月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2022.11.16

一期一会の縁で来日決定 - ベイリー・スティール(横浜エクセレンス)の物語(インタビュー)

 横浜エクセレンスに今シーズンから加わった213cmのビッグセンター、ベイリー・スティールは、一期一会の思わぬ出会いをきっかけに日本にやってきた。アメリカ東部のピッツバーグにキャンパスを持つデュケイン大卒の25歳。オフコートでは柔和な表情で接しやすい人柄だが、ビッグマンとしての存在感は早くもチームにとって欠かせない要素となっている。開幕からの12試合で記録した平均11.7得点、5.8リバウンドはいずれもチーム3位。日本での生活に慣れながら、活躍の幅を広げようと奮闘している新戦力に話を聞いた。

 

ベイリー・スティール(BAYLEE STEELE)
横浜エクセレンス#11 C 213cm/112kg
1997年6月28日生まれ(アメリカアイオワ州ノーウォーク出身)


——ここまでの日本での生活はうまくいっていますか?


個人的にはすごくいい感じです。ここの生活はいいですよ。横浜エクセレンスはプロフェッショナルな組織で、チームとして素晴らしいです。毎試合積み上げて向上しているし、それが目に見えて感じられています。天皇杯で負けたベルテックス静岡とも開幕節で1勝1敗でしたし、毎試合積み上げられています。


——あなたの人柄について教えてください。ご自分ではどんな人だと思っていますか?


僕はバスケットボール以外にほとんど何もしない退屈な人間です(笑) 本当に練習やワークアウト以外何にもなし! でも気の合う人となら普通にやり取りできて、ジョークを言い合ったりするのを楽しめる性格です。


——特に仲の良いチームメイトもできましたか?


みんなと仲良くできています。みんなが英語を話すわけではないし、日本語を話さない僕との間には言葉の壁もありますが、うまく関係を作れていると思います。


——日本語は勉強しているのですか?


基本的な「サンキュー」とか「ユーアーウェルカム」、「ハロー」くらいは言えます。「こんにちは」、「ありがとう」、「どういたしまして」、「おつかれ」とか(笑)

 


——日本にきて苦労しているのはどんなところですか?


どこに行っても文化的な違いはあるので、僕は順応するだけです。こんな性格なので、そのときどきを楽しもうとしていますよ。アメリカからやってきて東京に住んでいるんですから。東京ですよ! 考えてみればすごいことじゃないですか。だからしっかり楽しもうと思って暮らしています。


——行きつけの場所やお気に入りのことは見つかりましたか?


そうですね、いい場所を見つけています。僕はBリーグが毎週末に2試合やるのが気に入っていて、チームにとってもいいことだと思います。僕は食べるのが好きで、自分の食事を自分で作るんですけど、少しずついいレストランも見つかってきました。大井町の近くにある「ブルドッグ」とか…!
仲のいい友だちが自宅から20分くらいのところに住んでいて、日本のいい場所を教えてもらって出かけています。だから行きつけもあっていつも出掛けていますよ。

 


——背番号が#11になった理由はどんなことですか? 大学では#44でしたよね。


これには訳があります。僕は子どもの頃に野球をやっていて、そのときが#11でした。バスケットボールを始めたのは16歳の頃で、バスケットボールをしていた母(高校時代に3x3のプレーヤーだったとのこと)が#44をつけていたので僕もその番号にしたんです。「母さんに喜んでもらおうと思って#44にしたよ」ってね。
高校と大学では#44でしたが、卒業とともに「ごめん、母さん、ここからは僕自身の番号に戻らせてもらうよ」ということでこうなりました。すべてを教えてくれた母に対する敬意を示したわけです。#11は子どもの頃の自分の番号です。

 

——石田剛規HCは、あなたについてBリーグを代表するようなプレーヤーになれると話していました。そうなると日本に長くいることになりますが、ご自分ではこの先どんな構想を持っていますか?


そんなことを言ってくれていたなんて! 僕は日本がとても気に入っているのでうれしいですね。ここは僕にとって3つ目の国です。これまでにポーランドとハンガリーでプレーして日本に来る決心をしました。なので少し違うスタイルのバスケットボールをやってきていますが、ここはいいですね。できるだけ長くここにいたいと思います。本当に大好きですから。
とはいえ、今は今シーズンに集中していて、コート上でチームと僕らの勝利にできるだけ大きく貢献できるように頑張っています。できれば優勝を実現したいですからね。その目標を目指しています。
それができれば、その後のこともきっとうまくいきます。心配はしていませんよ。それよりもまずは今シーズン、このチームで勝って成功することが大事です。

 


——日本に来たのはどんなわけがあったのですか?


バスケットボールを仕事にしていると、狭い世界なのでいろんなところでいろんなプロと出会います。昨年ハンガリーに向かう際、ニューヨークからフランクフルトに飛ぶ飛行機に乗ったのですが、到着したときに偶然一人のバスケットボール・プレーヤーが隣を歩いていたんです。話しかけたら応じてくれたので、「どこでプレーしているんですか?」と聞いてみました。ジョーダン・ハミルトン*1という名前のプレーヤーでした。
彼はB1とB2のクラブに所属したプレーヤーで、「日本にいる」と話してくれました。それを聞いて「日本ですって!?」となりました。僕の頭の中にはヨーロッパしかなかったので、「そうなんですか、ヨーロッパじゃなくて!?」みたいな。彼は「日本が最高に気に入っている」と話してくれて、今では恩師といってもいいような存在です。彼がいなかったらここにきていたかどうかわかりません。彼から日本のバスケットボールや文化の話を聞いて、絶対に来たいと思うようになりました。Bリーグで活躍していたジョーダン・ハミルトンと出会って、その後もお世話になって影響を受けたことが僕がここに来た理由で、思った通り気に入っているというわけです。
世界は不思議なものです。アメリカのニューヨークからドイツのフランクフルトに行く飛行機で出会った一人のバスケットボール・プレーヤーが日本から来た人だった。それがきっかけで僕自身が日本でプレーするようになって楽しくやっている。驚いてしまいますよね。


——これは本腰を入れて日本語を勉強しないといけませんね。


その通りです。「やることリスト」の最優先事項ですよ! 本当にここにいたければ当然ですよね。なので、まずはチームとして今年B2に上がって、先々の心配はその後です。この組織の志は大きいので、僕はとても良いところに来たと思っています。

 

 

*1=ジョーダン・ハミルトンは2011年以降NBAやヨーロッパのクラブで活躍し、昨シーズン滋賀レイクスターズと熊本ヴォルターズに所属したプレーヤー。今シーズンは所属情報がないが、この夏WNBAスターのベトニヤー・レイニーと結婚したことが報じられている。

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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