月刊バスケットボール5月号

今月の逸足(CLASSIC KICKS)Vol.9-2

  Nike AIR MAX 95 ナイキ エア マックス 95   文=岸田 林   (つづき) かつて日本で一大ブームを巻き起こした「エア マックス95」の火付け役も、陸上選手ではなかった。発売当初は斬新すぎるデザインが“イモムシ”のようだと揶揄されていたが、木村拓哉や広末涼子、内田有紀ら当時の著名人らがCMや雑誌でこぞって着用したことから、96年に入って人気が爆発。また、野球選手らしからぬあか抜けたファッションでも注目されていたイチロー(当時オリックス、現MLB)が、広告などで通称“イエローグラデ”を履いていたこともブームを後押し。定価1万5000円の「エア マックス95」は、最盛期には十数万円で取引されるまでの異常事態となり、高値で転売できたことから、街中でシューズが強奪される“エア マックス狩り”という物騒な流行語も生まれた。   当時は、おりからのNBA人気、漫画『スラムダンク』によるバスケブームに加え、ヴィンテージスニーカーブーム、マイケル・ジョーダン(元ブルズほか)の1度目の引退からの電撃的な現役復帰といった話題性も重なり、「エア マックス」ブームは、ナイキブーム、そしてハイテクスニーカーブームへと昇華していく。この頃の月刊バスケットボールの広告でも「エア ジョーダン」「エア ズームフライト」といったナイキのハイテクバッシュが軒並みプレミア価格で売られていたことを憶えている人も少なくないだろう。   実はかのジョーダンも、かつて「エア マックス」のPRに一役買ったことがある。87年の初代モデル発売時、ナイキはプロからアマチュアまであらゆる競技、あらゆるレベルのアスリートがスポーツを楽しむ姿を描いたTVCM「レボリューション」を全米でオンエア。その中でジョーダンは、同じナイキの契約選手だったジョン・マッケンロー(テニス)とともにこのCMにチラリと出演し、ビジブルエアの魅力をアピールしている。ナイキにとって「エア マックス」は発売当時から、単なるランニングシューズを超えた、ブランドイメージを体現するプロダクトだったのだ。余談だがこのCMは、ザ・ビートルズの楽曲を無断で使用したとのクレームがついたことから、ほどなく放映終了の憂き目にあっており、ジョーダンがプライベートで「エア マックス」を着用している様子も確認されていない。   そのジョーダンは、ドレッシーなスーツ姿か、あるいはゴルフウェアで人前に現れることが多いが、レブロンはデニムやTシャツといったカジュアルなスタイルを好み、ファッションリーダーとしての人気も高い。選手としての実績やシグニチャーモデルの売上ではまだまだジョーダンが格上という見方が一般的だが、こと「エア マックス」の履きこなしについては、レブロンが圧倒的勝利と言って差し支えないだろう。 (おわり)   写真=石塚康隆 (月刊バスケットボール2017年9月号に掲載)

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