月刊バスケットボール6月号

今月の逸足(CLASSIC KICKS)Vol.8-1

  Nike Zoom KD IV ナイキ ズーム KD 4   文=岸田 林   SGとPF、2つのプレイスタイルを融合させた KDのシグニチャーモデル   現在、リーグ最上級のスコアラーとなった、KDことケビン・デュラント(ウォリアーズ)。今からさかのぼること10年前、そのデュラントがドラフト全体2位でソニックス(現サンダー)に指名されたとき、ナイキは彼と総額6,000万ドル(当時のレートで約72億円)とも言われるエンドースメント契約を締結した。その当時、アディダスはポートランドの高級ホテルを借り切り、ナイキを上回る総額7,000万ドルの契約をデュラント側にプレゼンしたものの、幼い頃から“スニーカーヘッズ(スニーカーファン)”だった彼は、ナイキとの契約を熱望したと言われている。   デュラントとナイキの選択が正しかったことは、間もなく証明された。翌08年にルーキーオブザイヤー(新人王)を獲得したデュラントは、チームのオクラホマシティ移転とともに、ラッセル・ウェストブルック、ジェフ・グリーン(現マジック)らと共にチームの中心選手へと成長。3年目の09‐10シーズンには史上最年少で得点王に輝き、入団時にはドアマットチームだったサンダーを50勝32敗という好成績へと導いてみせた。   そんなデュラントに対し、ナイキは彼のプロ入り2年目にはシグニチャーモデル 「ZOOM KD1」を提供。ナイキのバスケットボールデザインディレクターであるレオ・チャンは、デュラントのお気に入りであるナイキの名作「ズームハラチ2K4」や「エア フライトポジット」などを原型に、軽さと反発性、そして安定性を重視したバッシュを完成させたのだ。以降、チャンはデュラントのシグニチャーモデルを長く手掛け続けることとなる。そのチャンの言葉を借りれば、KDシリーズのコンセプトは「彼(デュラント)のエッセンスを落とし込んだようなシューズ、それ以上でも、それ以下でもない」。パワーフォワードのような身長(206㎝)で、シューティングガードのようなプレイを見せるデュラントには、「2つのプレイスタイルの良いところ取り」ができるシューズが必要だったのだ。   その後、ロックアウトでシーズンが60試合に短縮された11-12シーズンにデュラントが着用したのが「ZOOM KD 4」。この年、彼は3年連続の得点王に加え、平均リバウンド、アシスト、ブロックショットでもキャリアハイ(当時)を記録。プレイオフでも鉄壁のスパーズを破り、初のNBAファイナル進出を果たす。相手は当時、優勝経験のなかったレブロン・ジェームズ(現キャバリアーズ)率いるヒートだった。 (つづく)   写真=山岡邦彦 (月刊バスケットボール2017年8月号に掲載)

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