ウインターカップは「悔しさ」も「楽しさ」も味わった特別な舞台

 

昨シーズン、山本麻衣はWリーグファイナルでトヨタ自動車アンテロープスの先発ポイントガードとして大活躍し、2試合で平均17得点と５アシスト。3Pシュートは9本中7本を射抜く高確率（77.8％）でリーグ連覇と共にプレーオフMVPに選ばれた。

 

父が元バレーボール選手、母が元バスケットボール選手というスポーツ一家に生まれた山本は愛知県の藤浪中で全中優勝を経験。その後はよりハイレベルな環境でのチャレンジを求めて女子バスケの超名門・桜花学園高への進学を決めた。

 

そんな山本の実力は当時から抜きん出ており、1年生にして桜花学園のスターターに名を連ねることになる。すると高校での全国デビューとなった2015年のインターハイではいきなり優勝。44-40での勝利とロースコアゲームとなった岐阜女高との決勝戦でも35分近く出場し、ターンオーバーはゼロだった。

しかし、ウインターカップではその岐阜女に決勝でリベンジを許してしまう。同じ東海地区のライベルであり、全国でも常に覇を競ってきた相手への敗北は、翌年のリベンジにつながる伏線となった——。

 

失意の敗北からちょうど1年が経過した2016年12月28日。桜花学園はインターハイと国体を制覇し、３冠達成への最後の大一番を迎えていた。相手はもちろん岐阜女だ。「１年生の頃にウインターカップ決勝で負けて、その舞台で岐阜女に勝たなければ借りは返せないと思ってやってきた1年間だった」と山本が振り返るように、ウインターカップ決勝の借りはウインターカップ決勝で返すしかなかった。

 


強い意気込みで試合に臨んだ一戦は、1Qで桜花学園が24-15とリードを作るも岐阜女も自慢のディフェンスを武器にじわじわと点差を縮め、3Q終了時点で５点差（51-46）。４Qにも拮抗した試合が続いたが、最後は桜花学園が67-65で競り勝ち見事に高校３冠を成し遂げたのだ。「（１年間の）最後に優勝して３冠を達成できたことはホッとしましたし、うれしかった」と山本。彼女自身も高校で一番印象に残っている試合に挙げるこの試合では、40分間フル出場し、13得点、5リバウンド、３アシスト。２年生ながら桜花学園を操る絶対的司令塔として、ここまでは順風満帆のキャリアを歩んでいた。



 

だが、３年時に試練が…。キャプテンを任され、最後の年と意気込んでスタートした１年だったもののインターハイ決勝では岐阜女に敗れて準優勝、国体でも東海地区予選決勝で岐阜県に敗れ、無冠のまま迎えたウインターカップでも準決勝で後の優勝校である大阪桐蔭に完敗。ついに高校ラストイヤーでタイトルを獲得することはできなかった。

それでも、藤本愛瑚（ENEOS）や樺島ほたる（東京羽田）ら「当時の３年生と『このままでは終われない』と話して、3位決定戦ではすごく良い試合ができました」と、翌日には気持ちを切り替えて八雲学園に快勝。日本全国の高校３年生がコートに立てうる最後の1日までバスケットができた喜びをかみ締めながら、山本の高校バスケは幕を閉じた。「ウインターカップは一番多くの人に観てもらえて、応援してもらえる最高の舞台だと思います。トップリーグでもあそこまで観客が集まることはなかなかないので、あの舞台でプレーしたことは本当に良い経験になりました」

 

山本にとっては「悔しい思いも、良い思いも、楽しい思いも一緒に味わえる最後の特別な舞台」がウインターカップ。その言葉どおり、1年時は悔し涙に暮れ、２年時は優勝に歓喜し、３年時は結果こそ伴わなかったが良い終わり方ができた。ウインターカップでスターダムを駆け上がり、大学やトップリーグに羽ばたく選手は数知れず。山本も間違いなくそうした選手のうちの一人なのだ。

 

 ＼山本麻衣選手から応援メッセージ／

三年間の集大成で迎える大会だと思います！
この大会でチームメイトと一緒にできる最後の大会だと思うので、どんな状況でも楽しんで、チームそれぞれがいい形で終われるように戦い抜いてください。


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