月刊バスケットボール5月号

NBA

2022.10.30

渡邊雄太3Pショット1本成功を含む5得点、2リバウンドもネッツは4連敗

 ブルックリン・ネッツの渡邊雄太が、日本時間10月30日(北米時間29日)のインディアナ・ペイサーズとのホームゲームで4試合連続を果たし、5得点、2リバウンドを記録する活躍を見せた。試合には116-125で敗れたが、12分54秒間のプレーは大いに見応えのある内容だった。

 


ベンチからのスタートだった渡邊は、第1Q残り1分14秒にディフェンスリバウンドに飛び込んだ際、思わぬ珍プレーも披露した。相手のショットがリムに弾かれたところで渡邊はボールを空中でつかんだが、不運にもその流れで手首がリムにぶつかり、勢いでボールが自陣のゴールに吸い込まれる“オウンゴール・ダンク”になってしまったのだ。これをNBAの人気珍プレーコーナーとして知られる「シャクティン・ア・フール(Shaqtin’ A Fool)」がソーシャルプラットフォームでピックアップ。拡散されて反響を呼ぶこととなった。


しかし渡邊はこの珍プレーを打ち消す以上のプラスのインパクトをネッツにもたらす。第2Q序盤に2本ディフェンスリバウンドをつかむと、クォーター開始2分過ぎからのオフェンスでカイリー・アービングからのパスを受け、右ウイングからドライビングレイアップで初得点。すると次のオフェンスでも、トランジションで再びアービングのパスを受けて右ウイングから3Pショットを成功させ5連続得点を記録した。


3pショット成功はこれで3試合連続。しかもこの一撃はネッツに36-26と10点差のリードをもたらし、ペイサーズにタイムアウトを強いるビッグプレーとなった。

 

 

ディフェンスの立て直しが急務のネッツ


ただし、ネッツはその優位を保つことができなかった。この日の黒星で4連敗。開幕から1勝5敗のスタートは2015年以来最低の成績とのことだ。長期欠場となっていたシューターのセス・カリーが今シーズン初出場を果たしたが、この試合では3Pアテンプト5本すべてがミスに終わった。得点源のケビン・デュラントとアービングがそれぞれ26得点、35得点と爆発的なオフェンス力を見せても、ディフェンス面の歯車があわずペイサーズの逆襲に失点を重ねた。特にペイサーズにオフェンスリバウンドを獲られ、セカンドチャンスから失点する場面がたびたび訪れたことは今後の大きな反省材料に違いない。

 

 試合後の会見でスティーブ・ナッシュHCは、この敗北を「破滅(Disaster)」と形容した。「意志が見られません。相手を止めたいとか、リバウンドを獲りたいという意欲も連係性も見られませんでした(I didn’t see the will. Didn’t see the desire or the connectivity necessary to get stops and get rebounds.)」


オフコートでも気になる出来事があった。二日前のダラス・マーベリックスとの一戦を前にアービングがソーシャルメディアで行った投稿から、波紋が広がったのだ。アービングはその投稿で、黒人に対する人種差別をユダヤ教に関連付ける内容とされる映画作品の情報をシェアした。これに対し、ネッツのオーナーを務めるジョー・サイが「残念に思っており話し合いを求める」という趣旨のメッセージを投稿。その後アービングは自身を「オムニスト(Omnist=すべての宗教、あるいは無宗教の立場を尊重する人の総称)」と捉え特定の宗教を批判する立場ではないことを主張する投稿を行っているのだが、このニュースがソーシャルメディアだけでなく大手メディアを通じても全米に広く伝えられることとなっている。


アービングが攻撃的な姿勢ではないことを明確に主張している以上、バスケットボール以外の側面でさまざまな事象に興味を持って学ぶこと自体に何ら問題はないのはもちろんだ。ただしネッツとしては本人の意図も確認しながら、波紋が広がった状況下でバスケットボールに集中する環境をしっかり維持していくことが、成績を挽回していく一つのカギにもなりそうだ。その前提に立った上で、高い能力を持つオフェンスを勝利に結びつけるにはディフェンスとリバウンドの引き締めが必須事項だろう。となればディフェンスを得意とする渡邊に向けられる期待も、いっそう高まるのではないだろうか。


渡邊はここまでにネッツが消化した6試合中5試合に出場し、平均3.2得点、1.4リバウンド、0.4アシストのアベレージを残すとともに、ディフェンスでは数字として見えない部分でもたびたび好プレーを見せている。マーベリックス戦ではルカ・ドンチッチに苦労させられたが、それも糧となるに違いない。またシューティングに関しては、フィールドゴール成功率60.0%(10本中6本成功)がチーム2位(1試合出場のみのデイビッド・デュークJr.を除く)、3P成功率57.1%(7本風4本成功)が堂々トップと好調だ。同時にこの2項目はいずれもキャリアハイの数字を維持している。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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