月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2022.10.10

東京ユナイテッドBCがBリーグ最多入場者数記録をしのぐ9,295人を動員


B3の試合でBリーグ記録を破る大観衆。これは日本のバスケットボール界に新時代が訪れたことを印象づける出来事といえるだろう

 

 B3に新規参入した東京ユナイテッドBC(以下TUBC)が、10月9日に有明アリーナで行われたクラブ創設初シーズンの最初のホームゲームで、偉大な記録を打ち立てた。アルバルク東京が前日代々木第一体育館で行われた千葉ジェッツとの一戦で作ったクラブ主管試合としてのBリーグ入場者数新記録9,167人を上回る、9,295人の大観衆を動員したのだ。

 

 有明アリーナは、東京オリンピック・パラリンピックでバレーボールと車いすバスケットボールの競技会場となった場所。今年8月20日に、“次世代型エンタメ総合施設”として生まれ変わってオープンしたばかりだ。最大収容人数は15,000人で、TUBCがホームコートとして使用するほかにもスポーツイベントやコンサート等文化イベント、都民参加イベントなどの会場として“東京の新たなスポーツ・文化の拠点”となることを目指している。

 

 

 TUBCはこの有明アリーナで行うクラブ創設初シーズンのホーム開幕戦を、「江東区民DAY」と銘打って開催し、江東区に在住・在学・在勤の人々を抽選で1,250組(5,000名)無料招待する企画を実施。江東区との連係も深く、試合前には山﨑孝明江東区長が「待ちに待ったホームチームの誕生」と祝福のメッセージを述べていた。

 

 ほかにもTUBCのメインMCで女優・モデルとして活躍中の小貫莉奈(下の写真中央)とソーシャルメディアのインフルエンサー、ウンパルンパ(同左)のフリースロー対決、昨夏の東京パラリンピックで車いすバスケットボール銀メダリストとなった香西宏昭による車いすバスケットボール教室の並行開催(香西は9日のみ。10日は同じく東京パラリンピック銀メダリストの豊島 英が実施)を行うなど、この日は試合以外のイベントが盛りだくさん。コンコースに用意された子どもたち向けのミニゴールには、シューティングを楽しもうと長蛇の列ができ、ここでも元気な歓声が沸き起こっていた。

 

©TOKYO UNITED BC

 


香西宏昭の車いすバスケットボール教室も多くの人々が参加して盛り上がっていた

 


場内のコンコースに設けられた子ども向けシューティングコーナーも皆楽しそうだった

 

 TUBCがさいたまブロンコスを迎えて行ったホーム開幕戦は、クラブ創設後わずか3試合目の公式戦だ。にもかかわらず、2016年のBリーグ創設後6年間の入場者記録を破ったことは驚くべき快挙。TUBCキャプテンの宮田 諭は試合後の会見で、「会場を見ていて感動して泣きそうになってしまいました。できることなら、本当は一人一人にお礼を言って回りたいぐらいの気持ちです」とファンと関係者へのへの感謝を語っていた。

 

大盛況のホーム開幕戦に、「次は勝利を」


試合の方は、アウェイのさいたまが序盤からのリードを守り切って90-82で勝利した。特に17得点、16リバウンドのライアン・ワトキンスを軸としたリバウンドの強さと、3Pショット7本中5本を決め15得点の佐藤文哉、5本中3本成功で9得点の秋山 煕らの高確率なシューティングが際立った。流れがTUBCに傾きそうだった第3Q終盤の勝負どころで、プレッシャーを受けながら3Pショットを決めた丹野合気の存在感も光っていた。

 


アンジェル・チョルとライアン・ワトキンスのリバウンド争い

 

 しかしTUBCも、3Pショット10本中5本成功を含む26得点の11アシストとダブルダブルを記録したガードのマイケル・クレイグを中心にしぶとく対抗。17得点と6リバウンドを記録したアンジェロ・チョル、11得点に3アシストの新号 健らも得点源となった。守っても54-65の11点ビハインドで迎えた第4Qに、イージーバスケットかと思われた相手の速攻を2度ブロックショットで止め、残り1分を切ってもフルコートプレスでターンオーバーを誘うなど、最後のポゼッションまで闘志を切らすことはなかった。

 


マイケル・クレイグのドリブルドライブ


終盤も射程圏で追いかけるエキサイティングな展開は、集まった大観衆を大いに盛り上げた。TUBCの早水HCも試合後の会見で「手応えはあります」と話している。「第4Qにあれができるんだから、それをスタンダードにしなければ。最初からやるべきバスケットだし、それができる選手たちだと思っています」。10日の次戦でホームのファンに勝利を届けられるか。また今後どのような試合を披露していけるか。それが非常に楽しみになるホーム開幕戦だった。

 


☆試合後コメント
☆東京ユナイテッドBC
早水将希HC

©TOKYO UNITED BC

 Bリーグ記録のお客様の前でバスケットをできたことが選手、スタッフだけでなくチームに関わる全員に喜ばしいことだと思います。その中でバスケットをさせてもらえたのは一生に一度あるかないかのことで、本当にうれしく思います。
試合前に、このくらいのお客さんが来る可能性があると聞いていました。最後の1時間前のミーティングでは、「バスケットのコートもリングの高さもチームメイトも変わらないのだから、大きな会場でお客さんがたくさんいる中でもやるべきバスケットは変わらない」と話しました。
でも、コートにいったん立つと大勢のお客さんの前で何かが違うことを感じたと思います。試合をやりながら僕自身も幸せな気持ちでした。できる機会があると思っていなかったので、自分で選手たちに意識しないように言っているものの、やはり感じるものがあったなと。勝ち負けを別とすれば本当に幸せな時間でした。

 

#33宮田 諭

©TOKYO UNITED BC

 一バスケット選手としてこんなに特別な舞台に立てるとはここ数年想像もできなかったので、ウォーミングアップをしているときから高揚感がものすごくあって、B3リーグを関係者の皆様と一緒に盛り上げていく中で一つの大きな成果だったと思います。カテゴリーはB3 ですけど、こういう試合ができ応援してくれる人がたくさんいるのを見て、B1・B2・B3ということではなく一つのリーグとして年々レベルが上がっているんだということを実感しています。
アルバルク東京時代の天皇杯で10,000人近く入った試合を経験しましたが、自分たちのプロチームで主管興行としてこれだけの人が来てくれるというのは初めての経験でした。勝ち負けにこだわらなければいけない仕事ではあるんですけど、バスケット選手としてこういう舞台にあこがれてきたので、幸せな気持ちでした。

 

#32マイケル・クレイグ

©TOKYO UNITED BC

 今日の雰囲気は素晴らしいですね。観客はものすごく力強かったです。このような大観衆の前でプレーできて幸せで、ありがたいです。明日(10日)もたくさんの人々に見に来てもらい、同じ声援の中でプレーできたらいいですね。残念ながら今日は相手に上回られましたが、明日も全力で頑張りますよ!
今日はセカンドチャンスポイントでやられてしまった印象ですが、少し修正すれば大丈夫。3Pショットは10本打って5本で、ちょっと外しすぎました(笑) 正直、僕が打ちすぎないようにして周りを使えるようにしたいですね。そこは僕としての課題です。

 

さいたまブロンコス

泉 秀岳HC

 TUBCには天皇杯で負けていたので、リベンジする強い気持ちを持ってここにきて、最後に勝ち切れたのが良かったです。

 自分がコートに立って見上げたときに、こんなに人がいるのは初体験だったので、それだけでうれしかったですね。今はB3でやっていますが、カテゴリーに関係なくクラブの成長が2026年(新B1構想)につながると思います。こういうアリーナを経験できたので、僕たちも(地元の)市や町と一緒になっていつの日かホームでこんな舞台に立ちたいと思います。

 

#44丹野合気


この大きな舞台でバスケットボールができたことと、勝てたことがものすごくうれしいです。僕自身9,000人越えのファンを前にプレーするのは初めてだったので、前半はそれに圧倒されて空回りしてしまいました。でも後半は自分のできることをやろうと思って、結果として得点も獲れたし、フリースローも確実に決めて点差を保つことができました。これを明日も続けたいですし、チームに貢献したいと思います。
第3Qの勝負どころで3Pショットを決められたのは、落ち着いて1対1ができ、気持ちを整えて打つことができたから。それがあの場面でできたのは自信になります。

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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