月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2022.10.29

ウクライナからの“サムライ”3人を加えた金沢武士団、B3リーグ第4節まで3勝5敗の2022-23シーズンは全試合がテスト

 昨シーズン1勝49敗という成績でB3リーグの最下位に沈んだ金沢武士団が、2022-23シーズンは開幕初戦で新規参入クラブの立川ダイスから61-49で勝ち星を挙げ、幸先の良いスタートを切った。その後、直近第4節のしながわシティバスケットボールクラブとの2試合に連勝。その時点で通算成績を3勝5敗(勝率.375)として、全16チーム中の10位につけている。


ベルテックス静岡、横浜エクセレンスと上位を走るチームに力負けし、黒星が先行している現状はまだまだ発展途上なのは間違いない。しかし勝ち星のペースとしては、B2から降格後の2019-20シーズン以降では最高のペース。昨シーズン一度も勝てなかったホームゲームで3勝3敗とイーブンの成績なのは、今後に期待を抱かせる。


成績上昇の要因となっているのはディフェンスと試合の組み立て。キャプテンの田中翔大のリーダーシップの下、ウクライナからやってきた外国籍選手3人 - ポイントガードのイホール・ボヤルキム、シューティングガードのヤキブ・ティトブ、パワーフォワードのオレクサンドル・アンティボ - やポイントガードの奥田雄伍らが中心となり、ここまでの8試合における平均71.8失点がリーグ4位(少ない方からの順位)という好成績だ。

 


キャプテンとして金沢武士団をけん引する田中翔大

 


オレクサンドル・アンティボは得点とリバウンドがチームトップだ


また、序盤に先制パンチを食らわない堅実なプレーができており、第1Qに関しては8試合中6試合でリードを奪って終えている。3勝はいずれも先行逃げ切りタイプの流れだった。それができなかったのが第2節の静岡との連戦で、GAME1では5-20、GAME2も13-21と第1Q終了時点でビハインドを背負っての展開となり、どちらも2桁点差で敗れた。


課題の一つは得点力で、ここまでの平均62.8得点は16チーム中の15位の数字だ。個別に2桁得点のアベレージを残しているのはアンティボ(18.6得点)と奥田(12.0)の二人のみ。バランス的には特にウイング・プレーヤーの奮起が期待される。シューティングガードとスモールフォワードで登録されている5人のプレーヤーの3P成功率を見ると、13.0%(54本中7本成功)と振るわない。同じことはフリースローに関しても言え、ウイング陣は35.5%(31本中11本成功)という低迷ぶりなのだ(チーム全体でも56.8%と決して良い数字ではない)。

 


奥田雄伍のトランジションやペイントアタックからの得点力と、チームトップの2.0スティールが示すディフェンスの奮闘は今シーズンの大きな力だ

 


ウクライナからやってきたポピンとガードのイホール・ボヤルキムは平均7.9とk寿店がチーム3位、4.0アシストがチームトップだ


仮にウイング陣の3P成功率が倍の26%程度、フリースロー成功率が倍の70%程度に維持されていたら、チームの平均得点は4点程度上昇させられていたはず。これは個々のプレーヤーが課題として捉えることももちろんだが、得られるものを確実に勝ち取るような抜け目ないチームカルチャーを育てていくという点で、コーチングスタッフの腕の見せどころとも言えそうだ。

 


ヤキブ・ティトブのロングレンジが安定してくると、金沢には脅威が一つ増えることになる


もう一つの課題はチーム全体で平均34.3本のリバウンド。そのうち3割弱の平均9.9本をアンティボが一人で賄っている。206cmで最長身のセンター山本浩太はストレッチファイブ的な働きで貢献しているが、リバウンドでは平均2.5本にとどまる。連日失点が89に到達し連敗を喫した横浜EXとの2試合では、GAME1で35-56、GAME2では32-44と圧倒された。この対戦では第1Qをどちらもリードして終えながら、横浜EXのフィジカリティーに第2Q以降は持ちこたえることができなかった。


ともあれ、これらの要素が改善できれば上位チームと伍することも可能に違いない。負けた試合や数字上で明確に出ている課題をポジティブに捉えて中盤戦以降の試合を見ると面白みが増しそうだ。

 


横浜EXとのGAME2では、ウクライナから来日したプレーヤー3人が在籍していることを受け、横浜EX側の企画で横浜市内に避難してきたウクライナからの避難民が招待されていた。自身も避難民として日本にやってきたウクライナのサムライたちの意欲をこうした心の通った交流が膨らませ、ひいてはチーム全体の士気も高まっていくのではないだろうか。その中で白星がついてくれば自信もいっそう大きくなっていくに違いない。


直近3シーズンは18勝112敗の金沢武士団。しかし底なしとも思われた泥沼から一歩踏み出したように思える。バイウイークを経て、1勝7敗とこちらも苦戦している岐阜スゥープスとの2連戦(11月5日[土]・6日[日]にOKBぎふ清流アリーナで開催される第5節)から再開するレギュラーシーズンは、どの試合も地力を計るテストとなりそうだ。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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