月刊バスケットボール1月号

映像分析革命!プレーの可視化が”チームを変える”佐賀バルーナーズが語る「FL-UX」

佐賀・宮永雄太HCに聞いた、コーチングに映像を取り入れるメリットとは?

 

 

 

 9月――それは夏休みを終え、学校が再開する季節。バスケットに打ち込む部活生の中には、大会や合宿などを経て夏の間に一回りパワーアップし、ワクワクした気持ちで9月を迎えた選手もいるはずだ。チームによっては夏の大会で3年生が引退し、新チームに代替わりして新たなスタートを切ったことだろう。

 

 そんな部活生や指導者たちにおすすめしたいのが、“映像”を使って試合や日々の練習を振り返ること。「予習」「復習」が授業の効果を最大限に高めるように、バスケットにおいても映像を使って過去を振り返り、チーム全員で今後の方向性を確認することは、練習の効果を高める方法の一つだ。

 日々、“映像”を使ってフィードバックを繰り返しているクラブの一つが、宮永雄太ヘッドコーチの下、B1昇格を目指す佐賀バルーナーズ。リアルタイム映像分析アプリケーション「FL-UX(フラックス)」を使い、スマホやタブレットで撮影した練習、試合の映像をモニターに映して活用している。

 

 今回はその宮永HCと、白鴎大時代から「FL-UX」を利用してきたという地元・佐賀県江北町出身のルーキー・角田太輝選手にインタビュー。自チームでの映像分析の活用法やメリットなどをうかがった。



 

【INTERVIEW】

「言葉と映像、両方でアプローチできれば」

宮永 雄太氏(佐賀バルーナーズHC兼GM)

 

――宮永コーチが映像分析に『FL-UX』を活用するようになったのはいつからですか?

 

「最初に使ったのは、Wリーグの富士通レッドウェーブで2年ほどアシスタントコーチをしていた頃(2018~20年)です。スマホやタブレットを使って簡単にライブレコーディングできますし、すぐに選手にフィードバックできるので『これは良いな』と。実際に自分で使いながら細かな機能を覚えていきました。その後もレバンガ北海道、そして現在の佐賀バルーナーズと、所属チームが変わっても活用させてもらっています」

 

――『FL-UX』の導入でどんなことが変わりましたか?

 

「それまでも映像は活用していたのですが、“スピード感”は全然違いますね。もともとは練習をビデオで撮って、練習後に重い録画データをパソコンに落として、家に帰ってさぁ編集だ…と時間のロスがありました。それが今では、練習中に撮影しながら数十秒前の映像をすぐ見られる。『今のは良いプレーだったね』『今のディフェンスはこう動くべきだったな』と、選手と一緒に映像を見て確認できるので、そのスピード感、便利さには本当に驚かされました。映像を編集するコーチ陣の負担も軽くなりましたし、効率の良さは圧倒的ですね」







――その場ですぐ映像を確認することに、どのようなメリットがありますか? 

 

「大きなメリットとしては『“やっているつもり”をなくす』ということがあると思います。選手の立場としては、コーチからの指摘に対して『いや、やってるし』と感じることもあると思うんです。でも映像を見れば、やっているつもりになっていたとしても一目瞭然で、言い訳できないですよね。それに選手の意見として『あえてこっちを優先しました』と言うのなら、一緒に映像を見てどうすべきだったか話し合える。そういう話し合いの際、映像があるのとないのとでは共通理解が大きく変わってくると思うので、非常に助かっています」

 

――言葉だけでは伝わりにくい細かな動きなども、視覚的なフォローがあると伝わりやすそうですね。

 

「そうですね。コーチとしては、言葉と映像の両方でアプローチできればと考えています。言葉で言っているだけでは、選手も『どこのプレーだろう?』と分かりにくいでしょうし、映像だけをたくさん見せても、ポイントが頭に入らないと思いますから。短い時間で効率的に意思疎通を図るためにも、言葉と映像、両方のアプローチが大事だと思っています」






――現在、佐賀バルーナーズでは『FL-UX』を具体的にどのように使っていますか?

 

「練習中は、固定したスマホで上から撮影して、その映像をフロアに設置したモニターで常に流し続けています。その際には10秒とか15秒、映像をディレイ(遅れ)させ、練習の合間に自分たちのプレーを確認できるようにしていますね。僕が練習を止めて映像を見せるときもありますが、今では選手たちが自主的に、気になったプレーを確認しに画面のところにちょくちょく来るんです。映像を見ながら『あ、こっちに動くべきだったか』など選手たちで確認し合えるのは、このアプリのすごく良いところだと感じています。

 試合に関しては、前半で気になったシーンの映像をハーフタイムで選手たちに見せることが多いです。基本的には、その試合で自分たちがフォーカスする部分に関して、前半どれくらい遂行できたかをチェックします。それは戦術的なことのときもありますし、リバウンドやルーズボールなど選手たちの頑張り自体を指摘するときもあります」






 

――映像を仕分けできる“タグ付け”の機能はどのように使っていますか?

 

「我々のチームだと、オフェンスではプレーコールの種類、いろいろ枝分かれをするセットプレーを区分したり、ディフェンスでは『トランジションディフェンス』『ピック&ロールディフェンス』『リバウンド』など、種類や状況で分けたりしています。あとは対戦相手のタグを付けて、チーム別にもすぐ見られるようにしていますね」

 

 

――映像では、特にどんなところを見ますか?

 

「我々としては、見るのは個のスキルというより、チームプレーです。毎年、移籍などでいろいろな選手が集まるので、みんなで同じ方向を向くために、チームの決まり事や目指すスタイルなどを言葉や映像で確認して毎日フィードバックすることが重要かなと。選手たちもスマホなどで練習の映像やハイライトは常に見ることができますし、練習前に過去の映像を復習して注意点などを確認することも多いです」

 

――最後に、B1昇格を目指して臨む2022-23シーズンに向け、意気込みをお願いします。

 

「プレーオフで負けた昨シーズンの経験は相当大きくて、今季は『B2でトップを獲るぞ』という姿勢が練習中から見られます。昨年のベースを知る選手たちが練習中から強度を高く保ってくれていますし、山下泰弘や満原優樹といった賢いベテラン選手たちが加わり、さらにベースを上げようとしてくれている。そうやって土台ができてきて、今季は誰が出ても変わらないメンバーがそろっていると思うので、積極的に交代を増やして激しくディフェンスを仕掛けるようなチームを作っていきたいですね。

今季は長崎ヴェルカさんやアルティーリ千葉さんがB2に昇格し、よりし烈な戦いの中で楽しいゲームができると思います。しっかりと勝ち切る試合をファンの方々にお見せしたいですし、1万人規模のSAGAアリーナも来年完成するので、いずれはそこを満員することを目標に頑張っていきたいです」

 

【COMMENTS】

「映像分析はチームが成長するために必要なもの」

角田 太輝(佐賀バルーナーズ#25)

 

 

 「白鴎大時代、確か4年生になる頃に網野(友雄)監督が『FL-UX』を導入したんです。みんな『何これ!?』と興味津々で、すぐに活用するようになりました。

練習中、気になった場面の映像をその場で巻き戻して確認できるので、映像を見ながら自分たちでよく話し合っていました。以前から網野監督には選手たちでコミュニケーションを取ることを求められてきたのですが、映像を活用するようになってより選手同士の話し合いは活発になったと思います。

練習試合でもベンチの後ろにモニターを置いて、ハーフタイムや交代したときなどにプレーを確認していました。結果的にその年はインカレで初優勝できて、映像分析はチームが成長するためにすごく必要だったと感じています。

 僕個人としては、今プロになってからもそうですが、映像を見て自分がコート上で見ている風景と、外から見た風景がどう違うかを確認しています。特に意識するのは、自分が見えないところでどんなプレーが起きているのか。白鴎大や佐賀バルーナーズはときにオートマチックに動くようなチームプレーもあるので、実際の試合でも、自分が見えないところの動きを思い浮かべながらプレーしています。

 

 

 また、佐賀バルーナーズには昨季、特別指定選手として途中で加入したので、最初はセットプレーやその狙い所が全然分からなくて。だから早くチームにアジャストできればと、スマホで繰り返し映像を見て勉強しました。それに去年は、ケガで離脱した先輩選手が練習中に映像を巻き戻して『ここはこうした方がいいよ』とたくさんアドバイスをくれたので、それも自分のレベルアップにつながりました。

 今季、見てもらいたいのはハードなディフェンスからファストブレイク。それがチームの持ち味であり、自分の持ち味でもあります。B1昇格が絶対の目標なので、そこを達成できるようにしたいですし、個人的にはディフェンスだけでなく得点力も伸ばして、チームに貢献したいです」

 

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