月刊バスケットボール5月号

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2022.08.05

「町田瑠唯は正しいプレーをしている」 - ベッキー・ハモンHC(エイセズ)も脱帽

 日本時間8月3日(北米時間2日)のワシントン・ミスティックス対ラスベガス・エイセズ戦は、下位のミスティックスにとってはエイセズとのシーズンシリーズを3勝0敗のスウィープとする貴重な勝利(最終スコア83-73)だったが、バックアップのポイントガードである町田瑠唯個人としても、特筆すべき試合の一つだった。前半の3Pショット1本と、第3Q終了間際に果敢なペイントアタックからディフェンスを交わして決めたレイアップでの5得点に加えて2アシスト。そのいずれもが、ホームのエンタテインメント&スポーツ・アリーナを沸かせ、チームに勢いをもたらすプレーだった。

 

 


試合後の会見で、アグレッシブさを増してきた町田のプレーぶりを高評価したのはマイク・ティボーGM兼HCやチームメイトたちだけではなく、エイセズのベッキー・ハモンHCもその一人だった。


実は町田は今シーズン、エイセズとの対戦でほかのチームとの対戦に比べて良い活躍ができているのだ。特に3度の対戦の初戦はナターシャ・クラウドが欠場中で、町田はスターティングガードとして29分4秒プレー。これは現時点までのWNBAにおける最長の出場時間で、町田はキャリアハイとなる9得点とともにアシストも4本記録していた。エイセズとの3試合のアベレージでも、それ以外の29試合と比較すると以下の通り異なる傾向にあることが明らかだ。


エイセズ戦 4.7得点、2.7アシスト、0.7リバウンド
その他の試合 1.6得点、2.4アシスト、1.2リバウンド
全試合 1.9得点、2.4アシスト、1.2リバウンド


シューティングに関しては、より顕著な差が見て取れる。


エイセズ戦 フィールドゴール成功率54.5%、3P成功率50.0%
その他の試合 フィールドゴール成功率27.3%、3P成功率17.9%
全試合 フィールドゴール成功率31.2%、3P成功率21.9%


まさしく“エース・キラー(エイセズはAceの複数形)”のような町田の傾向をハモンHCは承知しており、この日の会見でなぜそうなのかを尋ねると、以下のようなコメントを返してくれた。

 

ミスティックスとの試合後会見でのベッキー・ハモンHC(画像をクリックするとインタビュー映像が見られます)


「彼女は正しい方法でプレーしています。常にチームメイトのショットをおぜん立てしようとしているんです。読むのがうまく、ディフェンスも頑張っていますね。オープンになった時には、きっちり決めてきました」
“I think she just plays the right way. She’s constantly trying to set her team up…, teammates up for shots. And then she’s just reading and playing defense. (When) she was left open, she knocked down shots.”


NBAのサンアントニオ・スパーズで長年アシスタントを務めてきたハモンHCは、町田をNBAプレーヤーとも比較した。


「彼女はちょっとNBAのTJマッコネルを思い出させますね。常にコート上をよく見ていますし、ペイントにどんどん入ってきます。ペイントに入ってきたプレーヤーは止めにかからないといけないですが、そこで彼女はうまく読んでパスを散らしてくるんですよね。もし自分で決められればそれはボーナスみたいなものです」
“You know, I think she reminds me a lot of…, a little bit of like TJ McConnell in the NBA. She’s just out there probing all the time. She gets in the paint all the time. And so, you have to guard people when they get in the paint and I think she does a nice job of just reading and distributing after she gets in there. And then if she knocks down a couple shots, that’s just the bonus on top.”

 

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マッコネルはインディアナ・ぺイサーズに所属する身長185cmのポイントガードで、7年間のキャリアで平均6.9得点、5.0アシストのアベレージを残している。確かにリーグの中では小柄な点や、主にベンチから登場するつなぎ役として堅実なプレーで貢献するタイプのプレーメイカーであることなど、共通点は多いかもしれない。


ハモンHCがそうした分析を町田に関して行っていることは、町田の評価の高さの証しであると同時に、仮にプレーオフで対戦するときには相当なチェックを覚悟しなければならないことを示しているだろう。これはエイセズだけではなく、ほかのプレーオフ進出チームも、同様に町田を警戒してくるだろう。ハモンHCはコメントの終わりに「でも、そうですね。彼女は間違いなく、エイセズとプレーするのが好きに違いありません(But you’re right. She certainly does like playing against the Aces.)」と話して苦笑いを浮かべていたが、それは「プレーオフではこうはいかないぞ」という対抗心の表れでもあったかもしれない。


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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