月刊バスケットボール5月号

【ウインターカップ2022】介川アンソニー翔、「変化」と「成長」の先に待っていた最高の景色

プレースタイルを変え、スコアラーから真のエースに

「SoftBank ウインターカップ2022(令和4年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会)」男子決勝を勝利(対福岡第一/88-71)で終え、開志国際(新潟[1])の#7介川アンソニー翔は笑顔だった。


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「ウインターカップ2022」男子トーナメント表を紹介

今から約1年半前にアメリカから帰国して開志国際に編入するなり、『とんでもない選手が開志国際入ったらしい』と大きな期待を寄せられ、本人も日本一の選手になるべく高校バスケでセンセーションを巻き起こす予定だった。しかし、インターハイでは3回戦で中部大第一に、ウインターカップでは1回戦で福岡大附大濠と後に優勝を飾るチームに力負けし、ほろ苦い思い出と共にシーズンを終えることとなった。

 

「最初は、日本のバスケットはもっとスピードで戦っていると思っていたのですが、実際にやってみるとアメリカに似たバスケットをするチームもあったり、いろいろなやり方のチームがありました。開志国際の選手たちは日本でのトップレベルにうまい選手たちだと思いますが、それと同じかそれ以上にうまい選手もいます。日本の学校にもうまい選手はたくさんいることを、この 1 年で感じました」。昨年のウインターカップで大濠に敗れた後、介川はそう語っている。

 

当時からの日々について「去年は本当にもう全部負けていて、注目されていたのに結果を残せずに本当に申し訳なくて…。そこから必死で、命がけで頑張ってきました」と介川。油断があったわけではないが、アメリカでも有望な若手として注目されてきただけに、もっと戦えるであろうと本人も思っていたはず。まさに理想と現実のギャップに面食らう結果だったに違いない。

 

そのやり切れない経験を経て今年は肉体改造に励み、昨年まではコンタクトを避けてアウトサイドを主戦場にしていたプレースタイルを機動力と身体能力は残しつつも、ハーフコートゲームではぶつかり合いをいとわない純パワーフォワードのような役回りにガラッと変えた。さらに周囲とも積極的にコミュニケーションを取るようになり、スコアラーから真のエースへと成長を遂げたのだ。

 

そんな介川の成長を間近で見てきた津野祐樹アシスタントコーチは「体重も15kgぐらい増やしたり、あとは周りの選手に対してのコミュニケーションが最上級生になってすごく取れるようになったという印象が強いです。プレーもそうですし、私生活でも本当に大人になったなというか。それがこの1年間の大きな成長だと思います」と介川の変化を口にする。

 

それでも万全の準備をして臨んだインターハイは試合時間残り5秒で大逆転負け。まだ足りなかった、もっと変わらなければいけない──。その負けが介川をさらに成長させた。

 

「本当に優勝したいなら、そういう夢があるなら本当に自分にその気持ちがないとできない」(介川)と失意の敗北を機にさらに自主練の量を増やし、ディフェンスやリバウンド、ルーズボールなどの泥臭い仕事や勝負どころのメンタルの持ち方に夏以上に力を込めて4か月間を過ごしてきた。

 

実際、福岡第一との決勝戦でも前半は相手の激しいディフェンスを受けて思うようなプレーができなかったが、司令塔の#10澤田竜馬が「アンソニーさんが今日は本当に我慢してくれて、相手のディフェンスがきつかったんですけど、最後の最後まで我慢して攻めるときに思い切り攻めてくれた」と振り返るように、後半に爆発。鍛え上げたフィジカルで徹底的にインサイドを攻め続け、終わってみれば30得点(後半だけで22得点)。フリースローに関しては福岡第一のチーム全体(7本)を上回る12本を獲得しており、いかに介川が積極的にペイントを攻めたかが分かる。

 

人は成長できるし、変わることができる。介川の1年はそれを証明するようなものだった。

 

彼は昨年のウインターカップでこう言い残して体育館を後にしている。「来年は絶対に日本一を取ります」。それから1年後、彼は満面の笑みでこう口にした。「本当に最高の気分です」。変化と成長の先に最高の景色が待っていた。



『ウインターカップ2022』特設ページ(日程・出場校&選手名鑑・トーナメント表)

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写真/©︎JBA、取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

タグ: 月バス ウインターカップ開志国際ウインターカップ2022

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