月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2022.12.23

ジェロード・ユトフ(京都ハンナリーズ)への懲罰裁定に渡邊雄太(ブルックリン・ネッツ)も反応

ジェロード・ユトフに科された懲罰が物議をかもしている(写真/©B.LEAGUE)

1218日に京都市体育館で行われた京都ハンナリーズ対三遠ネオフェニックス戦の終了直後に京都のジェロード・ユトフがバックコートから放った1本のショットを巡り、様々な見解がソーシャルメディアを賑わしている。


この試合は3,086人の観衆が見守る中、アウェイの三遠が73-65で勝利した一戦だ。状況としては、第4Q残り8.4秒に三遠が自陣ベースラインの右サイドから最後のオフェンスを開始したが、このインバウンドプレーで残り1秒にバックコートに飛んだパスをユトフがスティール。ボールを奪ったユトフは試合終了のブザーが鳴り終わるかどうかというところでゴールめがけてロングショットを放つ。この行為が、「試合終了後にボールを投げつける行為」と受け止められ、Bリーグの懲罰規程にある「第5条【懲罰の基準】第3項第11号が適用され「けん責(始末書をとり、将来を戒める)」を言い渡された。

同懲罰規定はリーグ公式サイトで公開されており、誰でも見ることができる。そこには「選手等が試合後または試合中の失格退場後に、Bリーグの関係者としての品位を欠きリーグの価値を損なう行為」として4種類の行為が挙げられており、今回のユトフの場合はその中に出てくる「ボールを蹴り上げたり投げつけたりする行為」、「試合後に相手クラブやクラブ関係者に対する侮辱行為」の一方か両方に該当するのだろう。

アグレッシブに最後まで気を抜かずプレーするように求められ、それを実行し、試合終了前に起こした動作を完結させた時点が試合終了後だったというような状況だが、映像を見ると、確かにボールをリリースする必要はなかったかもしれない。ユトフはボールを持ったままいられたかもしれない。

しかしこの出来事に対して、画面で見る限りはコート上のプレーヤーも場内の観衆も荒れた様子はない。逆に処分が明らかになるとともに、ユトフの立場を擁護する方向のさまざまなコメントがソーシャルメディアで投稿されている。かつてメンフィス・グリズリーズ/ハッスルにツーウェイ契約プレーヤーとして所属し、ユトフとチームメイトだった渡邊雄太も、ユトフが何も乱暴な過ちを犯したのではないことを理解して安心した旨のコメントを投稿した。

ユトフはボールを投げつけたのだろうか? 投げつけるのと投げるのとは同じだろうか? あのショットは誰かに対して侮辱的だったのだろうか? ブザーから1秒も過ぎていない時点までの「ハンドルの遊び」のような行為と見ることもできるのではないだろうか? ユトフの手を離れたボールが観客や関係者を直撃してケガをさせたり、危険な思いをさせたのだろうか? 

仮にユトフのショットがゴールを射抜いていたら、ブザービーターにならなくても場内は明るい笑顔で沸き返ったに違いない。それでも懲罰適用になっただろうか?

アスリート、あるいは社会人として規律を尊重すべきなのは当然として、スポーツ観戦は誰もが本来の自分の姿を素直に表現して楽しむ場でもある。いろんな疑問が浮かぶが、見る立場、プレーする立場、運営する立場により答えが違うこともあるだろう。Bリーグでは、スポーツエンタテインメントの楽しみをどのようなバランス感覚で表現すべきなのか。そうしたことを考える機会を提供する出来事だ。

文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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