月刊バスケットボール5月号

【ウインターカップ2022】開志国際の強さを支える武藤俊太朗「チームが苦しいときが自分の出番」

武藤の存在が開志国際の真の強さ

「開志国際はアンソニー中心のチームなので、最後にエースが決めてくれて良かったです」

「SoftBank ウインターカップ2022(令和4年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会)」男子準決勝で藤枝明誠(静岡)との大激戦を制した開志国際(新潟[1])の#5武藤俊太朗は、最後のプレーをそう振り返った。

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序盤から藤枝明誠のアップテンポなスタイルとアウトサイドの精度の高さに手を焼いた開志国際は前半を終えて5点のビハインド(30-35)。流れをつかみかけたかと思えば相手に決め返され、この点差は単純な数字以上の重みがあるものだった。

しかし、後半に入ると相手のファウルトラブルにも助けられて3Q終盤に逆転。4Qはクロスゲームがつ続いたが、最後はセットプレーから残り5秒で#7介川アンソニー翔がレイアップをねじ込んで薄氷を履む勝利を挙げた(78-76)。冒頭の武藤の言葉にもあるように、この試合を決めたのは結果的にエースの介川だった。

ただ、苦しい試合展開でチームが踏ん張れたのは武藤の活躍によるところが大きい。いや、間違いなく彼の活躍によるところだった。先にこの試合の彼のスタッツを並べると、40分間フル出場でチーム最多の23得点。さらに8本のオフェンスリバウンドを含む合計21リバウンドをもぎ取っている。

特に4Qの重苦しい時間帯には味方のショットミスを全て(と言っても過言ではないほどに)武藤がフォローし、ディフェンスやトランジション、相手にとってダメージの大きな3Pシュートなどあらゆるの面でチームを支え続けた。



武藤は自身の役割に関して以下のように述べている。

「点を取りつつも泥臭い部分でチームをサポートしていくのが自分の仕事。チームが苦しいときが自分の出番だと思ってるので、やりすぎずにアンソニーが点を取れなくなったら自分が点を取りにいくような良いサイクルでやれています」

その言葉のとおり、苦しいときにチームを救ったのが武藤だったのである。

そんな武藤は自身もU17ワールドカップのメンバーとして日の丸を背負うほどの超逸材。そんな選手が介川をエースと認め、自身は目立たない役割も率先してこなす裏方に徹する。主役になれるポテンシャルを秘めた選手がそれを受け入れるのは並大抵の覚悟ではないはずだ。

武藤は言う。「アンソニーが来てすぐにエースになって…そのときに自分がエースになるのはちょっと厳しいのかなとか思ったりもしたんですけど(笑)、違う活躍の仕方がバスケットにはいっぱいあります。チームをサポートしようと思って今年はずっとやってきました」

富樫英樹コーチにとっても武藤は代えの効かない唯一無二の存在だ。「裏方に徹する姿勢は本当に素晴らしい。ゴミ拾い(味方のミスをカバー)をしたり、泥臭いところをしっかりとやってくれるので大車輪の働きです」と武藤への賞賛を惜しまない。

武藤の価値を高く評価しているのはチームメイトや富樫コーチだけではない。インターハイ準決勝で開志国際と戦った中部大第一の常田健コーチも「武藤をああいう使い方で試合に出せることが開志国際の本当の強さ」と言い切る。

スポットライトが全て介川に向けられても構わない。たとえ光に照らされなくてもコツコツと自分の仕事をこなしていれば、目指す場所に辿り着ける。彼はそう感じているのかもしれない。武藤が開志国際を進学先に選んだのは全国制覇をするためだ。自分が目立つためではない。中学生の頃にインターハイを制した地元の強豪の姿を見て、自分もと思い開志国際の門をたたいた。

「1年生の頃からあの子だけをずっとメンバー入れているんです。2年前にはウインターカップ3回戦の辞退も経験して、去年は1回戦負けも経験して…。あの子が一番思いが強いと思います」と富樫コーチ。

武藤も「自分たちがコロナウイルスの影響で棄権を経験した最後の学年なので、そのときの先輩たちの分も背負ってみんなに頑張ろうというのは3年生どうしで話しています」「明日は自信を持って試合に臨みたい」と静かに闘志を燃やす。

明日の相手は福岡第一。インターハイでは彼らの前に試合時間残り5秒で逆転を許し、優勝は手のひらからこぼれ落ちてしまった。武藤にとっては正真正銘、高校最後の試合であり次はない。明日の試合では武藤の働きが悲願達成、そして夏のリベンジへのカギとなる。



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取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

タグ: ウインターカップ 高校バスケウインターカップ2022

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