月刊バスケットボール6月号

NBA

2022.11.01

ブルックリン・ネッツは渡邊雄太とシーズン保証契約をすべき

 ブルックリン・ネッツの渡邊雄太が徐々にチームの信頼を勝ち取りながら活躍の幅を広げている。日本時間11月1日(北米時間10月31日)のインディアナ・ペイサーズとのホームゲームでは3Pショット1本成功を含む5得点を記録し、第4Q終盤にも相手の得点を阻止する好ディフェンスを見せて116-109の勝利に貢献した。

 


2日前にこの日と同じペイサーズを相手に4連敗目を喫したネッツでは、その後プレーヤーだけでミーティングが行われたという。その甲斐あって、得点源のケビン・デュラントとカイリー・アービングがそれぞれ36得点、28得点といつもどおり大活躍したことに加えて、2日前に34-53と支配されたリバウンドで39-38とアドバンテージを奪うなど、チームとしての力強さを感じさせる戦いぶりを見せた。その中で渡邊は攻守両面で存在感を示していた。

 

今シーズン無保証の立場ながらディフェンス力に高評価


オフェンス面ではフィールドゴールが4本中2本成功で、そのうち3Pショットが2本中1本成功だった。最初の得点シーンは第1Q残り4分28秒で、左ウイングからのドリブルドライブでレイアップを沈めた。もう一度あった得点シーンは第2Q残り5分20秒で、今度は左コーナーから3Pショットを炸裂させた。


しかし最大の仕事は第4Q終盤のクラッチ・ディフェンスだろう。アービングがドライビングフローターを成功させて114-109と5点リードした残り40秒からのディフェンスで、渡邊は相手の得点源の一人であるタイリース・ハリバートンとマッチアップ。ドライブを仕掛けてきたハリバートンのランニングレイアップに覆いかぶさるように厳しくプレッシャーをかけ、ミスショットに終わらせた。勝利を手繰り寄せる大きなディフェンシブ・ストップを成功させた渡邊がオフェンスに戻る際、コートサイドに立つスティーブ・ナッシュHCも手を差し伸べてハンドシェイクを交わしていた。


ネッツは次のポゼッションでデュラントがフリースローを2本成功させ、続くペイサーズのオフェンスをしのいで勝利をつかんだ。渡邊にとってはネッツのユニフォームを着て出場した試合における初勝利。ソーシャルメディア上には、試合後のロッカールームで渡邊が記者からディフェンス力に関する質問に答える映像も広がった。「それ(ディフェンス力)が、僕がリーグにいられる理由だと思います。オフェンスは正直あまりできません。シュートはできますけど…。ボールハンドリングやそのほかはあまり(笑) でも僕は良いディフェンダーだと思っています。今日はいい仕事ができました(I guess that’s why I’m in the league. I can’t really do much offensively, to be honest. I can shoot, But… not good in ball-handling or anything, But I mean I think I’m a good defender, so…. I did my job tonight.)」と語る表情は明るかった。

 

 渡邊はここまでに出場した6試合で平均3.5得点、1.5リバウンド、0.3アシスト、フィールドゴール成功率57.1%、3P成功率55.6%(9本中5本成功)というアベレージ。このうち3P成功率はチーム1位で、フィールドゴール成功率もトップ3に入っている(1試合しか出場していないデイビッド・デュークJr.を除くとチーム2位)であり、いわゆる3&Dタイプのウイングプレーヤーとして数字上のインパクトも残せている。


優勝候補にさえ名前が挙がっていたネッツだが、2勝5敗(勝率.286)の成績はイースタンカンファレンスの12位と低迷している。チームとしての3P成功率33.3%はリーグ25位、ディフェンシブ・レイティング119.5は29位。これらの数字を見ると、スター軍団が形成する土台があるという大前提に立った上で、チーム力をフルに発揮していくためには、渡邊の存在がチームに欠くことができないマスターピースのように思えてくる。


渡邊の契約は単年で保証なしのベテラン最低年俸で、ロスター17人の中で15番目ということが報じられている。ネッツはチームでトップの3Pシューターでディフェンシブ・ストッパーである、あるいはそうなれるだけの可能性を示しているプレーヤーを、このまま放っておいてよいのか? 例えばこの日、試合を締めくくった最後の5人に関して伝えられる契約状況とシーズンスタッツは以下のようなものなのだ。


☆今シーズンの推定年俸と契約期間(「HoopsHype」参照1ドル148円換算)
デュラント 約4412万ドル(約65.4億円、2025-26シーズンまで)
アービング 約3693万ドル(約54.7億円、今シーズンまで)
ハリス 約1864万ドル(約27.6億円、来シーズンまで)
オニール 920万ドル(約13.6億円、来シーズンまで)
渡邊 約197万ドル(約2.9億円、今シーズンまで、無保証)



デュラント 37.7MPG、32.6PPG、5.1RPG、4.1APG、FG%=52.4%、3P%=32.4%
アービング 39.5MPG、30.1PPG、5.0RPG、4.9APG、FG%=47.5%、3P%=30.4%
ハリス 22.8MPG、6.4PPG、2.8RPG、1.8APG、FG%=40.0%、3P5=36.8%
オニール 37.4MPG、9.4PPG、4.3RPG、3.0APG、FG%=36.4%、3P%=37.2%
渡邊 13.4MPG、3.5PPG、1.5RPG、0.3APG、FG%= 57.1%、3P%=55.6%


サラリーが最も少なく出場時間が最も短い渡邊だが、ディフェンス面での見逃せないファイトに加えてシューティングが安定している。ほかの項目も、同じだけの出場時間を得られれば数値を上昇させられると期待するのが自然だろう。


待望の2勝目を手にした後の会見で、ナッシュHCのみならず大黒柱のデュラントも渡邊の能力の高さを称賛していた。オーナーのジョー・サイ、GMのショーン・マークスは今後どんなマネジメントをしていくだろうか。渡邊のパフォーマンスが現状のレベルで続くなら、早々にシーズンの立場を保証する契約に格上げできたとしても誰も驚かないに違いない。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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