月刊バスケットボール7月号

【ウインターカップ2022】東海大付諏訪・石口直、命をかけて本気で過ごした3年間

無名からはい上がり、東海大付諏訪のリーダーに

引退。

どんな結果であれ、高校生にとってはなかなか受け入れられるものではない。3年間努力したからこそ、仲間や監督との濃い日々があったからこそ、どこかに少なからず寂しさがある。負けて終わるとなれば、あるいはそこに後悔もあるかもしれない。

ただ、東海大付諏訪(長野)の#5石口直は違った。


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「SoftBank ウインターカップ2022(令和4年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会)」男子準々決勝で開志国際(新潟[1])と対戦した諏訪は、序盤こそ良いリズムで得点を重ねたが、1Q中盤以降は相手の流れにのまれ、ゾーンディフェンス攻略の糸口をつかめないまま57-91で大敗を喫した。

そんなショッキングな敗戦の直後にもかかわらず、石口は一つの迷いもなくこう言い切る。

「自分は過去に死ぬ気でやってきて落ち度はないので、ここで泣くことはないです。やり切ったというか、個人的には全部やってきたので」

この言葉の裏には彼のこれまでの歩みが関係している。新潟県の上越市出身で中学までは全中やジュニアオールスターなどに出場した経験はない。諏訪に進学したのは、知り合いのつながりで練習に参加したときに自分たちで声をかけ合いながら泥臭くプレーする先輩たちの姿に惹かれたからだ。ただ、同期には#14高山鈴琉や#3中川知定真といった中学時代から名の知れた才能豊かな選手が多く、ユニフォームをもらうことすら容易ではなかった。

実際、昨年まではほとんど試合に絡むことができておらず、Bチームでもがく時期もあった。本人も「諦めそうになった」と認めている。

そんな石口に声をかけ続けたのがマネジャーの屋代和希だという。「和希が『頑張るぞ』って言ってくれて、そこについていったから今の自分があります。1年生の最初の頃からずっとシューティングに誘われていて、それを断り切れずに毎日やっていたら今こういう選手になれました」

石口は自身を「本当に努力できる人間」であると言い切る。努力の仕方やメンタル面について教えてくれたマネジャーの屋代の存在に助けられ、来る日も来る日も死ぬ気で努力を重ね続けた。するとそれは結果となって表れはじめ、今年度はスタメン出場に加えてキャプテンも任されている

プレー面ではフィジカルを生かしたドライブやアウトサイドのシュート力を武器に強気なプレーを続け、今年は高山や中川ら1年時から主力で試合に出場してきた選手を差し置いて東海大付諏訪のエースと呼ばれるまでに成長。オールスターファイブに輝いたU16アジア選手権、そしてU17ワールドカップ──。世代別の日本代表にも選出された事実は、彼の計り知れない努力のたまものだ。

飛躍的なステップアップを果たし無名から日の丸を背負うまでに成長した過程で、自分はバスケットボールに本気で命を懸けてきた。その自負があるからこそ、涙は一切出なかった。それでもなお、石口は自身へ厳しい評価を下す。

「個人としてはすごく成功した高校生活だったと思いますが、チームを勝たせるという意味では失敗。結局はチームを勝たせられなかったキャプテンなので、自分はそんなに良い選手ではないと思います」

人によってはこれらの発言はドライ過ぎるように聞こえるかもしれない。いわゆる感動の物語ではないかもしれない。ただ、その目には一切の曇りがなく、まっすぐに現実と向き合っているように見えた。この言葉に嘘はないのだろうし、これが石口が感じるリアルだ。

コミュニケーションを本当に頑張ってチームをまとめてきたつもりだったんですけど、コミュニケーションの本質を伝えられていなかったです。形だけではなくて、その本質をもっと伝えていかないといけないです」と、大学ではさらに強いリーダーシップでチームをリードすることを目標としている。

「和希が僕にしてくれたように、仲間に対して『一緒に頑張ろう』って、自分の“頑張る”のレールに周りをはめていかないといけないです」

自分のやりたいことに対して努力できる人間は多くいる。ただ、そこに本気で命をかけられる人間となるとほんのわずかである。無名からはい上がった高校3年間。誰よりもストイックに打ち込んできた石口の言葉の数々は、彼の本気を裏付けるのには十分過ぎるものだった。

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取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

タグ: ウインターカップ 高校バスケウインターカップ2022

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