月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2022.10.25

アルティーリ千葉が体現する「折れない心」 – クラブ創設以来初連敗後の4連勝で現在B2東地区2位


いよいよアルティーリ千葉の戦列に加わったコービー・パラスはいきなりの活躍を見せている(写真/©B.LEAGUE)

 

 クラブ創設2シーズン目のアルティーリ千葉が、初のB2リーグの舞台で第4節を終えて6勝2敗(勝率.750)の東地区2位と好調だ。青森ワッツとアウェイで対戦した開幕節では、初戦で85-83ときわどい勝負を制してB2初勝利を挙げ、翌日のGAME2も77-60で快勝。第2節は山形ワイヴァンズに2試合とも80点以上を奪われて連敗を喫したが、第3節、第4節では福島ファイヤーボンズと香川ファイブアローズを相手に4連勝。勢いを増した状態で、26日(水)には同じ東地区で首位を走る越谷アルファーズ(7勝1敗、勝率.875)との“頂上対決”を迎えようとしている。


山形に喫した連敗は、B3リーグでの2021-22シーズンも含めてクラブ創設後初めての出来事だった。翌週、B2昇格後初のホームゲームとなった千葉ポートアリーナでの第3節は、是が非でも白星をつかまなければならない試合。会場には両日で延べ6,085人(両日平均で3,042人)のファンが来場し、スタンドはチームカラーのブラックネイビーで染まった。その熱気の中、A千葉は福島を相手にGAME1を84-65、GAME2を87-78と、いずれもハイスコアリングな展開で制した。

 


アンドレ・レマニスHCはクラブとして初の連敗を成長の糧として前進しようとしている(写真/©B.LEAGUE)


開幕初戦からの東北遠征で喫した黒星二つ分を取り返した後、アンドレ・レマニスHCは、「連敗は初めてのことで、気の引き締まる体験でした(First time in my time to drop two in a row. It was a sort of humbling experience.)」と前節を振り返った。「このリーグが非常に優秀なリーグだということを、クラブとしてしっかりと肝に銘じなければならないと思っています。毎夜戦う準備を万端に整える必要があります。それでも時として、我々の思いに反する方向に物事が進むのですから(I do think we need to be mindful that this is a very good league and that you need to come ready to play every night. And sometimes things are going to against us.)」


ポイントガードの杉本 慶は、「開幕節での連勝で心のどこかに安心があったかもしれない」と話した。チームはさっそく立て直しに向けミーティングを行ったという。「それまではお互いが我慢すればチームの雰囲気を崩さずにいけるとも思っていたのですが、連敗してこうしたい、こうすべきだと思っていたことを全員が吐き出せたことで、ストレスなく『やってやろう』と気持ちを変えられました」

 

 キャプテンの大塚裕土や最年長の岡田優介ら経験豊富なベテランの立ち振る舞いも周囲に影響したようだ。「連敗したときにどうすればよいかを知っているB1経験者が多いので、それを見て僕らは落ち込まずにできました」と杉本は話していた。


レマニスHCの言葉を借りれば、このチームミーティングは「コーチが引っ張るだけではない(It’s not just coach-driven.)」機会で、誰もが意見を出し合う本音のコミュニケーションの場となった。「全員が経験して皆が意見を持っていますから、我々は知恵を出し合って最もよい形に生かしていくべきです(All of us have experienced and all of us have opinions. We take the best of it, collective knowledge.)」。福島との2試合に連勝できた大きな要因は、その場で話し合われた結果としてディフェンス面を修正できたことだとレマニスHCは話した。

 


アシストとスティールでB2全体のトップ5に入っている杉本 慶(写真中央)だが、個人成績は気にかけずチームとしての成長にフォーカスしている(写真/©B.LEAGUE)


翌第4節、10月22日・23日に行われた香川との連戦には、コンディション不良で前週まで出場できていなかった新戦力のコービー・パラスが初登場。2試合で3Pショットを7本中4本成功させて平均11.0得点を挙げたほか、GAME2での5ブロック(2試合で6ブロック)という記録が示すように、ディフェンスでのローテーションで強烈な存在感を示した。またGAME2では、前日のGAME1で久方ぶりに出場機会がなかった岡田が、3Pショット3本とフリースロー5本すべて成功させるパーフェクト・シューティングでシーズンハイの14得点を挙げて勝利に大きく貢献した。


レマニスHCは試合後、「ここにきて層の厚みを見せられるようになってきました(What we started to see was the depth of talent that we have.)」と現状に好感触を持っていることを明かした。岡田も、「自分を含め、交代して出たメンバーもそれぞれのやるべきことをしっかりやって、チームの総合力で勝てたと思います」と話していた。


クラブ初の連敗後のミーティングと4連勝。パラスが見せたブランク明けの爆発的な活躍。そして出場機会がなかった翌日の岡田の完璧な仕事ぶり。どれも折れない心の強さが感じられるエピソードだ。

 


香川とのGAME2での岡田優介は、真骨頂とも言えるパーフェクトシューティングを披露した(写真/©B.LEAGUE)


岡田が「試合に出られなくてうれしいことはありません。この悔しい気持ちを忘れたらプロじゃない。自分が何か悪かったのではなくゲームの流れやほかのメンバーの調子もあるので、自分としては今できること、今日の試合に向けてできることをやろうという気持ちで臨みました」と自身のパフォーマンスを語った言葉も、同じことを感じさせた。


「正直あのくらいのプレーはコートに立てばいつでもできるという思いです」と自信満々のコメントも、岡田は残している。「ファンにもチームにもそれを見せることができたので良かったです」。ベテランのこんな姿勢がチームを成長させる要素になるのは間違いない。

 

 レマニスHCは「層の厚みは最大の強みにもなりますが、逆に最大の弱みになってしまうこともあります。個々のプレーヤーが、望むほど出場できなくなることもありますからね(That depth can be our greatest strength or can be our greatest weakness because it plays…, sometimes they’re going to get less opportunity than they would like.)」とも話していたが、第4節はまさしくその状況。その中で手にした勝利には、今後に向けて大きな意味があるだろう。指揮官もそれを認識したように、「我々がこの状況にどう反応していけるかは成功への道を切り開くカギです。今日の反応は喜ばしいですね(And how we respond for that is going to be a key to our road to the success. Today, the response was pleasing.)」と話していた。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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