渡邊雄太(ネッツ)のブレイザーズ戦大活躍に対するボーンHC、デュラントらのコメント
【渡邊の活躍についてチームメイト、敵が語る】
渡邊雄太が3Pショット5本を決めてその成功率でNBA全体のトップに躍り出た、日本時間11月18日(北米時間17日)のポートランド・トレイルブレイザーズ対ブルックリン・ネッツ戦が終わった後、両チームのコーチやプレーヤーが渡邊の名を挙げ、あるいは名前に触れずともそのインパクトが大きさかった流れやプレーを振り返り、コメントを残している。渡邊はこの試合で、前半こそ3Pショット2本をミスして無得点だったが、後半は3Pアテンプト5本をすべて成功させ、フリースローも6本中5本を沈めて20得点。重要なリバウンドや好ディフェンスなど、際立った活躍でネッツの109-107の勝利に大きく貢献した。
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ネッツのジャック・ボーンHCは、チームの絆を感じさせる戦いぶりだったこの試合を振り返る中で、渡邊に触れながら以下のように語った。
「素晴らしい気分です。例えばユウタの前半は最高の出来とは言えないものでしたが、チームは彼を信頼し続け、ボールが彼の手元に回り、彼は良い場所にいました。ボールにはそれ自体に力があり、いいプレーをしていれば自然に回ってくるものです。彼は辛抱強くプレーし続けた好例で、後半それが実りましたね」
“It was awesome to see. So, you take, for example Yuta didn’t have the best first half. but the team you know still trusted him and the ball found them and he was in a right place and…. And the ball has the energy. And it finds you when you’re doing good things. He was a prime example of sticking with it and coming through in the second half.”
ケビン・デュラントは渡邊の爆発的なシューティングに対して以下のようにコメントし、期待を膨らませている。
「彼が自信をもってシュートを打ちにいっているのがわかり、これは入ったなという感じでバックコートに戻っていたぐらいでしたよね。アグレッシブにゴールに向かう場面もあり、何から何までやってくれる大活躍で期待に応えてくれました。周りの皆さんも、一般のバスケットボールファンの皆さんも楽しんでくれたでしょうし、今後の活躍が待ちきれないことでしょう。毎試合今日のような活躍を期待しています」
“I mean if he shot like he was confident and he ran back down court like he knew it was going in. so, like…, you know he’s playing aggressive like that when he’s downhill, he’s talking up to it like he’s…, he did it all for us tonight. I’m excited for him because this type of game, we all needed to see, I think, everybody else on the outside, basketball fans in general was loving, you know, couldn’t wait to see this type of performance from him. So, like I said we expected that from him every night.”
渡邊のこの試合におけるパフォーマンスでも、ブレイザーズにとって特に大きなダメージとなったもののいくつかは、第3Q終盤にネッツが14-0のランで71-82の劣勢から一気に85-82とリードを奪って最終クォーターになだれ込む流れで飛び出した。ディフェンスではスラムダンク・チャンピオンにもなった強靭なアスリート、アンファニー・サイモンズらのアタックを止め、オフェンスでは14得点中自身で6点を挙げ、12得点に直接的に絡んでいる。
☆渡邊の第3Q終盤のプレー(残り時間、スコア、プレー内容の順に記載)
03:11 71-82 サイモンズのトップからの3Pショットを厳しいクローズアウトで阻止
02:27 75-82 速攻でファウルを受けフリースローを獲得、2本成功
01:58 78-82 左ウイングからのドライブ&キックでデュラントの3Pショットをアシスト
01:35 78-82 ボールを持つサイモンズにトップで仕事をさせず、ナシール・リトルが放った3Pショットのミスをリバウンド
01:27 81-82 デュラントのドライビング・フローターをアシスト(デュラントはファウルも受けフリースローも成功)
01:13 81-82 リトルとマッチアップしてドライブを阻止、タフショットを強いミスに終わらせる
00:36 82-82 速攻のフロントランナーとなりフリースローを獲得、1本成功させて同点に追いつく
00:04 85-82 11得点目となる逆転3Pショット
ブレイザーズのチャウンシー・ビラップスHCは会見で渡邊個人の名前を挙げることはなかったが、この流れを以下のように振り返り非常に悔いていた。
「第3Qの終わりが非常に痛かったです。2分40秒残して11点のリード(実際には11点リードは残り3分まで)から14-0のランで一気にひっくり返されました。その時点からは何とか取り返そうと緊急事態で、実際にそれはできたのですが、難しいショットばかりになりました」
“I thought the end of the 3rd really hurt us. 2:40 left, we have eleven. They go on 14-0 run you know, turned the tide on us. and then from that point it was just kind of you know…, it was in scramble mode, you know trying to get back in and we did. But just too many tough looks.”
リラードも、やはり個人名を挙げていないものの、デュラントを起点としたスウィング-スウィング・アクションを経てのコーナースリーを大きな敗因に挙げた。それは渡邊とネッツがたびたび成功させたプレーだ。
「シュートアラウンドでどんな展開になるか話していたんです。彼(デュラント)に対してスウィッチして誰かがローテーションで動かなければいけません。誰がシューターかもわかっていた。集中できていないと、しっかり認識していないとこうなってしまうということです」
“I mean we talked about it in the shootaround. You know so we knew what it was going to be. You know if he’s up there, you know they get the switch and we send somebody out and we knew that we’re gonna have to rotate. And we also knew who the shooters were. So, that’s what I mean when it’s like you know that’s…, just not being locked in, not recognizing.
競った展開の第4Qに沈めた3本の3Pショットはいずれもクラッチと呼べる価値あるもの。このクォーター残り10分15秒の1本目は、ブレイザーズの8-2のランで91-87とリードを奪い返されたところでの窮地を救う一撃だった。
残り4分52秒のトランジション・スリーは今シーズンの渡邊の特徴的なプレーだ。ディフェンスでサイモンを苦しめ、セス・カリーのスティールでオフェンスに転じると、その流れで左ウイングからレインボー・スリーを成功させた。このプレーでブレイザーズはタイムアウトを請求。立て直しを図るが、その後もネッツの安定した攻守に勝機を見出すことができなかった。
終盤には渡邊とリラードとのマッチアップもあり、やられる場面もあったがきっちり止める場面もあった。残り1分47秒に106-101とリードを5点差に広げたビッグショットがほとんど相手の息の根を止めるような効果があったが、その後106-103の残り52秒にリラードの3Pショットをミスに終わらせたディフェンス、続くオフェンスで自身のコーナースリーの機会を見送ってショットクロックをぎりぎりまで使う好判断など、終盤の渡邊はそれまで以上に存在感を増した。
渡邊の20得点到達は、ここまでのキャリアで3度目。1試合の3P成功数5本は自身のキャリアハイであると同時に日本人プレーヤーとしての最多成功数でもある。
無名の立場で英語も話せずに渡米し、ミッドメジャーのジョージ・ワシントン大でポストシーズンNIT制覇、アトランティック10カンファレンスの最優秀ディフェンシブ・プレーヤー賞受賞オールカンファレンス・サードチーム入りという経過を踏み、ドラフト外でNBA入りした。現在は今シーズン全体の保障さえない契約でネッツに所属している。そんな渡邊の活躍は奇跡的でさえあり、何より同日までの時点で3P成功率55.6%がリーグの公式ランキングでトップであるという事実は強烈に衝撃的だ。
リラードのコメントを聞けば、その渡邊の存在がすでに相手チームのスカウティング・レポートで要注意の存在として捉えられていることが推察できる。当然のことだろう。しかし、ということは、今後のマークはより徹底され間違いなく厳しくなる。本当の勝負はここから。どこまでいけるか期待が膨らむ現状だ。
文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)