリアフリーも進んでいない中、外に出るのは簡単ではありませんでした。ところが、練習に行けば同じく障碍がある同年代の仲間たちがいる。それが心地よかったですし、いろいろな情報を得る場所でもありました」。

 

車いすバスケの魅力に取り憑かれ、約20年、プレーヤーとして活躍するとライオンズの監督に就任。今度は、スタッフとして日本一を目指すことになった。

 

 



ルールはほぼ同じ、クラス分けが

競技性をより高いものにしている

 

 “車いすバスケをよく知らない”という人も少なくないと思うが、基本的には健常者のバスケットボールとルールと多くは変わらない。10分間×4ピリオドで行い、同点の場合は決着が付くまで5分間の延長を行う。3秒、5秒、8秒、24秒のバイオレーションやパーソナルファウルといったルールも同じだ。トラベリングは、ボールを保持して車いすを3回連続でプッシュしたらコールされる。大きく違うのは、ダブルドリブルがないくらいと言っても良い。

 

そして、このスポーツの競技性をより高いものにしているのが、選手のクラス分け。脊髄損傷や下肢の切断など、障碍の状態によって最小1.0点(障碍が重い選手)から最大4.5点(障碍が軽い選手)までクラス分けされている。コート上に出る5人の合計が14点以内という制限があるため、障碍が軽い選手ばかり出すということができない。逆に障碍が重い1.0点の選手でもピックやスクリーンで大きく貢献することもできる。どのラインナップをいつ出すのか? 選手の頑張りはもちろん、ベンチワークという部分も見応えある部分なのだ。

 

そして車いすバスケで重要なことの一つとして、森田監督が教えてくれたのが「車いすに乗ってのバランス」である。両手で車輪を漕ぐ車いすではあるが、安定感を生むためには体幹が重要なのだ。障碍で腹筋・背筋が使えない場合、車いすを安定させることが難しくなる。そのため、点数が低い選手の場合、重心を下げて安定させるために車いすの座面が低くなっている(最大10cmの高低差があるという)。

 

天皇杯で「初の日本一」を

練習にもより熱が入る

 

ライオンズは通常、週3〜5回練習を行っている。取材日は、チェアワークのダッシュ&ストップからスタート。選手によっては目標タイムを決め、選手個々がとにかく自分を追い込む。その後、ボールを持っての練習に入り、3メン、ボールなし、ありでのスクリメージといった練習をこなしていく。

そのスピード感、タイヤのスキール音や車いす同士がぶつかる音、車輪が浮くほどの激しいリバウンド争い、美しい軌道の3Pシュート。生で間近で見る車いすバスケは、その迫力に圧倒されるものだ。

 






 驚くのは男子選手の中で女子選手も普通にプレーをしていること。年始に行われる天皇杯は女子選手も出場可能であり、チームの紅一点で東京パラリンピックでも活躍した財満いずみも早い展開の中でボールを回し、先回りしてスクリーンを掛けてとプレーする。男子選手ももちろん手加減はせず。車いす同士が激しくぶつかるシーンもあるが、当然のごとくすぐに次のプレーへと切り替えていく。日本一に向けて妥協はしない。“目標を共有し、競争し合っている”という森田監督の言葉どおりの姿がそこにあった。





 

2022年1月20日〜21日に、東京・渋谷の東京体育館で行われる「天皇杯 第48回日本車いすバスケットボール選手権大会」には前回大会王者の宮城MAX、東西2次予選を勝ち上がった6チーム、第32回日本選抜車椅子バスケットボール選手権大会優勝チーム(12月17・18日に群馬・高崎アリーナで開催)と8チームが参加。東日本3位の埼玉ライオンズは1回戦(1月20日14時開始予定)で伊丹スーパーフェニックス(西日本1位)と対戦し、勝利したら準決勝に駒を進めることになる。

 

「過去4度準優勝になっていますが、まだ優勝は果たせていません。厳しい日程となりますが、なんとか初優勝したいと思います」と力強く語ってくれた森田監督。1回戦が行われる20日は、チケットなしで観戦可能。ライブでなければ伝わらない車いすバスケの迫力を感じるべく、行かれる方は足を運んでみてほしい。


日本一に加えて、森田氏が

目指す「2つの目標」

 

森田監督には天皇杯での初優勝のほかにも目標がある。それが2024年パリ・パラリンピックで代表選手を2人輩出すること、そして車いすバスケの未来のためにも将来の選手を育成することだ。

 

リオ・パラリンピック、昨年の東京パラリンピック(現所属でチームの要、赤石竜我も最年少としてプレー)と2人ずつ代表チームに輩出しているが、「パリ大会でもなんとか2人、代表チームに送り出したいんです」と目標を語ってくれた。また、シニアチームを見る一方で、キッズチームを立ち上げ(同じバイオレーラのウェアを着用している)、将来の“ライオン”を育てるべく指導を行っているのだ。




 もっと車いすバスケ自体を盛り上げていきたい、そんな広い視野で競技に携わっている森田監督。果たして、埼玉ライオンズは<チームの絆>を武器にして、バイオレーラのウエアと共に頂点に立つことはできるか。3年ぶりに開催される天皇杯での戦いに注目である。

<後編ではライオンズの選手インタビューをお届けします>


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車椅子バスケットボールチーム【埼玉ライオンズ】 



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