月刊バスケットボール5月号

NBA

2022.11.22

堅調なシューティングとハッスルで評価を高める渡邊雄太(ネッツ) - グリズリーズ戦後の関連コメントまとめ

 ブルックリン・ネッツが127-115でメンフィス・グリズリーズを破った日本時間11月21日(北米時間20日)の一戦を終えた後、この試合でも好調を維持して勝利を呼び込む活躍をした渡邊雄太に対する高評価がいくつも聞かれた。渡邊はこの試合を含め直近4試合連続、8試合中6試合で2桁得点を記録しているが、NBA入り後の渡邊がオフェンス面でこれだけの爆発力を見せ続けたことはこれまでにない。シーズンアベレージも軒並みキャリアハイペースという状況で、特に3P成功率57.1%はリーグ全体のトップという驚くべき好成績だ。フィールドゴール成功率も、NBAの規定成功数に達していないためランク外ではあるものの、現時点の60.9%はリーグ全体の8位に相当する。

 

 これらの数字が、ディフェンス面での奮闘やトランジションで走りまくることの上についてきている点に、ほかのシューターにはない価値がある。ひいき目なしに見て、現在NBA全体の3&Dタイプのロールプレーヤーの中で、総合的な貢献度はトップレベルではないだろうか。以下のコメントはそう思いたくなるようなものばかりだ。

 


ネッツのジャック・ボーンHCは試合後の会見で、渡邊の活躍ぶりにはバスケットボールの素晴らしさが凝縮されていると言い表した。

 

「彼の様子にはバスケットボールの縮図のようなもの、なぜバスケットボールが特別なものなのかを感じます。彼と同じコートにいて彼の旅に立ち会い、成功を見て皆が彼を応援する。私にとってそれは、この競技に携わるのが大好きな理由です。彼は懸命に練習し、正しいことを重ねています。そんな人物が報われるのは、バスケットボールの素晴らしいところです」
"It’s like the epitome of basketball, why basketball is so special like to be able to be on the same floor with him and his journey and see him have success and the guys cheer for him. To me that's why I love being around the game. He works on his game. He does all the right things. And to see a person get rewarded, it’s a great part of basketball."

 

 ケビン・デュラントには短い時間に2度渡邊についての質問が飛んだ。最初は「3Pコンテストに選ぶならステフィン・カリーかユウタかどちらですか?」とのワクワクするような問いかけで、まずデュラントは「僕でしょう!(Me!)」と笑って返した後、「もちろんステフ(Steph of course)」とかつてのチームメイトを立てたが、以下のように渡邊への称賛を続けた。

 

「ユウタは今、本当によく入ってますよね。ものすごいシューティングでコートを広く使えるようにしてくれています。でもそれだけではなくドライブも狙ったり、正しいことができています。あんなふうに正しいプレーをできていると、ショットの手離れも良くなりますよ」
"Yuta is definitely knocking it down right now. He’s shooting the ball extremely well for us, spacing the floor. But he’s also driving the ball when he catches. He’s making the right plays right now. I think that’s a…, you know you make the right play then shots feel a little better leaving your hand."

 


デュラントに対する渡邊関連のもう一つの質問は、渡邊のチームにおける存在感を聞く内容で、デュラントは以下のような答えをした。

 

「彼は素晴らしいプレーをしているし、皆が彼の頑張りを認めています。重要なショットを決めてくれていますしね。皆うれしくなりますよ。チームでの立場が保証されていないのにローテーションに分け入って爪跡を残してきたヤツならなおさらです」
"He’s playing great. I mean we love his energy. I mean he hitting big shots for us, you’re always get excited for the teammates, especially guys who come in and don’t necessarily have a guaranteed spot on the team but worked their way into the rotation and you know put their imprint on the game from day one so."

 

「彼の活躍はうれしいです。ぜひこれを続けていきたいですね。彼はもう、出たらいいバスケットボールができると期待される存在です。打つショットすべてを決めるとか、この先もシーズンを通じてフィールドゴールを70%成功させられるとは思っていないですけど、攻守両面で堅実なプレーを見せられているし、僕らもそうしてくれると期待しています」

"Excited for him. At this point we want to continue to…, at this point I think he should expect he’ll go out there and play good basketball. I’m not saying he’s going to make every shot or shoot 70% from the field for the rest of the year. But he’s just playing a solid ball on both end of the floor and we’re expecting that from now."

 


渡邊が試合後にコート上でヒーローインタビューを受けているときに、横からちょっかいを出して祝福したベン・シモンズには、会見で渡邊関連の質問はなかった。しかしシモンズは、2日後に対戦するフィラデルフィア・セブンティシクサーズについて、試合前に渡邊と話したこと明かしていた。

 

 まだシーズン保証がない契約ながら、チームのスターたちとプレーヤーとしての渡邊の立場には何ら隔たりはないのだろう。デュラントの言葉は、超一流と同じ期待が渡邊に向けられていることを感じさせるし、シモンズの小さな仕草やコメントから、ネッツのチームメイトとの絆や一体感も伝わる。

 

 

 渡邊がNBAデビューから2年間在籍したグリズリーズのテイラー・ジェンキンスHCにも、渡邊のこれまでの成長についての質問があった。ジェンキンスHCがグリズリーズに加わった2019-20シーズンは、渡邊の5年間のキャリアで出場機会が最も少なかったシーズンだ。この試合では、3点差の接戦で迎えた第4Qに3Pショット4本で12得点を奪った渡邊から手痛い“恩返し”を受けた形となったが、ジェンキンスHCは「ユウタの活躍はうれしいです(So happy for Yuta.)」とかつての仲間の成功を祝福した。

 

「彼が努力家で負けん気が強いことは、リーグ入りして初めて会ったときから知っています。いくつもチームを転々としてここで役割を見つけました。ものすごくいいプレーをしていて、ショットが本当によく入っていますね。彼の成長は誇らしいし、頑張った証としてふさわしいことです」

"I mean he’s been a worker, competitor ever since I met him since he came in the league. Obviously, he’s been on number of teams. But he’s found a good role here. He’s playing extremely well, obviously shooting the ball extremely well. But proud of his development. He deserves that. But it is in how hard he works."

 

 116-102と点差を広げた第4Q残り5分34秒に一度ベンチに下がった際には、スタンディング・オベーションを受けた。残り4分2秒のスティーブン・アダムスのフリースローの場面では、バークレイズ・センターに「WA・TA・NA・BE!」という合唱も巻き起こった。デュラントが言うように、これからはそんな状況の中で活躍するのが当たり前になるのかもしれない。少なくともチームと渡邊はそう信じているはずだ。

 

文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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