月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2022.10.17

地道なプロモーションを実らせた東京ユナイテッドBC - 入場者数新記録達成、Bリーグ準加盟認定、SNSフォロワー増大中、次は何か


10月10日の会場前景(写真/©TOKYO UNITED BC)

 

 10月9日・10日の両日、有明アリーナで行われた東京ユナイテッドバスケットボールクラブ(以下東京U)のクラブ創設後初のホームゲームは、初日が9,295人、二日目も8,120人の入場者を歓迎し、さながら東京ベイサイドの江東区全体を挙げての大パーティーのようだった。東京Uだけではなく、対戦相手で2連勝を手にこの週末を終えたさいたまブロンコスのプレーヤーやコーチも含め、口をそろえてその場でプレーできたことを「幸せ」という言葉で表現していたのが印象的な、日本のバスケットボールが次のステップを踏み始めていくその瞬間を目の当たりにするような雰囲気が、会場全体を包んでいた。

 


宮田 諭キャプテンは、9日の試合後会見で大観衆を見て泣きそうになってしまったと話し、10,000人近い来場者一人一人に感謝を伝えたいと感無量な様子だった(写真は10日の試合より/©TOKYO UNITED BC)

 

 幸せを感じたのがコート上のプレーヤーたちだけではなかったことは、場内の熱気や帰り道のゆりかもめで乗り合わせた人々の雰囲気からも伝わってきた。両日で17,415人という来場者の多くが満足感に包まれて帰路についたのではないだろうか。有明アリーナを舞台に昨年夏の東京パラリンピックの車いすバスケットボールで熱戦を披露し、銀メダルを獲得した香西宏昭と豊島 英がゲストとして来場したことも、輝かしい思い出が地域を一つにする効果を感じさせていた。

 


ボールを持つマイケル・クレイグも、試合後に「ここでプレーできてハッピー」と話していた

 


豊島 英(右から2番目)と香西宏昭(右)の来場は、東京2020パラリンピック銀メダルの輝かしい思い出をよみがえらせた(写真/©TOKYO UNITED BC)

 

 

 その後東京Uに関しては、Bリーグから準加盟認定の発表があり、さらにクラブ発信の情報としてツイッターフォロワーが4,000人を超えたこと、インスタグラムのフォロワーも2,000人を超えたことが明らかになった。クラブ運営の歯車が快調に回り始めている感触。これが本当にB3リーグ新規参入のクラブなのかと信じられない思いの人も多いに違いない。

 

 ただ、これまでの過程を振り返ると、新規参入シーズンの開幕から間もない現時点でのこれだけの勢いが一朝一夕に生み出されたものではないことがわかる。

 


10日の試合前の場外の様子(写真/©TOKYO UNITED BC)

 


こちらは9日の試合の入場者数発表時の掲示板。B1の記録さえ上回る大観衆だった(写真/©TOKYO UNITED BC)

 

 著者は東京Uの立ち上げ当初からつぶさにその道のりを追いかけてきた者ではない。それでも、東京Uサイドから発信される情報は、1年以上前から折々耳に入ってきていた。ユニークな特徴と感じられたことの一つは、早々にアカデミー・スクール事業を立ち上げ、地域・近隣の子どもたちとのバスケットボールを通じたコミュニケーションをスタートさせたことだった。コーチできる人材を募集し、U15チームのトライアウトを実施し…という告知情報が春先には舞い込んできて、今年4月には実際にユースチームが立ち上がった。


コーチにはかつてエバンスビル大で日本人初のNCAAディビジョン1プレーヤーとして活躍した大野慎子、ドイツに渡ってコーチングを学んだ経歴を持つ遠藤将洋、さらには東京Uの現役プレーヤーからも小倉 渓とフォファナ ママドゥが名を連ねている。


クラブの名前を押し出していくことが、東京Uではスタート時点からバスケットボールで地域を盛り上げるという本質的な取り組みにより行われていた。クラブの理念には、コロナ禍に苦しむ社会情勢の中で失われた様々なつながりを取り戻したいという意欲が記され、「人を熱くさせるバスケットボールを全ての中心に置きます」とある。「選手、スタッフ、観客、関係者すべてがバスケットボールを最大限に楽しめるための環境作りと場づくりに努めます」という言葉を、東京Uのユースチームに関するアプローチは体現しているように感じられた。


地域とのつながりという意味では、7月に江東区とスポーツ協定を締結している。その後の8月に、木場公園のバスケットボールコート(多目的広場)で行われたコート周辺の清掃を兼ねたピックアップゲームのイベントに足を運ぶと、そこにも東京Uのスタッフがいて地域の人々と交流を図っていた。


10月9日・10日の取材案内をいただいたとき、15,000人収容の有明アリーナでどんな情景が見られるかは試合の内容とともに大きな関心事項だった。8,000人越えを期待しているというクラブ発信の予想も事前に入っていた。しかしどうなるか。当日、それを信じて出かけてみると、そこにはNBAの会場のような華やぎが待っていた。

 


前方のユナイトダンサーズと広報のユナイトキッズのコラボレーションも、異なる世代をつなぐかわいらしく楽しい演出だった(写真/©TOKYO UNITED BC)

 

 さて、今後東京Uがどんな展開を見せるかについては情報を持っていない。しかし、鹿児島レブナイズとの15日・16日のアウェイゲームに関しては、同日木場公園で開催される江東区民まつりの会場でパブリックビューイングも行われた。ここでも積極的な施策は止まっていないのだ。

 

 連敗という厳しい結果を受け、同じく新規参入クラブの立川ダイスを有明アリーナに迎えて21日(金)・22日(土)に開催する次のホームゲームでは、まずはホーム初白星が是が非でもほしいところに違いない。それに加えてどんな演出で会場を盛り上げ、地域を一つにしていくのか。この連戦も見どころの多い試合になりそうだ。

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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