月刊バスケットボール5月号

Wリーグ

2022.10.21

サポートスタッフとして新たな道を進み始めた三好南穂の開幕戦

新たな道を進み始めた三好南穂

第23回Wリーグでトヨタ自動車 アンテロープスを2連覇に導き、「最高のバスケットボール人生でした!」と集まったファンの前ですっきりとした笑顔を見せて現役を引退した三好南穂が、今シーズンからはトヨタ自動車のサポートスタッフとしてベンチ入りした。そこで10月19日、20日のENEOSとの開幕戦2連戦で元気な姿を見せてくれた三好に、試合後に直撃インタビュー! 

 

■コーチと選手の間をつなぐ役割に徹する

 

――サポートスタッフにはいろいろな仕事があると思いますが、三好さんは今どのような役割を担っていますか?

 

 コーチのようにバスケットボールの技術を教えるというより、(引退したばかりで)今でも一番選手に近いので、コーチと選手の間をつなぐ立場というところは自分でも意識しています。何か技術的なことよりも、今日(第2戦)のような競った試合の中で、苦しい場面の時に選手に前向きな声を掛けてあげたり、ベンチでみんなと一緒に喜んだりしています。普通のスタッフとは少し違うかもしれませんが、そういうところを担うのが私の役割だと思っています。

 

――つまり技術的なことよりもどちらかというと精神面の方が大きいということですか?

 

 そうですね。メンタル面の方が大きいと思います。練習中もコーチが求めていることを選手に、より詳しく伝えることや、選手が思っていることなどなかなか上に届かないところもあるので、コーチと選手との間の立場を取るようにしていますね。

 

――ところで、競った試合などになると自分もプレーしたいと思うことはないのですか?

 

 意外とプレーしたいという気持ちがまったく出てこないんです。選手としてはやり切ったという気持ちがあるからなのか、試合中に自分が声を掛けた選手が活躍してくれるとベンチにいても嬉しいし、「頑張れ!」と思ったりはしますね。だから、自分がプレーしたいというのはないです。もしかしたらコーチ目線になっているのかもしれません。

 

――ENEOSとの開幕戦は1勝1敗でした。実際にベンチから見てどんな印象でしたか?

 

 第1戦は自分たちのプレーも良かったですし、勢いでいけたところがありました。しかし、第2戦は、ENEOSが切り替えてどんどん前にプレッシャーをかけてきたところで、自分たちが引いて受け身になったバスケットボールをやってしまいました。本来であれば開幕2連勝したかったのに、1勝1敗になってしまったのは悔しいです。しかし、うちは若いチームですから、この一つひとつの経験が積み重なってさらにシーズンを通して強くなっていくと思うので、この負けを無駄にしないようにしたいです。

 

 

――トヨタ自動車は選手の人数が他チームより少ないですよね。まだリーグは始まったばかりで勢いや体力的には大丈夫だと感じていますが、シーズンは長いし大変です。その辺についてはどのように思いますか?

 

 本当にメンバーが少ないから、一人ひとりの負担が大きくなると思います。そこは自分たちの課題でもあると思うので、全員で底上げしてみんなが出られるバスケを作っていかなければいけないと思います。

 

――大神ヘッドコーチがうまくコントロールというか、選手交代をしているのが見られました。

 

 短すぎず長すぎずの時間の中で選手交代をして、一人ひとりの負担が大きすぎないようにというところは意識してやられてると思います。

 

――ところで、第2戦は残念ながら逆転負けという形でしたが、ENEOSの印象を教えてください。

 

 やはり競った試合になった時の戦い方は、今までファイナルを何回も経験しているチームですからうまいとは思います。どこで速く攻めるのか、どこで落ち着かせて攻めるのかなど、やはりそういう経験のあるチームですから、競ったゲームは強いなという印象が残りました。

 

■サポートスタッフになって良かった!

 

――リーグは始まったばかりですが、これからサポートスタッフとしてどのようにやっていきたいですか?

 

 チームの調子がいい時は自分もいらないぐらいどんどん行けるので大丈夫だと思います。でも、負けた試合の時など、その後の気持ちってすごく難しい選手もいるし、落ち込んでしまうし、練習の雰囲気も悪くなってしまうと思います。ですから、そこを自分がフォローしてもっと前向きにという言葉を掛けていきたいと思っています。

 

――ところで、サポートスタッフになってほしいという話がきた時の気持ちはいかがだったのですか?

 

 元々チームに残るつもりはなかったんです。引退したら会社の仕事に専念して、より広い世界を見てみたいという気持ちでいたので、社業に専念したいと伝えていたんです。でも、お話を聞いてからいろいろ考えて、チームが若返ったし、その分プレーではないところの支えになれるのは自分しかいないと思ってお引き受けしました。

 

――では、今は結構やる気満々な感じですか?

 

 そうです。シンさん(大神ヘッドコーチ)たちにお願いされてやった結果、今は本当にチームに残って良かったと思っています。まだまだリーグは始まったばかりですが、一つひとつこれからも頑張っていきたいと思っています。

 

 

三好 南穂

みよし・なほ/28歳/桜花学園高卒/確率の高い3Pシュートを武器にWリーグでの活躍だけでなく、日本代表としても2016年のリオオリンピックに出場し、2021年の東京2020オリンピックの銀メダル獲得メンバーとなる。その後、2022年4月に現役を引退し、今シーズンよりサポートスタッフとなってチームに尽力中だ。

 

取材・文/飯塚友子

写真/山岡邦彦、石塚康隆



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