月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2022.10.19

茨城ロボッツユースの荻沼隼佑(U18)、山口哲平(U15)がユース育成特別枠でのトップチーム参加の意欲を語る


左がU15の山口、右がU18の荻沼。会見冒頭は緊張の面持ちだったが、やはりトップチーム入りにこの笑顔だ(写真/©IBARAKI ROBOTS)

 

 茨城ロボッツが、今シーズンからBリーグが取り入れたユース育成特別枠を活用してトップチーム入りするU18の荻沼隼佑、U15の山口哲平の会見を行った。17日に行われたこの会見には、マーク貝島GMと落 慶久ユース事業部長兼コーチも登壇し、二人のプレーヤーをトップチームに加える意図や期待することを語った。


荻沼はロボッツU18のトップスコアラーであり、スキル面、メンタル面でもチームをリードするプレーヤーと紹介されている。山口はU15チームのキャプテンで、プレーメイカーとしてスキル面でもメンタル面でもチームをリードする存在とのことだ。落事業部長兼コーチは、二人をトップチームの繰り込むねらいを「ロボッツのユース育成の姿勢を知っていただくとともに、将来ロボッツでプレーしたいと思っているユースカテゴリーの選手たちのシンボルとなってくれることを期待しています」と説明した。

 


荻沼隼佑(おぎぬま しゅんすけ) 茨城ロボッツU18 #10/PG

(写真は8月のU18チャンピオンシップより/©B.LEAGUE)



 山口哲平(やまぐちてっぺい) 茨城ロボッツU15 #12/PG、キャプテン

(写真は3月のU15チャンピオンシップより/©B.LEAGUE)


今回の会見には会見場内の記者とのやり取りに加えズームを介したオンラインでの質疑も行われ、荻沼と山口は始まった当初には緊張した様子もあった。しかし返答の内容は非常にしっかりした内容だった。


トップチームでの目標を聞くと、荻沼は「今はまだ数値とかではなく、できることを一生懸命やるということが目標です」と答えた。山口も「プロと一緒に試合や練習に参加することで、自分に足りないアップの仕方や技術をたくさん盗みたいです」と意欲的だ。

 


会見中の荻沼。「トップ選手たちの姿勢やメンタリティーをしっかりと学び、これからの成長に繋げていきたい」と当然のごとくやる気満々だ(写真/©IBARAKI ROBOTS)


荻沼はロボッツのスイングマン鶴巻啓太を尊敬しているという。自身も泥臭いディフェンスに全力で取り組むことを強みとしているだけに、「鶴巻選手はディフェンスがうまくて、自分のプレースタイルに通じるところがあります」というのが憧れの理由だ。山口はガードの中村功平を目標とするプレーヤーとして挙げた。「ディフェンスでのオンボールプレッシャーが強く、オフェンスも中に切れ込んでいきます。僕はポイントガードで、前からディフェンスで当たられるとイヤな気持ちになるので、そういうディフェンスをしている中村選手はすごいと思います」。その憧れのプレーヤーたちと同じフロアで、二人はこれから言葉でも体でも会話しながら成長する機会を手にしたことになる。


荻沼は今回抜擢されたことについての感想を、「このような経験は二度とないと思っています」と語る。「すごい経験をさせていただけることを光栄に思います。バスケットの技術面はもちろんですが、トップ選手たちの姿勢やメンタリティーをしっかりと学び、これからの成長に繋げていきたいと考えています」との言葉から、喜びとともに成長への強い意欲が伝わってきた。「何年後かに必ずプロの舞台に立ちたいと思っていました」という山口も、貴重な機会を得られた喜びに表情をほころばせていた。「トップ選手たちの練習前の取り組み方や気持ちの作り方などを自分の目で確かめて、今後のバスケットに活かしていきたいです」

 


山口は海外挑戦にも興味があるとのことで、「授業のほかにも積極的に話した方が良いと思ってALTの先生と楽しく話したりしています」と英語の取り組みも教えてくれた(写真/©IBARAKI ROBOTS)

 

 

クラブの支援、大人の支援も重要となる取り組みの成果に期待


10代半ばからトッププロの世界に足を踏み入れられることで、子どもたちが感じ取る刺激には計り知れないほどのインパクトがあるだろう。その過程は単にバスケットボールプレーヤーとして技術的な収穫を得るにとどまらず、より幅広く自分とは異なる世代の人々や、海外からやってきた外国籍選手との交流など、人としての経験を積む場にもなる。今回の会見そのものさえ、これまでの日常になかった要素に違いない。


そのような環境に飛び込んでくる子どもたちを受け入れる大人の視点も、これまでと同じではなくなっていくのかもしれない。単純な話、恥ずかしい真似はできないだろう。また、あるときはガーディアンとして、人生のナビゲーター役として、彼らを取り巻くクラブ関係者の責任は大きい。


落事業部長兼コーチは、そうした責任も感じながら「選手が伸びるための要素は、環境を整えることと機会を与えること。環境の観点からは、Bユースに所属していることでこのような機会を生み出せます。この機会を二人に提供し、きっかけづくりにしてもらいたいという思いです」とクラブとしてユースチームを運営する意義を語る。

 


落 慶久ユース事業部長兼コーチ(写真/©IBARAKI ROBOTS)


荻沼は高校生であり、山口は中学生という若さで、トップチームとともに活動をするにも学校行事や学業優先となるのは当然のことだ。その点についても十分認識し、「まず学生として、学業優先である点をおざなりにしてトップに行くということはありえません」と話した。両者の在籍校には、課外活動としてのロボッツトップチーム参加の意義を伝えながら、相互理解の下で状況に応じた対応をしていくと落事業部長兼コーチは説明した。


無限の可能性を秘めた若者たちの将来には、海外挑戦も決してまれな出来事ではなくなる時代がやってくるだろう。その観点からも「貝島GMが海外とのコネクションを持っています。今後支援する機会も出てくるかと思っています」と積極的な姿勢を見せた。


貝島GMは、例えばU15チームの遥 天翼HCと連携しながら、ユースにもトップチームと同じ練習メニューやセットプレーを紹介するなど日常的にユース育成に関わっている。GM就任当初からロボッツの国際交流活性化に意欲的で、「コロナ禍でユースやトップチーム、あるいは個々のプレーヤーを海外に連れていくことがなかなかできませんでしたが、これからはいろんな機会があると思いますので、今後は積極的にやっていきたいと思っています」と語る。自身バイリンガルであり、「言葉の面でもサポートしていきたいです。海外に行くならもちろん、B1からB3まですべてのチームに英語を話す外国籍選手がいる現代は、英語はプロを目指していれば必ず必要なものです」と語学力の必要性に触れながら話してくれた。

 


マーク貝島GM(写真/©IBARAKI ROBOTS)


荻沼と山口が、実際にB1の実戦の舞台に立つ時が来るかはわからない。しかしその有無とは別に、その瞬間を目指して二人がどんな取り組みをしていくか、クラブがどんな支援をしていくかは非常に興味深い。もしもその瞬間が訪れたら、それ自体が関係者にとって大きな勝利と言えるのではないだろうか。


これはロボッツだけに限ったビジョンではないだろう。いつの日か二人の名前が、あるいは同じ立場で別のクラブのユース育成特別枠から育っていく若者たちが、B1レギュラーやオールスター、はたまた海外リーグのスターという立場で紹介される日が来ることは、日本のバスケットボール界全体の願いに違いない。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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