月刊バスケットボール5月号

福岡第一が福岡大附大濠を破って初代トップリーグ王者に!勝負の冬に向け貴重な収穫を得る

 

 9月10日から約2か月半にわたって開催された男子のU18日清食品トップリーグ。6試合を消化した時点で共に無敗をキープしてきた福岡第一と福岡大附大濠の頂上決戦が、11月26日に国立代々木競技場第二体育館で開催された。

 

 11月3日のウインターカップ福岡県予選決勝では福岡第一に軍配が上がったライバル対決は、序盤から白熱の展開に。福岡第一が#52小田健太の3Pシュートで先制し、続けて#8轟琉維がドライブで大濠のペイントを切り裂いてリズムをつかまんとすれば、大濠も#7広瀬洸生の3P、#14川島悠翔のインサイドの合わせで反撃。1Q終了間際には#13湧川颯斗のトランジションで19-18とリードしてクォーターエンドを迎えた。

 

 大濠にとっては良いリズムで迎えた2Qだったが、ここでアクシデントが。ドリブルの最中に#13湧川が相手との接触で右足をひねってベンチに退くこととなったのだ。今年はメインハンドラーを務めながら自らも得点をクリエイトしリバウンドでも奮闘するなど、#13湧川は攻防の起点となっていただけに、彼が抜けたことで一時チームはトーンダウン。その隙に付け入った福岡第一はディフェンスのプレッシャーを強め、前半だけでなんと13スティール。逆に大濠は17ターンオーバーを犯し、48-29と福岡第一が一気に試合の主導権を握った。

 

前半は福岡第一のディフェンスが際立った

 

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 この想定外の事態によって開いた点差には「あそこまで大きな穴ができてしまうと勝負にならない」と大濠の片峯聡太コーチ。それでも、タイムアウトを極力取らずに選手たちの判断や成長を促して見守り続けたのは、リーグ戦ならではの判断だった。「ガード陣を鍛えようと思ってあまり私も手助けせずに運ばせようをというところでしたが、まだまだフィジカルもスキルも経験もなかったなという現実をしっかりと受け止められた」と苦しい展開の中でも得るものもあった。

 

 対して、福岡第一にとっては#13湧川の退場によって思わぬ点差がついたことは必ずしも良い出来事ではなく、「今日は主力メンバーを40分使う練習をしようと思っていましたが、点差が開いたことで気が緩んでしまいました。セカンドメンバーはうまくいっているときもあるけれど、点差を縮められることもあって、それによってスタートのメンバーに負担がかかるときもあります。うまくいくときとそうでないときもあるので、今日はスタート中心でやってみる練習をしました。ただ、よくはなかったです」と井手口孝コーチ。

 

 開いた点差やスティールの数も湧川不在のアクシデントが影響したもので、決してチームが良い展開から奪えたものではない。井手口コーチはそう試合を見ていた。

 

湧川を欠く中、泥臭くチームを支え続けた#15副島

 

 そんな両チームの思惑が交錯する中で迎えた後半は、追い込まれた大濠の粘りが象徴的な展開に。3Q終了時点でのスコアは64-45と福岡第一が大量リードしたものの、3年生の#15副島成翔が泥臭くリバウンドに飛び込んでセカンドチャンスをモノにし、同じく3年生の#7広瀬は#13湧川の穴を埋めるゴートゥガイとして果敢にリムへアタック。#15副島は試合を通して14得点、7リバウンド、#7広瀬は20得点を記録した。加えて1年生の#10湧川裕斗や#19高田将吾も随所に光る活躍を見せ、4Qに怒とうの猛反撃で最大6点までリードを縮めることに成功したのだ。

 

 逆に福岡第一は前半に見られた高速バスケが鳴りを潜め、リードこそしているものの、本意ではない試合展開に。最終スコアは76-70と福岡第一に軍配があがったが、4Qだけでみると12-25と大濠が大きくリードしていた。

 

「(湧川の離脱を)チームとしてカバーできなかったのは、精神的な面でも戦術的な面でも大きな課題。ただ、後半は沈み切らずに自分たちのトランジションのバスケットや相手のプレスに対してもしっかりとボールを運べていました。ずっとダメだったわけではなくて、修正できたという手応えは感じています」と片峯コーチ。アクシデントの中でステップアップした選手たちのプレーはウインターカップにつながる大きな収穫だった。

 

勝利の余韻に浸る間もなく、#8轟は勝負の冬を見据えた

 

 福岡第一としても勝って兜の緒を締めるという意味ではうってつけの試合になったはずだ。「優勝できたことはうれしいですが、内容的にはダメな部分があった」と#8轟も一切満足しておらず、「今日は久しぶりのフル出場ということで、最後の方で自分たちの持ち味である堅守速攻ができていない部分があって、大濠さんやられる部分があったので、もう一度体力のところも見直していきたい」と、早速ウインターカップへの課題を口にした。

 

 彼ら2チームだけでなく、参加した8チームがそれぞれの目的を持って戦った7試合。“負けたら終わり”のトーナメントではなく、次の試合が必ず来るリーグ戦という形の公式戦は各チームに更なる深みをもたらす価値あるものとなったに違いない。

 

写真/©︎JBA

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

 

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